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検体番号49 <MASTER PLAN(マスター・プラン)>

49 今回解析するのは「Dave Weckl (デイヴ・ウェックル)」の<MASTER PLAN(マスター・プラン)>(1990年発表)です。

私がデイヴ・ウェックルを初めて耳にしたのは「チック・コリア・エレクトリックバンド」でした。皆さんも多分そうだと思います。しかし、本当に衝撃的でした、「RUMBLE」でのドラミングはそれまでのドラマーとは違ったアプローチで新鮮でした。シモンズのドラムと生ドラムを上手く混ぜ合わせて、尚且つあのチック・コリアの独特のキーボードソロに負けない位に主張しています。
それは単なるリズム楽器ではなく、もはやメロディーすら聴こえてきそうなドラミングです。「この男は間違いなく時代を担うドラマーになる」と私は確信したのでした。そんな彼のファースト・ソロアルバムです。聴かない理由は有りません。

01.Tower of Inspiration (Weckl/Oliver )
02.Here and There (Weckl/Oliver )
03.Festival de Ritmo (Weckl/Oliver )
04.In Common (Moyer/Guth/Mayer)
05.Garden Wall  (Moyer/Guth/Mayer)
06.Auratune  (Oliver )
07.Softly, As in a Morning Sunrise (Romberg/Hommerstein)
08.Master Plan (Corea)
09.Island Magic (Weckl/Oliver )

しかし、このアルバムは音が良いですよ。楽器一つ一つの細かなフレーズがくっきりと浮かんできます。普通、こういったサウンドは長く聴くと疲れるんですが、そんな事も無くて・・・あくまでも私個人の見解です。

01.Tower of Inspiration
Dave Weckl(d)  Jay Oliver(key,g-pro,syneffects) Tom Kennedy(b) Jerry Hey(tru)  Bill Reichenbach(tro)

彼独特のスタイルを誇示したまさに「名刺代わりの一曲」と言った曲です。硬めのドラムサウンドとホーンセクションとが絶妙に絡みあいテクニカルな極上のファンキーグルーヴを体感できます。
スネアドラムの入る位置がポイントで、よりこの楽曲を複雑にしているのですが、グルーヴ感溢れるトムのベースがビートのツボを押さえる事によってノリを失う事無く華麗な曲に仕上がっています。

02.Here and There
Dave Weckl(d) Jay Oliver(key) Anthony Jackson(b)  Eric Marienthal(sax) Peter Mayer(g) 

ミディアムテンポの曲ですが、流石にスピード感抜群です。緩急を活かしたドラミングは特筆すべきものがあります。一曲でこれだけ多彩でバリエーション豊かなドラミングを体感できるのかと目から鱗が落ちる一曲ですよ。リズムのイリュージョンという表現がピッタリです。単調になるのをドラミングでカバーするお手本の様な曲ですね。特にメトリック・モジュレーション(なのかな?)と思われるテンポ・チェンジ(リズム・チェンジ)のドラミング・アプローチは印象的です。
エリック・マリエンサルのSAXとピーター・メイヤーのギターの掛け合いも熱いですね。

03.Festival de Ritmo
Dave Weckl(d) Jay Oliver(key) Anthony Jackson(b) Eric Marienthal(sax) Jerry Hey (tru) Bill Reichenbach(tro)

タイトルから察する様にラテン調のナンバーです。ホーンセクションの響きが印象的で、叙情的な曲調をより明確のものにしています。この曲のファンは結構多いようですね。
難解さと美しさを合わせ持った、メロディアスともいえる流れるようなドラムフレーズが光りますね。曲調にマッチしてこそ、その存在意義を認識できるドラムソロは絶品です。華麗なタムワークは必聴です。
所々に聴かれるショーロ的なアプローチが効果的ですね。

04.In Common
Dave Weckl(d) Jay Oliver(key) Anthony Jackson(b)  Eric Marienthal(sax) Peter Mayer(g)

少々叩きまくりのドラムにも疲れてきたかなと言ったところに、絶妙のタイミングで、ナイーブで理知的なサウンドが飛び込んできます。
オーソドックスな曲とシンプルなプレイですが、実にタイトで、曲の流れに逆らう事無い自己のテクニックをコントロールしたプレイは筆舌に値します。まろやかで豊潤な中高音を強調したドラムサウンドも曲調にマッチしています。
メンバー各々が演出する、曲の表情やダイナミクスの付け方も絶妙ですね。

05.Garden Wall
Dave Weckl(d,per) Jay Oliver(key) Anthony Jackson(b) Chick Corea(syn) Michael Brecker (sax)

デイヴの恩師でもある、ご存知「チック・コリア」が参加しています。流石にこの二人が居るだけで出てくる音はまさに「エレクトリック・バンド」に近い物を感じますね。チックの奏でる彼独特のシンセ・サウンドと、デイヴのドラミングはやはりベストマッチですね。相性抜群です。
しかし、マイケル・ブレッカーのソウルフルでワイルドなSAXがギリギリのところで「エレクトリック・バンド」になってしまう事を防いでくれています(笑)。ここにマイケルじゃなくてエリック・マリエンサルが居たら・・・それはそれで良いんですけれどね(笑)

06.Auratune
Dave Weckl(d) Jay Oliver(key) Peter Mayer(vo) Scott Alspach(tru)

シンセサウンドを主体としたコンテンポラリーなレゲエ調?のナンバーです。スローテンポで無機的なシーケンスフレーズがデイヴのドラムと合わさる事によって、途端に色彩豊かなサウンドに変化していきます。
実験的な作品ではありますが、サウンドメイキングとフレーズの組み立て方は実に興味深いですね。ゆっくりとしたリズムの心地良さと適度な緊張感が一体となり不思議な空間を創っています。ピーターのボーカル(コーラス?)が効果的ですね。
サウンドの隙間を埋めて行くリバーブ処理されたハイピッチのスネアが実に心地よく響きます。

07.Softly, As in a Morning Sunrise
Dave Weckl(d) Ray Kennedy(pf) Tom Kennedy(b)

邦題「朝日の如く爽やかに」。今更説明不要のジャズ・スタンダードナンバーですね。
様々な方がこの曲を演奏し、そして名演と呼ばれるものを残していますが、この演奏も名演の一つに数えられるべきものでしょう。奇をてらう事の無いストレートなJAZZスタイルでの演奏ですが、最先端のドラムテクニックでの躍動感溢れたリズム・アレンジとプレイが、このスタンダードナンバーをより力強いコンテンポラリー・ジャズと変化させています。それでいてスウィング感は全く失われていません。そして、何より特筆すべきは原曲の持つ魅力を損う事の無い絶妙なアレンジは秀逸です。彼の卓越した才能には驚きを隠せません。
「天国へ昇るかの様な恋の情熱は人を地獄へと突き落とす」の歌詞ならぬ「天国へ昇るかの様なドラミングは人を地獄へと突き落とす」・・・怖い!!!(このアルバムのそれにはボーカルはありませんが・・・笑)

08.Master Plan
Dave Weckl(d-left channel) Steve Gadd(d-right channel) Chick Corea(pf) Jay Oliver(syn) Anthony Jackson(b)

このアルバムのハイライトととも言うべきトラックです。彼の師匠?でもありますスティーブ・ガッドとのコラボレーション作品です。チックのペンによる楽曲ですが、一聴しただけで彼の曲だと判るフレーズと曲調は相変わらずです。アルバムタイトルのナンバーに相応しいチックからの最高のプレゼントですね。彼のアルバムの中で最も重要な曲とも言えるでしょう。
時代を代表する天才スーパードラマー二人が織成す神業的とも言える極上のドラムサウンドとハイテクニック、そしてグルーヴを充分に堪能できます。確かなテクニックと音楽性に裏打ちされた、二人の音と音の対話から生まれるプレイは立体的な空間知覚をも感じます。
ベテランミュージシャンの余裕・貫禄と深みのあるサウンドいったものを感じるガッドのプレイに対し、線が細い分、繊細で粒の揃ったテクニカルで力漲る強力なデイヴの演奏・・・この対比が実に興味深いですね。
決して自己主張だけの演奏ではない、真のインタープレイをこの作品に感じ取れます。それと同時に、この二人が繰広げらる強力なインタープレイは他を一切寄付けない凄味をも感じます。
ドラマーでこの曲を聴いた事が無い方は今すぐ御購入を検討して下さい。
努力しても凡人は天才(この二人)に成り得ないと痛感した作品です(笑)

09.Island Magic
Dave Weckl(d,per) Jay Oliver(key) Anthony Jackson(b) Chick Corea(syn- solo)

一聴すると判りづらいですが7/8拍子の曲です(多分)。流れる様なメロディーラインと、非常にライトでカラフルなサウンドは、変拍子をも感じさせず違和感なくリスナーの耳に飛び込んできます。ラテンフレーバー溢れるアンソニーのベースラインも秀逸です。
繊細な感覚でしなやかに歌うようなドラムソロは曲の流れに逆らう事なく、もはやこの楽曲に無くてはならない一つのメロディーラインと言ったものさえ感じます。
難解なサウンドながら、ポップスさが程よくミックスされた楽曲は良いですよ。テクニックは勿論、アイディアが光る作品ですね。

☆☆☆ ここが私的FUSION(フュージョン) ☆☆☆

打楽器とは、人類が最初に奏でた「楽器」では無いでしょうか。その打楽器として一つの完成形がドラムだと思っています。
私はドラマーではありませんので演奏面についてはあまり詳しくはありません。しかし、このドラム・・・実に難しい楽器です。
叩くだけで音が出るのですが、その音をコントロールし音楽として成立させるには様々なテクニックと卓越したリズム感、音楽的知識は勿論、生理学、病理学すら理解せねばならない事さえあります。
そして、それらを突き詰めテクニカル・トレーニング、メンタル・トレーニング、フィジカル・トレーニング等の鍛錬の結果、本当のドラマーが誕生するのでは無いでしょうか。当然生まれ持った才能は言うに及ばずですね(楽器全般においても然るべき事でしょう)。

デイヴ・ウェックルはそのドラマーに必要な資質を完璧に備えた恐るべきミュージシャンだと私は認識しています。
しかも、それに加へハイレベルでハイセンスなアレンジ能力と作曲能力をも兼ね備えている点、他のドラマーより抜きん出ているのはこのアルバムを含め、現在の活躍が証明していますね。

また、どんなに速いプレイや、高度なテクニックにおいてもリズム重視のポリシーを見出すことが出来る彼のドラムプレイとそのスタイルが、日本の音楽シーンへ及ぼした影響は絶大です。

この「マスター・プラン」は彼の初リーダー作になりますが、「ELEKTRIC BAND」での活躍云々と言った先入観を差し引いても、演奏・曲・アレンジ、全てにおいて極めて完成度が高いアルバムだと思います。

とは言ったものの、やはりこの方のドラミングは凄いの一言。とにかくスティックコントロールが完璧で尚且つ、タイム感が抜群です。そして音の分離が良いですね。一打一打がハッキリ聴き取れ、どんなに複雑で高速な演奏をしても華麗でスマートなフレーズに変身させてしまいます。
逆にこの「華麗でスマートなフレーズ」と言う点が彼を否定している人たちの、その最大要因だと思いますが・・・難しいところですね(笑)

この作品と現在の彼の演奏を比較すると、円熟味がまして深いグルーヴ感を醸し出しています。もう鬼に金棒ですね。

この「マスター・プラン」はテクニカルなドラムサウンドを満喫するにはこの上ないアルバムですね。そして彼のソロアルバム(デイヴ・ウェックル・バンドも含み)では最もリズム・アレンジの妙を感じさせてくれる作品です。

そして何より最も重要な事は、デイヴ・ウェックルがドラマーとしてだけではなく、総合的なミュージシャンである事を我々に示してくれた重要な作品です。

☆☆☆ 以上が私的FUSION(フュージョン) ☆☆☆

***1990年のヒット曲***  おどるポンポコリン、浪漫飛行、麦畑 、勇気のしるし

それじゃ。また。 

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コメント

こんばんは☆
少しばかり、お久しぶりの書き込みです。
最近、話題についていけなくて、コメントできない私です^^
チック・コリアは最近時々聴いています。

投稿: まりん | 2006/05/18 23:57

まりんさんへ。コメント感謝致します。

こちらこそ御無沙汰しています。
そういえば以前そちらにお邪魔した時、チック・コリアを聴いているとコメントされていましたね。
私もRTFやエレクトリック・バンドの大ファンなのでチック・コリアをレヴューしようと目論んでいますが、なかなか難しいですね(汗)

>最近、話題についていけなくて、コメントできない私です^^
・・・ゴメンナサイ・・・(涙)

投稿: FUSION | 2006/05/19 11:31

お久しぶりです。milkybarです。
先ほどはコメントありがとうございました。
すでに「MASTER PLAN」をREVIEWされてたんですね。しかもいつもながらの濃い内容なので、自分のがかなり恥ずかしいです(大汗) "このドラム・・・実に難しい楽器です"以後の解説が完璧すぎです。

ほんとにドラムって難しい楽器ですね。wecklを聴くといつも痛感します(笑)

投稿: milkybar | 2006/09/24 15:49

milkybarさんへ。コメント感謝致します。

私が彼を好きな最大の理由は、やはり淀みなく流れる華麗なドラミングと歌心、そして自分に合ったタイム感です。特にこのアルバムはソロ第一作にしてドラマー、コンポーザー、アレンジャーとしてのwecklをまざまざとみせつけてくれました。

どうしても思い入れの強いミュージシャンのレヴューには力が入ってしまいます。挙句の果てに自分はドラマーではないので客観的な判断が出来ない分、レヴューしていて「本当にこれであっているのかな?」と不安になりつつUPしているのが本当のところです(汗)

最後になりましたがお褒めの言葉をいただき恐縮するばかりです。本当に有難うございました。

投稿: FUSION | 2006/09/24 18:12

管理人さん!たった今、生デイヴ見て来ました!!あの人すごいです!スゴイ!としか表現出来ない自分が情けないです。しかしあの人は何ででもどこででも叩きますね。ブラシの柄でも叩いていましたし、スターンと二人きりの時には素手でボンゴの様に叩いていたのが面白かったです。それにしてもあんな人を最初に見てしまったら大変な事になりそうです。叩くと言う事に関してのこの世の全てのセンスがあの人に降りて来てるのではないかと思う位完璧です。彼は特例ですよね。凄すぎて目標にもお手本にもなりません。ライブの後恐れ多くも話掛けてみたのですがなぜか励まして下さいました。興奮してスティックをおねだりする余裕がなかった事を後悔しています。マスタープラン、管理人さんのレビューを読みながら再度聴いてみます!

投稿: tess | 2009/06/17 00:34

tessさんへ。コメント感謝致します。

ライブのご報告有難う御座います。
本当に羨ましいです!それもデイヴの盟友マイク・スターンと共演となれば尚更素晴らしいライブだった事でしょう。そして何とデイヴと会話まで・・・巷の噂では音楽に対しては相当にナーヴスな方と聴いていますが、tessはじめリスナーに対しては実に紳士的な方のようですネ。やはり「百聞は一見に・・・」ですネ。私もtessさんの様にもっと多く生のサウンドに触れたいと切に思うのですが・・・なかなか

投稿: FUSION | 2009/06/17 21:57

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