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検体番号19 <SECRETS(シークレッツ)」>

19今回解析するのは、<Allan Holdsworth(アラン・ホールズワース)>の「SECRETS(シークレッツ)」(1989年発表)です。

私がこの方を知ったのは雑誌でバン・ヘイレンが「ロード・ゲームス」を勧めていたのがきっかけです。最初聴いた時は何がなんだか理解不能でした(今でも)。不協和音を平気で使うは、急に予想外の音とポジショニングが出てくるはで、戸惑いの連続・・・でも「何かとてつもない凄さ」を認識したのは確かです。でも、当時の未熟な私としては到底受け入れられず「コレクション」の一枚としてのみ存在するのでした。(やはり気になるもので、それからもアルバムの幾つかはカセット等の音源として所有しました。)

時は流れ、あるCDショップでふと目にしたこの「シークレッツ」。どんな演奏してるのかな?前と同じかな?と思いつつ試聴してみると1曲目の「City Nights」がヘッドホンから流れてきました。次の瞬間にはもうレジに並んでいる自分がいました。 (本当に1曲目だけで購入しましたから。)

1.City Nights

2.Secrets

3.54 Duncan Terrace

4.Joshua

5.Spokes

6.Maid Marion

7.Peril Premonition

8.Endomorph

以上が曲目リストになるのですが、今回は(今回も?)奏法云々といった事を私には一切解析できません。そこで今回は視点を変えて、ホールズワースがこの作品に対する当時の心境を語った興味深いインタビューを参考に解析してみます。(参考文献、ギターマガジン1989年12月号P52~53・インタビューKAYOKO.TAKAHASHI

1.City Nights (G.Husband)

(g)Allan Holdsworth (b)Jimmy Johnson (d)Vinnie Colaiuta

3人での白熱した演奏・・・と思いきやアランさん一言「ゲイリー・ハズバンドの印刷もれ。彼がキーボード弾いてるよ。」凄い大ボケかましてくれます(笑)。曲に意味に対しては「ゲイリーの曲だから知らない。」ごもっとも。しかし、このかつて体験し得なかった疾走感とバンドアンサンブルの絶妙な緊張感。本当に名曲です。アランさんのエンジンブレーキの様なアーミングがたまりません。知人に聴かせても必ず「凄い!かっこいい!」と絶賛してくれる有難い曲です。何を言えば「もう少し長い時間のバージョンを聴きたいな」。

2.Secrets (A.Holdsworth, R.Mark)

(synthaxe)Allan Holdsworth (d)Vinnie Colaiuta (vo)Rowanne Mark

曲の意味はとの問いに「人生についての歌である。何故に他人の考えることは知ることができないのだろうかという事を歌った。詩は私が構想してロワンヌ・マークに書いてもらった。」との事。疲れていたのかなアランさん(笑)。この曲ではアランの自己パートは全てシンタックスなのですが、表情の付け方や音色等、私は結構好きです。ストリングス系の音なんて本物のニュアンスにかなり近いものになっていると思います。特に、「Atavachron」と比較すると格段と表情豊かな演奏になっていると思うのだが、いかがでしょうか?

3.54 Duncan Terrace (A.Holdsworth)

(g)Allan Holdsworth (b)Jimmy Johnson (d)Vinnie Colaiuta (pf)Alan Pasqua

「他界した友人、パット・スマイスに捧げた曲。この曲を書いているとき、優しい話し方とメロディックな曲を書くパットを思い出して彼に捧げる事にした。」確かに、アランの曲にしてはさほど難解でもなく、ギターアルペジオとピアノの旋律が美しいですね。ジミー・ジョンソンのベースソロが素晴らしいアクセントとなり曲を際立たせています。因みにタイトルはパットの住所だそうです。

4.Joshua (S.Hunt)

(g)Allan Holdsworth (b)Jimmy Johnson (d)Vinnie Colaiuta (key)Steve Hunt

「この曲はスティーブ・ハントの曲。タイトルの意味は彼の息子の名前。」だそうです。確かにちょっと聴いただけでもシンプルでアランの曲じゃないことは私にも判りました。ソロはメロディアスで、良い意味「アランらしからぬギターソロ」だと言えます。音色とアーチキュレーションは彼そのものですが。尚、「スティーブからシンタックスじゃなくギターにしてくれと言われた。」との事。スティーブ・ハントに感謝します(笑)。問題はドラム・・・曲の空間を上手く活かした演奏。凄いの一言。聴くべし。特にドラマーの方は絶対に聴くべし。こんなアプローチもあったのか!やはりカリウタ恐るべし。凄い人です。(1曲目も同様)

5. Spokes (A.Holdsworth)

(synthaxe)Allan Holdsworth (b)Jimmy Johnson (d)Vinnie Colaiuta

この曲は本当に「3人による演奏」(オーバーダブあり)だそうです。タイトルはアランの趣味である「自転車」に由来します。「自転車で田舎の広々とした所に行った感じを思わせたのでこのタイトルにした。」おもいっきり後付でした。でもこの曲調でこの自転車の発想は私のような凡人には絶対出てこないですよ(笑)。この曲ではJoshuaとはうって変わりシンタックス爆発です。ソロ、バッキングともにオーバーハイム(音源)使いまくりだそうです。この曲もドラム恐るべし。個人的にお気に入りの曲です。

6.Maid Marion (S.Hunt)

(g)Allan Holdsworth (b)Jimmy Johnson (d)Vinnie Colaiuta (key)Steve Hunt

タイトルの由来は「ロビンフットの恋人の名前」だそうです。もうこの辺からお手上げ状態です(笑)。結構単調で、素朴といった印象です。コードの動きも複雑そうではなさそうですね。(私が偉そうに言えないのですが・・・)

後半シンセだかシンタックスか判らないソロあり。多分シンタックスだと思いますが、ご存知の方教えてください。正直どこがギターでどこがキーボードでどこがシンタックスだかもう判りません。そういった聴き方やめます(笑)。

7.Peril Premonition<危険予告> (C.Wackerman)

(g)Allan Holdsworth (b)Bob Wackerman (d,key)Chad Wackerman (voice)Clair Holdsworth (hammer)Jeffrey Ocheltree

アランのコメントが「この曲はある種ダーク・エネルギー、図々しさのそれを感じる思う。」・・何事か?・・「フランスにいたときドアに“Do not disturb~邪魔しないでください~”と出しているのに隣の部屋でドリルで壁に穴を開けていたことがあった。眠いのに・・・」チャド・ワッカーマンもすごいけど、アランもすごいですよ。この出来事をモチーフに1曲仕上てしまうんですから(笑)。二人の感性には頭が下がります。アランはこの曲を相当気に入っているようです。緊張感と閉塞感が全体を支配してまさにホールズワース・ワールドと言ったところでしょうか。ギターも弾きまくりですしね。ギターフリークにはたまらない一曲でしょう。(結構好きです・・・私も)

因みにフランス語で喋っている女性(クレア・ホールズワース)は奥さんだそうです。

8.Endomorph (A.Holdsworth, R.Mark)

(g, synthaxe)Allan Holdsworth (vo)Craig Corpeland

「両親、特に他界したジャズ・ピアニストだった父(サム・ホールズワース)に捧げた曲。どんなにその人を愛していても本人には言えずにいるという事があるだろう。生前の父にその事を言わないで過ごしてしまった。言っておけばよかった。その思いを込めた曲だ」

「エンドモーフとは何かが別の何かに閉じ込められた状態の事。父に対して言えなかった状態がエンドモーフそのもの。言おうとしても妨げる物があって、それが私にとっては石をムチ打つ様な感じに近かったよ」・・・私にはもうこの曲を解析できません。

さて・・・ここが私的FUSION・・・

まず、演奏てきにはヴィニー・カリウタとアランの遭遇。ヴィニー・カリウタファンの私ですが、ひいき目に見てもアランさんとの相性抜群だと思います。この二人が共演しているだけでもう夢のようです。とにかく叩くときは叩く、引くときは引くといったメリハリのついたドラムワーク。それに相変わらず他のまね出来ないドラミング。それと、これも他のまね出来ないアランのギターが絡むのですから・・・言うことなし。それと・・・

解析して幾つか重要な「キーワード」を発見しました。

「他界した人への思い」「両親」「ミュージシャンとのコミュニケート」「趣味」「人生」「他人の考えること(内面性)」「日常の出来事」

この事を考えると、アランはこのアルバムでリスナーに伝えたいことはプレイとか楽曲の完成度とかだけではなく(勿論それも最重要ですが)、自分がその時抱えていた問題や喜怒哀楽といった内面的な事だったのではないのでしょうか。自分の事を理解してもらえない苦しさと同時に、無き父や友人への思い、ミュージシャンへの信頼等、身近な人への深い感情が込められています。そんな気がしてなりません。それが彼独特のギターでの表現方法とミックスし、絶妙のバランス感覚をもった協調性のある作品になったと思います。言わば「アラン・ホールズワースのコンセプトアルバム」と思っています。・・・ここが私的内面的FUSION・・・

追伸>2曲のボーカルナンバーに必然性が感じられないといった声をよく聞きます。私も最初そう思っていました。しかし、ギターマガジンの記事を読んでその必然性を痛感しました。もう「必然性が感じられない」などと言えなくなりました。インタビューしてくださったKAYOKO.TAKAHASHIさんに感謝します。

***1989年のヒット曲*** とんぼ、TRAIN-TRAIN、17才、大きな玉ねぎの下で

それじゃ。また。

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コメント

こんばんわ。
そんな隠れた物語があったのですね・・おもしろいな。
先生は自分の家族に関しては、父上のエピソードくらいしか話題に出さないのに、奥さんこっそり出したり、無き友人を偲んでたり、バンドのメンバー立てたり・・・深い!
見事な解析です。恐れ入りました!

投稿: elmar35 | 2005/11/16 19:29

elmar35さんへ。お褒めに預かり恐縮です。
アランの過去を振り返ると、必ずバンド在籍期間が短いですよね。音楽性の違いが原因と言われますが、それ故、自己の音楽を主張して行くのにソロを選択しているんだと思います。だから今度は孤独(ソロ)との戦いにちょっとだけ疲れたのかな・・・なんてこの作品から密かに感じたりしています。

投稿: FUSION | 2005/11/16 20:43

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