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検体番号42 <LUNA~星の旅~>

42 今回解析するのは、「瀬木貴将(せぎ たかまさ)」の<LUNA~星の旅~>(1997年発表)です。

皆さんは時間を止めたいと思った事はありませんか・・・いや、止めるまでも無く、チョッとだけ遅くなれば・・・そんな魔法が使えるといいですね。

先日、人里離れた山の中に一泊して来ました。
夜、音楽を聴きながらサン・ルームのソファーに寝転んで空を眺めていました。
澄み渡った空一面に星が瞬いていました。
手を伸ばせば届きそうで・・・その時ヘッドフォンから「LUNA~星の旅~」が流れてきました。
確かに時は私のまわりだけ遅くなった・・・気がしました。

01.LITTLE DREAMER  (リトル・ドリ-マ-)
02.PUNA  (南へ)
03.SALAR  (サラ-ル)
04.EUROPA  (哀愁のヨ-ロッパ)
05.GYPSY  (ジプシ-)
06.POSIBLE  (ポシ-ブレ)
07.KISOUTENGAI  (奇想天外)
08.SPIRITS  (スピリット)
09.VALLE DE LA LUNA  (月の谷)
10.NIEVE  (雪の扉)

試聴は・・・ここで 

その宿泊した所は携帯電話が圏外でした。
不思議ですよね。幾千年前の星の光は確実に届いているのに、携帯の電波は届かないなんて・・・。

01.LITTLE DREAMER  (リトル・ドリ-マ-)

瀬木貴将(zam) 青木智仁(b) 岩代太郎(pf) 鬼怒無月(g) ヤヒロトモヒロ(per) エポ(vo)

エポさんの優しく澄んだ声と、典型的とも言えるシンプルなアルペジオで聴かせる美しいコード感が融合し、シルクの様な柔らかい触感を造り出しています。
そして、語りかけるようなサンポーニャの音色が暖かく包み込んでくれます。
遠い昔語りの様な、何処か懐かしく心くつろぐサウンドです。優しい曲ですね。
サンポーニャとエポさんのコラボレーションはまろやかで暖かくて・・・素敵です。

02.PUNA  (南へ)

瀬木貴将(zam) 村上ポンタ秀一(d) 青木智仁(b) 佐山雅弘(pf) 鬼怒無月(g) ヤヒロトモヒロ(per) 福岡ユタカ(vo)

これから航海に・・・南へ進路を・・・
そんな期待と不安を上手く表現し、雄大な世界をこのアルバムの中に作り上げていますね。
16ビートを基本とした心躍らされるサウンドは爽快ですらあります。
サンポーニャと言う楽器に強いられた固定概念を打破る、瀬木さんにとっても重要な曲なのではないでしょうか。
しかし、躍動感溢れるポンタさんのドラミングと、そのアプローチは必聴です。本当にこの曲でのドラムはいいですね。力強く船が進んでいく様が浮かんできます。

03.SALAR  (サラ-ル)

瀬木貴将(zam.que) 佐山雅弘(pf)

瀬木さんと佐山さんの二人だけで織り成す、冷たいほどに美しい世界は絶品。その切なくなるほどの美しさを堪能して下さい。
悠然と流れるサウンドはガラス細工の様に繊細さで、チョッと触れただけでも壊れそうな程ナイブーに私の心に響きます。
実力者同士の高度ながらも、実に息の合ったインタープレイを聴かせてくれます。
無駄な装飾を廃したことによって、この曲の持つ慈しむ様な歌唱が心に響く逸品です。

04.EUROPA  (哀愁のヨ-ロッパ)

瀬木貴将(zam) 渡辺香津美(g)

説明不要な位に有名な曲ですね。原曲はカルロス・サンタナの「EUROPA」です。
原曲のそれを「官能的な動」とするならば、瀬木さんと香津美さん二人だけで織り成すこの曲は「審美的な静」と言ったところでしょうか?この曲のメロディー自体が持っている「美しさ」と言う魅力を充分に引出され、懐かしい旋律が新鮮な感覚で再現されています。
哀愁を忍ばせたメロディーを、瀬木さんのサンポーニャと香津美さんのアコースティク・ギターが繊細で華麗に、そして慈しむ様に演奏されている様子が伝わってきます。

05.GYPSY  (ジプシ-)

瀬木貴将(zam) 宮沢和史(a・g) 鬼怒無月(a・g) 梶原順(g)  ヤヒロトモヒロ(per) 福岡ユタカ(vo)

Romany的な漂泊民族に対する思いを瀬木さんの音楽観と彼自身の言葉で表現した曲でしょうか?
旅人=GYPSY=瀬木さん自身・・・そんな印象を感じます。
哀感を込めた共感的理解をも感じられる演奏は素晴らしいですね。
また、その哀愁溢れるメランコリックなメロディーが心に切なく留まりますね。
彼の音楽に対するGYPSY の如き自由さは魅力です。

06.POSIBLE  (ポシ-ブレ)

瀬木貴将(zam) クボタハルオ(e・g) 鬼怒無月(a・g)

どうしてこうも悲しくて、美しいんでしょうか?涙が出そうです。
中途半端な説明の入り込む余地などない、純然たる音楽がここにあります。
切ない曲調の中にも、暖かく優しい感性が見え隠れするこの曲は、瀬木さんの自分の心に忠実なサウンドと、彼の内面性をも窺い知る事ができる様なきがします。
部屋の照明を少し落した優しい灯りの中で大切な人と一緒に聴きたい・・・私にとってそんな大切な曲です。

07.KISOUTENGAI  (奇想天外)

瀬木貴将(zam.que) 村上ポンタ秀一(d) 青木智仁(b) 佐山雅弘(pf) 鬼怒無月(g) ヤヒロトモヒロ(per)

奇想天外・・・良い題名ですね。瀬木さんのサンポーニャとケーナが所狭しと暴れまくります。彼の「演奏面でのテクニック」と言ったものを感じるには最高の楽曲でしょう。
曲調は「これから村のお祭りが始まるよ」みたいで何処か楽しくて、嬉しくて・・・。
しかし、瀬木さんのケーナでのフラッターは凄い!びっくり!

08.SPIRITS  (スピリット)

瀬木貴将(que) 佐山雅弘(pf)

生命力に満ち溢れていて、地の底から呼びかけているようなケーナのビブラートには恐怖感すら覚えます。佐山さんの低音を意識的に鳴らしたコードが強力な重量感をも感じさせ・・・それは重い荷物を背負い坂道を黙々と登る様な・・・。
2分32秒間、誰もが敵う事の無い絶対的とも言える力強さを放っています。
無駄な装飾を廃し素朴でありながら、これほど雄大で人間らしい曲を私は他に知りません。(原曲はキース・ジャレットなのですが・・・)
恐るべしは・・・瀬木貴将、佐山雅弘・・・凄い!!!

09.VALLE DE LA LUNA  (月の谷)

瀬木貴将(zam.que) 村上ポンタ秀一(d) 青木智仁(b) 佐山雅弘(pf) 鬼怒無月(g) ヤヒロトモヒロ(per) 田中健(que-adlibe part)

ボリビアの VALLE DE LA LUNA (月の谷) という場所からの命名だそうです。
小気味よいグルーヴと肌寒い程の透明感に、情操豊な演奏が一体となり夢幻的な世界が広がります。それと同時に、何処か懐かしいノスタルジアをも感じる不思議さを覚えます。
田中健さんのメリハリが効いた起承転結のあるソロはお見事!!

10.NIEVE  (雪の扉)

瀬木貴将(zam) 岩代太郎(pf) ヤヒロトモヒロ(per)

派手さは在りませんが、自己を表現する為に彼だけが演奏出来る曲ですね。瀬木さんの織り成すサンポーニャの音色は朴訥とした語り口で囁きます。それは情操豊かで、凝縮感があります。この曲を文章で表現出来ない自分が悔しいです。
瀬木さん曰“吹雪の中、さまよい歩きやっと想いで見つけた雪の扉。 その扉を開くと春の楽園が目の前に・・・そんなイメ-ジで作りました”との事です。

☆☆☆ ここが私的FUSION(フュージョン) ☆☆☆

このアルバムを聴いた率直な感想は・・・

如何なる音楽にせよ、暖かさが必要である、しかし、その暖かさを感じるためには悲しみといった冷たさも必要である。

それ故、その音楽から感じ取れる温度感と言ったものは至極重要に思えてきます。

当たり前の事なのでしょうが、音楽を聴いて、喜怒哀楽を感じたり、表現出来るのは人間だけでしょう。
音楽本来の持つべき、聴く者を楽しませると言った点を積極的にアピールした曲も、リスナーと悲しみを共感するが如くサウンドによって築かれている事をこの作品では再認識させられました。
聴き込む程に自分自身の内省的な一面を曝け出される様で怖いのです。音楽とは人間の心に何を及ぼすのか考えさせられます。

また瀬木さんの操るサンポーニャとケーナは南米のフォルクローレに代表される楽器ですが、このアルバムでは完全に瀬木ワールドに必要不可欠な「彼自身の楽器」になっています。
様々な音楽のエッセンスを取り入れた柔軟なアプローチが何よりも新鮮で、流行や時代に媚びる事のないその姿勢は、この様な音楽を演奏する者にとっては重要な事項ですね。それ故、私達がイメージするフォルクローレといった民俗音楽などの余計な先入観無しで楽しめるアルバムですね。

多分、この作品を駄作と言う方は少ないと思います。しかし、私が言う程に関心を寄せて頂ける方もまた少ないと思います。
この作品を通じて、リスナーに良い音楽だと感じさせるのは人間それぞれが持つ各々の感性の成せる業だと再認識させられる・・・そんな不思議なイデオロギーと、悲しさを暖かく包み込んでくれる様なサウンドがこのアルバムに存在します。

☆☆☆ 以上が私的FUSION(フュージョン) ☆☆☆

***1997年のヒット曲***  白い雲のように、 WAになっておどろう 、 もののけ姫 、PRIDE

今回はチョッと循環気質的な自分に反省しております。
これではいけませんね・・・。

それじゃ。また。

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コメント

こんばんわ。
面白そうなアルバムですね・・さがしてみよ。(笑)
20年ほど前、南米を旅した時にペルーにもより、土産にサンポーニャとケーニャを買ったのですが、ズタ袋に掘り込んだまま数年後、出してみるとサンポーニャを包む帯が全部虫に喰われててバラバラ・・面白い楽器でした。(笑)
最近は残ったケーニャでたまに練習してます。

投稿: elmar35 | 2006/04/04 22:31

elmar35 さんへ。早速のコメント感謝致します。

>20年ほど前、南米を旅した時にペルーにもより・・・
羨ましいですね。そして何より elmar35 さんがケーナを練習している事にびっくりです。また、ケーナをケーニャと発音するところに造詣の深さを感じます。

さて、この作品は文中にもあったように個人の趣味によりその評価が分かれるでしょう。しかし・・・サンポーニャとケーニャを買ったelmar35 さんならきっと気に入って頂けると信じています。是非。

投稿: FUSION | 2006/04/04 23:15

エポさんとか香津美さんなど参加ミュージシャンで買ったアルバムなんですけど、1~2回しか聞いたことありません。
これを読みながら聞いてみることにします。(^_^)

投稿: WESING | 2006/04/05 10:43

コメント感謝致します。

>これを読みながら聞いてみることにします。(^_^)

こう言っていただけるのが何より嬉しいですね。
この作品は是非ヘッドフォンで聴くことをお勧めします。
新しい発見があると思います。

投稿: FUSION | 2006/04/05 17:55

コメント久しぶりです。
随分メルヒェンタッチなデザインに変更しましたね。
このCDの曲調に合わせて変更したのでしょうか?

南米のフォルクローレもやっぱいいものですな。
4,5年前はこういうのにも手を出していたのに、最近は殆ど聞きません。
久々聞いてみようかしら。

投稿: でんた | 2006/04/08 13:36

でんたさんへ。コメント感謝します。

>随分メルヒェンタッチなデザインに変更しましたね。
春なのでチョッと明るく・・・気分転換です。恥ずかしいかな(笑)

仕事に疲れた夜や、チョッと落ち込んだ時に聴くと効果的ですよ。

投稿: FUSION | 2006/04/08 13:59

こんにちは。
時間を止めてほしいと思うことは、しょっちゅうです。
それとみんなをストップさせて自分だけ高速回転したいことも・・・

絵本みたいに可愛いスキンに変わっていますね。
今までのFUSIONさんのイメージがだんだんと変わってきました^^
可愛い絵を見ていても癒されます。

投稿: まりん | 2006/04/09 14:49

まりんさん、コメント感謝致します。

意外な反響ですね・・・今回のデザイン・・・やっぱり恥ずかしいから変えようかな(笑)

>今までのFUSIONさんのイメージがだんだんと変わってきました^^
どの様なイメージなのでしょうか(笑)もしかするとどんどん悪いイメージに変わってきたりして(笑)・・・心配です。

>みんなをストップさせて自分だけ高速回転したいことも・・・
それは面白い発想ですね・・・そんなアルバムも探してレビューしてみたい気になって来ました。

投稿: FUSION | 2006/04/09 19:05

このアルバムの曲も少し入っていますが、バーゲン・セールをやっていたので、ベスト盤を購入しました。(URL)

名前が入っていないコメントは僕だと思うんですけど。(^_^;

投稿: WESING | 2008/11/16 16:10

WESINGさんへ。コメント感謝致します。

ベスト盤・・・実にリーズナブルな値段になっていますネ。私は瀬木さんのアルバムは3枚しか持っていないので上手く言えませんが、入門編としては最適なアルバムですネ。

>名前が入っていないコメントは・・・
了解しました。

投稿: FUSION | 2008/11/16 21:25

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