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検体番号43 <DOWNSIDE UP(ダウンサイド アップ)>

43 今回解析するのは「FRAGILE(フラジャイル) 」の<DOWNSIDE UP(ダウンサイド アップ)>(1998年発表)です。

人間、ある程度の年齢になると、それ程新鮮な驚き・・・みたいな事は少なくなってきます。しかし、この「新鮮な驚き」が少なくなる程に感動が無くなり、つまらない日々を送る事になったりするのかな・・・などと一人で考えてしまいます。

音楽も同じですよね。様々な音楽で「自己概念と言う空間」が飽和状態になると、衝撃的な作品に巡り合える事が少なくなってきます。そんな時、このサウンドが耳に飛び込んできました・・・久々の衝撃に感動する30代半ば過ぎの自分(発表当時です)がそこに居るのでした。

01. Vongole Takenaka~Desset in the desert
02. L.C.M
03. Winds
04. Slum Dance
05. Mr.Tat
06. Origin
07. Ferris Wheel
08. The Armpit

・・・FRAGILE・・・
矢堀孝一(g) 水野正敏(b) 菅沼孝三(ds)

このアルバム以前に2枚の作品が発表されていますが、それらも勿論素晴らしいのです。・・・しかし、衝撃度では個人的にこれが一番です。あくまでも個人的に・・・です。

01.Vongole Takenaka~Desset in the desert
三人が造り出す、音の塊が凄い勢いで私めがけてぶつかって来ます。多感期に初めてハード・ロックを聴いた時の衝撃にも似た感覚が蘇りますね。音圧が凄く、インスト・ヘビーメタルのパワーにジャズの自由さと、プログレッシブ・ロックの前衛的なテンションが錯綜し、彼達独特の世界を構築しています。そして、彼らの痛快なまでの高度な演奏技術を充分に堪能できるオープニングに相応しいナンバーです。
この曲はメンバー3人によるバンド初の協作で、曲自体は水野さんが創り、矢堀さんがアレンジし菅沼さんが再度リズムアレンジをして創り上げたそうです。その為かメンバー全員の想いと力の入れ様が曲全体からも感じ取れますね。
また、複雑なクロマティックラインを巧みに使った高速ラインでのユニゾンが緊張感をより一層に際立たせています。
しかし、スリリングなインタープレイは驚異的ですね。参りました。是非、ライブで聴いてみたい一曲です。
尚、メドレー的に繋がる「Desset in the desert」はPONTA BOXの「PONTA BOX Ⅱ」にも収録されていますが・・・。

02.L.C.M
結構シンプルな曲だな・・・と思って聴いていたら大間違い。次第にリズムがずれだします。最初4/4拍子かと思いましたが・・・どうやら菅沼さんのスリップビートによるマジックのようですね。いや・・・ポリリズムかな?・・・アクセントが少しずつずれて行くような・・・5拍4連かも・・・すみません全く理解できません。何方か詳しく教えてください。
本当に菅沼さんのドラムは凄すぎますね。ヴィニー・カリウタとサイモン・フィリップスを足した様なドラム・アプローチ・・・そこに手数王・菅沼さん自身の独特な技とノリがプラスされるのですから・・・このドラムは凄い!!!
随所に聴かれる重厚感溢れるストリングスは、多分ローランドVG6ギターシンセによるものと思いますが・・・面白いのはギターソロ、ヴァン・ヘイレンのフレーズが一瞬を出したのを私は聞き逃しませんでしたよ(笑)
因みにタイトルのL.C.Mは最小公倍数 (Least Common Multiple) だそうです。

03.Winds
この曲は以前に紹介したWINS(ウインズ)に収録されている菅沼さんの曲です。
このアルバムでは、チョッとライトで小気味よいスウィング感が印象的なナンバーに仕上がっています。とはいったものの前の2曲の後だけにそう感じるのでしょうか(笑)。
この曲でのベースラインは結構面白いですね。正確なフィンガリングの流れるようなラインと躍動感のあるリズミックでフレキシブルなプレイスタイルは流石です。この曲に生命を注入していますね。
また、VG6ギターソロでのバックで手数王が「私の曲です」と言わんばかりに自己主張しています(笑)

04.Slum Dance
怪しげで危険な感触をも感じるスリリングなナンバーです。リスナーを挑発するかの如きアグレッシブなサウンドは・・・土足で踏み込んでくる感じ・・・と言ったところでしょうか。
三者三様のテクニカルでパワフルなサウンドはリスナーを圧倒して迫って来ます。求心的でモノマニーをも感じさせる程の息詰まるインプロヴィゼーションは圧巻!

05.Mr.Tat
水野さんのフレットレスベースが美しい哀愁のあるメロディーと華麗なフレーズを、曲に注ぎ込む様に演奏しています。それに反応するかのようなゴダン・MIDIガットギターの音色が印象的です。二人の奏でるフレーズの応答が小気味よく、そして美しいですね。
ギタースタイルは、どこと無くパット・メセニーと渡辺香津美さんをダブらせてしまいます。

06. Origin
既視感すら覚える何処か懐かしいサウンドです。どうやらほぼ一発録りの様ですが、バンドとしてのハイレベルなポテンシャルを改めて実感させられます。
ディストーションサウンドのフレットレスベースがこれほど気持ちいいとは・・・新しい発見です。
メロディーとバックのサウンド対比が明瞭で、その分メロディーの持つ不思議なテンション感覚が如実になっています。そして、何よりも隙の無い緻密なリズムコンビネーションは抜群の威力を感じます。

07.Ferris Wheel
時間が静かにゆっくりと流れ、アダルトな雰囲気を醸し出すバラードですね。水野さんのフレットレス・ベースが語りかける様に歌います。
在り来りのコード進行ですが、テンションを巧みに取り入れる事と、VG6サウンドを効果的に使う事により浮遊感のある夢幻的なサウンドをこのアルバムに刻み込んでいます。
また、その世界観を壊す事のない砕心的な程にナイーブなドラミングも素晴らしいですね。
威厳のあるフィーリングを感じる良質なサウンドを御堪能下さい。

08.The Armpit
題名が「脇の下」・・・何だかな~(笑)
しかし、この曲では矢堀さんのギターが暴れまくっています。彼のギタースタイルのルーツと言った物が見え隠れしています。こう言う表現は失礼なのですが、マイク・スターンあり、ジョン・スコあり、渡辺香津美さんあり、マクラフリンあり、ジェフベックあり・・・とにかく様々なギタリストのエッセンスを彼なりに消化し、彼自身のスタイルとして見事に強いパーソナリティーを発しています。何れにせよ彼の音楽に対する自由さは魅力ですね。六本の弦が織成す無限の広がりを感じられますよ。
彼の織り成すギター・サウンド一つ一つを擬人化し、その性格を音像として捉えてみるのも面白いかも知れませんね。

☆☆☆ ここが私的FUSION(フュージョン) ☆☆☆

このアルバムは彼たちが影響を受けたであろうジャズとロック、あるいはプログレッシブ・ロックを如何に消化してフラジャイルの音楽として昇華させていくか、その答えの一つとしてこのアルバムが有る様にさえ思えてきます

時にパワフルに、時にソフトにと、緩急自在で柔軟なスタイルは彼達にとって最大の持味ですね。この自由奔放さが3ピースバンドにとって最大のメリットであると思いますし、その効果を発揮するには最高の形態であるとすら思っています。

しかし、そこで問題になってくるのがサウンド・メイキングなのですが、矢堀さんの秘密兵器でもあるギター・シンセやMIDIがその威力を発揮しています。どうしてもキーボードがいない分、サウンドバリエーションが稀薄になってしまいます。そこで、矢堀さんのスタイルは、ギター・シンセやMIDIを使いこなす事によって独自の表現方法を確立させていますね。そのギタープレイはまさにテクニックとテクノロジーが高次元で融合していると表現してもいいでしょう。しかも、このテクノロジーを誇張する事無く、あくまでも隠し味的に取り入れているところも見逃せませんね。

また、メンバー全員が今更に説明不要な程のテクニシャンですが、改めてインプロビゼーションにおけるボキャブラリーの豊富さは筆舌に価しますね。
複雑に、そして巧みに絡み合うベースとドラムとギターは絶対的な洗練の極みと、ひたすらエネルギッシュで、尚且つ即興性の高い多様的な世界を見事に構築しています

難易度の高いフレーズですが、ジャズの流れを汲むインプロビゼーション中心のフュージョン・ミュージックがこのアルバムに存在しています。しかし、この種の音楽によくあるマニアックな自己満足に陥る事を回避しています。

このアルバムにはフュージョン・ミュージックの「新たな可能性を提示した作品」とでも呼ぶに相応しい新鮮で刺激的なサウンドが満載です。

☆☆☆ 以上が私的FUSION(フュージョン) ☆☆☆

1998年のヒット曲 夜空ノムコウ、 長い間、 1/3の純情な感情、さまよえる蒼い弾丸  

それじゃ。また。

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