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検体番号41 <Thick(シック)>

41 今回解析するのは、 「Tribal Tech(トライバル・ティック)」の<Thick(シック)>(1998年発表)です。

このところ、メロディアスな曲の紹介が続きましたね。そこで、計算したわけでは無いのですが、今回は少々緊張感のある”刺激的な音”を・・・

刺激的な音楽とは?・・・といった問いかけに如何に答えるべきか。そんな時、頭の中にすぐ浮かんでくるのが今回レビューする「Thick(シック)」です。

しかし、難題ですよ、これは(汗)

01. Sheik Of Encino
02. Party At Kinsey's
03. Jalapeno
04. Clinic Troll
05. Thick
06. You May Remember 
07. Slick
08. Somewhat Later
09. What Has He Had?

Scott Henderson(g),  Gary Willis(b),  Scott Kinsey(key), Kirk Convington(d)

「Tribal Tech」とは「Scott Henderson & Gary Willis(スッコット・ヘンダーソン & ゲイリー・ウィリス)」の双頭バンドです。

スコット・ヘンダーソンは、あの名盤「Elektric Band(チック・コリア)でギターを弾いた」人物です。
では、何故このBandをこの一作だけで脱退したのか・・・「この当時、私(スコ・ヘン)にはElektric Bandがポップ過ぎたからこのバンドを自ら脱退した」・・・だそうです。そして、同年(1986年)「Tribal Tech」をスタートさせるのでした。

01. Sheik Of Encino

静かな導入ですが、この「静」は、言わば「初めて訪れた森に足を踏み入れる」様な妙な期待感と緊張感と恐怖感を感じます。
スコ・ヘンのギターはペンタトニックを主軸としたラインにオルタード・テンションを巧みに取り入れ、インサイドとアウトサイドを自由に行き来するフレージングは快感ですらあります。そのフレーズを上手くつなぎ合わせる手法は彼独特の技を感じます。
この曲が有する起伏の激しさに付いて行くには体力が要求されます。

02. Party At Kinsey's

調子外れのパーカッション的なギターが印象深い曲ですね。どうやって音を作ったのでしょうか?ギターでのチョッパー奏法にエフェクター処理した感じです?。
無国籍的で即興性の極めて高いリズムの上で踊る、マイルス・デイビス的な音色とアプローチのキーボードが新鮮です。
因みに曲名はキーボードのKinsey(キンゼイ)宅にてパーティーの模様を収録したとの事です。・・・結構ラフですね(笑)。何だか納得です。

03. Jalapeno

曲名がメキシコ唐辛子・・・理解できません(笑)
4人による即興的な楽曲です。時にパワフルに、時にソフトにと、緩急自在で柔軟なスタイルの曲は、彼らの持味を充分堪能するには良いサンプルかも知れませんね。
イントロのギターがかすかにアラン・ホールズワースの影響を感じます。後半のギターソロはアーミングやフレージングはジェフ・ベックの様な凄みと瞬発力を感じます。彼のルーツを感じさせる興味深いソロですね(笑)。
軽くステップするかの様なリズミカルなそのメロディーと裏腹に、ベースとドラムの駆引きに絶妙なタイム感と緊張感を感じさせます。特にゲイリーの奏でる淀みなく流れる様なフレージングのベースラインは、JAZZのそれとは違う手法で強烈に個性的なプレイを聴かせてくれます。やはりゲイリー・・・凄い。

04. Clinic Troll

曲名が凄いですよね。直訳すると「診療所の妖怪」ですから(笑)。 Clinicは言わずと知れたギター・クリニックの事ですね。
この作品でギターはすっかりパーカッションに変身しています。それ程に実験的サウンドで全てが満たされています。例えば、ギターの弦を擦ってディレイ処理したり、弦に紙を挟んで弾いたり、スティール・ドラムの様な音が聴こえたり・・・等、チョッと表現に苦しむサウンドですね。そのコンセプトはギターだけに有らず、全ての楽器がどのようにしてそのサウンドを造ったのか想像できないくらい全てにおいて個性的なサウンドですね。
因みにスコ・ヘンは「この曲がこのアルバム中で一番のお気に入り」だそうです。理由は・・・「ギター・クリニックこそ僕の人生そのもの」・・・だからだそうです。彼の人生観が音像化された作品という事になるのでしょうか?。だとしたら流石ですね、先生。

05. Thick

タイトルナンバーです。命名はデモテープを聴いて「Thick(厚い)」と言う印象がそのまま曲名にそしてアルバムタイトルになったようです。
問題はこの「デモテープ」ですが、30分以上の長さだったそうです。それをカットして約9分に収めた様です。確かに完全にフリー・インプロヴィゼーション的で、尚且つ予定調和を脱却したフレーズが新鮮です。中盤から後半にかけてのノイジーでエキセントリックで尚且つパワフルなギターサウンドがジミー・ヘンドリックスをも彷彿させます。
しかし、スコ・ヘンのアーミングは凄い!これを聴くだけでもその価値は充分に在ります。このギタースタイルをコピー出来る人がいるのでしょうか?
出来たら30分以上あったデモテープも聴いてみたいですね。

06. You May Remember 

ヒステリックで何処か物悲しいSEが特徴的なイントロから、リスナーに緊張感を強いられるかの様な悲愴感溢れるテーマへの移行が絶妙です。
感情豊かなギターソロは楽器を如何に操り、どこまで自己の内面性を表現ができるかを本人自身が試しているかの様な感じさえします。それはある種、泣き叫ぶかのようにな悲しみをも感じる事が出来るでしょう。
彼自身の心像を表現しているかの如く演奏と楽曲を充分にリスナーそれぞれが感じて下さい。
因みにこの曲は、亡くなったフィル・ハートマンというコメディアンに奉げた楽曲です。悲惨な最期だったようですが・・・。

07. Slick

スピード感溢れ幻想的なゲイリーのベースが印象的なナンバーです。
チョッと誤解されそうですが・・・何故かウェザー・リポートを思い起こさせます。全くアプローチとか楽曲とかが違うのですが・・・不思議です。
しかし、この全体から感じられる強烈な鬼気迫るスリルと緊迫感は新たな音楽の楽しみ方を提示してくれています。
印象深い楽曲と、メンバー全員の演奏水準の高さが同期した最高傑作であると私的には密かに思っているのですが・・・如何でしょうか?

08. Somewhat Later

無国籍風のスライド・ギターがエスニックで、ムーディーな雰囲気をそこはかとなく醸し出す曲調です。インド風でもあり、チョッとだけテキサス・ブルースも加味されて・・・表現が難しいですね。曲名の「少し遅れて」とこの曲調が合わさって更に不思議です(笑)。
スライドバーを擦るノイズと、犬の鳴き声がカッコイイです(笑)。
でも、繰り返し聴いていると妙にレイドバックして心地良いですね、これは。

09. What Has He Had ?

かつて聴いた事の無いようなスケールライクなラインが印象的ですね。そのフレーズをベースとユニゾンしただけで、これほどまでにこの曲のもつ原像がダイレクトに伝わってくるとは・・・怖いですね。
ソロではブルースフィーリング溢れるフレーズと、ディミニッシュを巧みに使った(と思う)アウト・フレーズの対比がクールです。シタール風のギターが何とも言えない味を出しています。
それらが組み合わさり、奥行きの有る現代的なサイケデリック感覚をも体感でき新鮮です。
そして、何よりもこの曲ではセッションならではの緊張感と期待感を身近に感じられ「ライブ感覚」を体感できる一曲です。
彼らの奏でる、脳細胞を刺激するこの破壊的なサウンドは、コマーシャリズムを意識したサウンドになれた私の耳には、何よりも新鮮でした。

☆☆☆ ここが私的FUSION(フュージョン) ☆☆☆

お恥ずかしい事ですが、このアルバムを最初に聴いた時、私の中に物凄い拒絶反応が起こっていました。

何故なのか?・・・何故に好きなタイプの音楽なのに・・・

その理由を私的に分析した結果、ネオフォビア(neophobia)だと確信しました。それまで体験した事のない刺激に直面した時、人間は新奇恐怖を感じます。そして、その事実に直面しようとせず避けると言った事が起こります。まさに「ネオフォビア」という単語がこの作品と私の関係を如実に表現してくれています。

単純接触効果とは言いませんが、いまでは幾らか克服できましたが、聴き込む程に新たな刺激を得られます。

多分これは、彼らが私達リスナーに仕掛けた罠に違いない(笑)・・・そう思う事にしました。

ある業界の用語にレジリエンス(resilience)と言う言葉があります。
レジリエンスとは如何なる困難においても、それを乗切るだけのプロセスを有し、尚且つ、その困難をも押し退けて進む弾力性豊かさを兼備えた力強さをいいます。

彼らの演出する圧倒的な緊張感と直感的なインスピレーション、それと凶暴なまでの力強さと、それを理性で上手くコントロールし、それらをそのまま真空パックした様なこのアルバムには「レジリエンス」という言葉がまさにピッタリですね。

それと、この作品で「閃きといった要素は音楽に演奏する上で極めて重要な事項である」と認識をさせられました。そんな観点からも、この作品はインプロビゼーションとは何たるかを語る上で、その方法論の一つとして強烈に示してくれた作品です。

彼らの難解ながら説得力の在るサウンドは、対処行動的な自己のコントロールと、それに対応出来るだけの高度な演奏技術が有ってこそ可能なのでしょう。

☆☆☆ 以上が私的FUSION(フュージョン) ☆☆☆

1998年のヒット曲*** 長い間 、愛されるより愛したい 、幸せな結末 、 陽のあたる場所

追伸:今回はギターのみに焦点を絞り込み過ぎた感があります。そこで・・・どなたか、このTribal Techのメンバーに関するトラック・バックでフォロー宜しくお願い致します。(明らかな他力本願ですみません)

それじゃ。また。

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コメント

こんばんわ。
スコヘンですか・・聞きたい聞きたいって他の方の所でも散々騒いでる割にはまだ未体験の自分が情けないです。

いつもながらの鋭い分析ですね。なんかもう聞いちゃったような錯覚に陥りそうです・・すごい!
お世辞抜きで貴殿の抜群の構成力に感服しましたよ!

Gary Willisに関しては貴殿もご存知かとは思いますが、Holdsworth関連で。Metal Fatigue,
None To SoonそれにコンピのCome Togrther-guitar tribute to the Beatles-で共演してますよね。
ベースのスタイルとしてはかなりノーマルな方という印象があります。

スコヘン・・はまりそうで危険だけど、ぜひ聞きたいっす!

そうそうBucket Headのやつ先日1枚入手しましたよ・・はまりそうです。(笑)

投稿: elmar35 | 2006/03/24 21:43

たびたびごめんなさい。
↑ではちょっと書き込み失敗しました・・すんません!
おわびといってはなんですが、未体験と言いつつ私が唯一体験したスコヘンの動画紹介します・・もう知ってるって?

http://www.youtube.com/watch?v=4_iyO5H0zCU&search=scott%20henderson

Videosで名前入れたら結構使えますよ。
すでにご存知でしたらお許しくだされ。(笑)

投稿: elmar35 | 2006/03/24 22:16

elmar35さん、コメント感謝します。

待ってました!絶対コメント頂けると信じていました。Gary WillisとくればHoldsworth・・・とくればelmar35さんしかいないでしょう(笑)Metal Fatigueは外せない一枚ですネ。

>Come Togrther-guitar tribute to the Beatles-で共演してますよね。
「NICHELLE」ですね。実はこの作品レビューしようと思ったのですが・・・貴殿のブログで既にレビューされていたではありません・・・やはりアラン先生の事はelmar35さんのレビューを読めばおいそれとレビュー出来なくなりますよ。・・・で、怖気づいたしだいです(本当です)

スコ・ヘン・・・良いですよ・・・具体的に何がと言うのは難しいのですが(笑)。ブルース+ロック+ジョン・スコ+Holdsworth=スコ・ヘンと言ったところでしょうか。

それとご存知だったら失礼ですが、ポンティ先生の「FABLES」と言うアルバムにアラン先生の紹介で4曲で参加しているそうです(私は聴いていません・・・)

また、「TRIBAL TECH」の2枚目「Dr.Hee」ではアラン先生がサウンド・アドバイザーとして参加しています。プロデューサーはGary Willisです。

>Bucket Headのやつ先日1枚入手しましたよ
ジャイアント・ロボ(笑)でしょうか・・・きっとはまると思っていました。

動画の件、有難うございました。早速拝見しました。実に興味深い映像ですね。貴重な情報感謝致します。

長々と返信いたしましたが、お褒めの言葉、嬉しくそして何よりも励みになります。本当に感謝致します。


投稿: FUSION | 2006/03/24 22:24

こんにちわ。熱い反応感謝です。

Come Togetherの件は確認したら曲名リスト程度で終わってました・・これではレヴューとは言えませんな。
出来れば私のほうからリクエスト第2弾ということで!(笑)

Bucket headのはMonsters&Robotsってやつで、中古1000円でした・・ちなみに国内盤です・・気に入ってしまったようです。
なおYoutubeで彼の映像が結構ありますよ。
毎度脱線話ばかりで申し訳ございません・・。

投稿: elmar35 | 2006/03/25 11:16

elmar35さんへ。返信感謝します。

>出来れば私のほうからリクエスト第2弾ということで
しまった!墓穴を掘ってしまったようですね(汗)

>Come Togetherの件は確認したら曲名リスト程度で終わってました・・これではレヴューとは言えませんな。
いえ、貴殿のブログ全体からみた場合、このCome Togetherをあのようにレビューされた事に意味深だと感じた次第です・・・でも、elmar35さんの前でアラン先生の事を語るのは本当に勇気が必要なのですよ・・・本当に。

Bucket headの件ですが、またも貴重な情報感謝致します。

投稿: FUSION | 2006/03/25 12:05

こんばんは。
マイ・ブログにも書いたのですが、TBの意味がわからない
ので、教えていただきたいのですが・・・
全然、ページに関係ないコメントですみません。

投稿: まりん | 2006/03/30 22:39

まりんさんへ。コメント感謝します。

TB(トラック・バック)の件ですが、これはまりんさんのブログの記事に関連する記事を、私のブログから送信して、まりんさんのブログに私の記事を表示・反映させる事です。これによってブログ同士の交流を広めれれる有難い機能です。
でも、時に変なTBがあったりして、チョッと困る事も・・・。

投稿: FUSION | 2006/03/31 10:45

FUSIONさん、ありがとうございます。
とてもよく解りました。
お聞きしてよかったです^^

投稿: まりん | 2006/03/31 23:03

風の噂でお体をこわしていると聞きました、早く良くなってくださいね。

投稿: アルドステロンⅡ号 | 2006/04/04 19:37

アルドステロンⅡ号さんへ。コメント感謝します。

今年に入ってから最悪です。首はおかしくなるは、手の靭帯損傷・・・実は今ひどい風邪にかかっています。この先どうなる事やら・・・(泣)

投稿: FUSION | 2006/04/04 21:56

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