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検体番号54 <THIS SIDE UP(ディス・サイド・アップ)>

541 今回解析するのは、「David Benoit(デビッド・ベノワ) 」の<THIS SIDE UP(ディス・サイド・アップ)>(1985年発表)です。

6月と言えば・・・梅雨・・・ですね。気分が滅入りますよね。でも、この嫌な梅雨さえも先人は歌にして残してくれています。

五月雨の 降り残してや 光堂
五月雨を 集めて早し 最上川 

美しいですね。もしかして梅雨を嫌うのは現代人だけなのかも知れませんね。
でもジメジメした気候はやはり・・・私も苦手です(笑)
雨が続くと外に出るのも億劫になりますしね。
そんな時は是非このアルバムを聴いて見てください。

01. Beach Trails 
02. Stingray 
03. Land of the Loving 
04. Linus and Lucy 
05. Sunset Island 
06. Hymn for Aquino 
07. Santa Barbara 
08. Waltz for Debbie 
09. Landscapes 

決して梅雨時期限定ではありませんが、その美しい曲を聴いていると何故かホットするんですよね。
このアルバムの曲が悲しい事や辛い事も、雨と一緒に流してくれるかも知れませんよ。

01. Beach Trails 
David Benoit(pf,key) Bob Feldman(b) Tony Morales(d) Grant Geissman(g) Michael Lang(key) Del Blake(per) William Henderson, concertmaster and the L.A Modern String Orchestra. conducted by Kenneth Bonebrake
洗練された美しいメロディーがリスナーを虜にしますね。デリケートなタッチの踊るようなピアノは美しくて、そしてリスナー暖かく包み込んで夢見心地な気分にさせてくれます。フェアリー・テールの様にさへ聴こえてきます。
ストリングスを効果的に響かせたクラシカルなサウンドに、コンテンポラリーなサウンドが見事に同調した素晴らしい楽曲です。
印象的なイントロの4/4と 7/4と 5/4を巧みに組み合わせた流れるようなラインは、後半でストリングスと一緒になった時、より一層その真価を発揮してくれます。
この一曲を聴いただけで、彼のアレンジ手法が実に多彩であると理解して頂けると思います。
大好き!

02. Stingray
David Benoit(pf, kye) Nathan East(b) John Robinson(d) Paul Jackson. Jr (g) Randy kerber(key) Bobbye Hall(per)
リリカルでシリアスな曲調に、ゆったりと流れるようなグルーヴが合わさる事によって新鮮な感覚を呼び起こしてくれる不思議なナンバーです。
洗練された柔らかなリズムで満たされた海を、ピアノが泳ぐように漂っていますね。この独特の浮遊感は癖になりそうです(笑)
知的で自己抑制ができたプレイによってタイト過ぎず、ライトで聴きやすく仕上がっています。

03. Land of the Loving 
David Benoit(pf) Nathan East(b) John Robinson(d) Paul Jackson Jr.(g) Randy kerber(key) Bobbye Hall(per)Brandon Fields(sax) Dianne Reeves(vo)
ダイアン・リーブスの切なく叙情的なボーカルが燦然と光り輝いていますね。正統派の手法でシンプルに歌うバラードがこれほどまでに美しく、そして胸を打つとは・・・彼女の声質によるところが大きいのかも知れませんね。しかし、センチメンタルで甘美なバラードはやはり良いですね。
この曲を聴いた全ての人が優しくなれ、それぞれ大切なものを思い出してくれたら嬉しいですね。
豊潤で何処か懐古な味わいを感じるシンプルな演奏がダイアンのボーカルと合わさり、優しくて麗しい心地良く広がる空間は絶品です。

04. Linus and Lucy 
David Benoit(pf) Nathan East(b) John Robinson(d)  Paul Jackson. Jr.(g) Randy kerber(key) Bobbye Hall(per)
「ライナスとルーシー」と言えば「スヌーピー」ですね・・・スヌーピー(ピーナッツ)のサントラで有名?なピアニスト、ビンス・ガラルディの曲です(彼の「A Charlie Brown Christmas」もお奨めです)。
このアルバムではガラルディのスタイルを継承しつつも、軽くステップするかの如くポップスさをブレンドしたコンテンポラリーなサウンドは、ライトなデビッドらしい都会的感覚を感じます。
中盤のピアノソロは,ゴスペル調で緩急を活かした歌う様なラインはアクの抜けたリチャード・ティーのサウンドをイメージして頂ければ・・・いいかな?(笑)。そのサウンドはジョン・ロビンソンとネーザン・イーストのリズム隊によってより一層ファンキーに仕上げられています。しかし、決して熱過ぎずマイルドなサウンドになっており、このアルバムにマッチさせています。流石ですね。

05. Sunset Island 
David Benoit(pf) Nathan East(b) John Robinson(d)Paul Jackson. Jr.(g) Randy kerber(key) Bobbye Hall(per) Brandon Fields(sax)
ナイーブで哀愁を忍ばせたメロディーが孤独感といたものを上手く表現しています。透明感の有るチョッと涼しげなサウンドがそれをより一層印象深いものにしています。
スリムでしなやかなリズム隊の上で踊る、ナイーブで繊細な感覚のピアノが美しく響く作品ですね。

06. Hymn for Aquino 
David Benoit(p) Bob Feldman(b) Tony Morales(d) Grant Geissman(g) Michael Lang(key) Del Blake(per) Ernie Watts(sax) Jerold Weber(key) Willlarn Henderson-concertrnaster and the L.A.Modern String Orchestra. conducted by Kenneth Bonebrake
荘厳な雰囲気を漂わす、このアルバムにおいては特異な存在とも言える楽曲です。アーニー・ワッツの胸が痛くなる程の想いを込めたSAXの響きが素晴らしいですね。
叙情的で洗練された美しいメロディーは相変わらずですが、あくまでもメロディーの響きを美しく演出させるためだけに存在するその静かなオーケストレーション・サウンドがこの曲に生命力と言ったものを注ぎ込んでいます。
また終盤に時を刻む時計の音の様なハイハットが一瞬消える場面がありますが、この時間が止まったかのような演出にもハッとさせられます。
この作品のアレンジに彼の音楽的非凡さを痛感します。

07. Santa Barbara
David Benoit(pf, kye) Bob Feldrnan(b) Tony Morales(d) Grant Geissrnan(g) Michael Fishor(per)Sam Riney(sax)
オーソドックスな曲とシンプルなプレイで表現されるメロディーの愁いと切なさは特筆すべき点です。彼が造り出す懐古的で感傷的なメロディーは良いですね。デビッドのピアノソロに彼の美的センスを感じる事が出来ます。
しかし、もう少しサウンドメイキングとアレンジにヒネリがあっても良かったかな?とも思いますが・・・。
ベースとギターのサウンド処理にも少々疑問が残りますね。決して悪いサウンドではないのですが・・・複雑です。アンサンブルも上手くいっていない様な感じを否めません。

08. Waltz for Debbie
David Benoit(pf, conductor) Bob Feldrnan(b) Tony Morales(d) Williarn Henderson-concertrnaster and the L A. Modern String Orchestra
今更にして説明不要、ビル・エヴァンスの名曲「ワルツ・フォー・デビー」ですね。
イントロのストリングス・アレンジが素晴らしく、この曲の持つ優しさや麗しさ清楚さといったものを上手く演出しています。
デビッドのピアノにはビルの様な儚さやリリシズムといったものは、その影を隠しています。
しかし、その代わりにエレガントで何処か可愛らしいく、そしてビル同様、暖かく包み込んでくれる様なサウンドで彩られています。
やはり彼も「エヴァンス派」の一人だったのですね(笑)。「Waiting for spring」(このアルバムもお奨めです)の布石がこのカバーだった事は明白ですね。
でも・・・やっぱりいい曲ですよ・・・ネ。

09. Landscapes
David Benoit(pf)
題名の如く、移り変る日々の様々な風景をピアノ一つで表現したかのようなビジョンをも感じさせてくれます。
変幻自在にサウンドカラーを変化さ、リスナーを楽しませてくれますね。それは宛も彼の日常を表現したかの様にすら思わせます。
上品で情感豊かな演奏がその景観と合わさり、そこに彼特有の透明さが加味され、美しいサウンドを響かせています。
彼の魅力が凝縮したピアノソロですね。

☆☆☆ ここが私的FUSION(フュージョン) ☆☆☆

この作品、アメリカでは(勿論日本でも)相当ヒットした様で、ライナーによると

「86年6月にビルボード誌のジャズ・チャートで第1位。キャッシュ・ボックス誌で第2位。ローリング・ストーン誌のジャズ・チャートで第1位。」

といった輝かしい成績?を残しています。

この事からもお解かり頂けるかと思いますが、万人に受け入れられる親しみやすい作品と言えるでしょう。この「親しみ易さ」とは大衆的に最大の魅力です。

確かに彼の創り出すメロディーは本文にも記した様に美しくてリリカルで甘美で・・・その表現方法は枚挙にいとまがない程です。これだけでも既に十分魅力的なのですが、その美しいメロディーを最大限に活かしたアレンジに彼の非凡さと高い音楽性といったものを強烈に感じます。

全ての楽曲に緻密で色彩感豊かなアレンジを施し、シンプルな楽曲を印象的なものに仕立て上げています。しかしそのアレンジは決して自己主張する事無く、空気のようにひっそりとそして確実に存在しています。

この緻密なアレンジと、流麗なメロディーが同化する事によって非常にまとまりのある、聴きやすい作品に仕上がっています。
しかし、聴きやすさが災いし、少々物足りなさをも感じるのも正直なところでしょう。リスナーとは何と我がままなのでしょうか(笑)。
とは言ったものの、彼の醸し出す理知的で威厳のあるノーブルさは魅力的です。それが嫌味にならないところも才能の一つでしょうか(笑)。

今聴いても新鮮でライトな空気でアルバム全体が満たされ、それぞれの楽曲の持つ優美で不思議な色彩感を十分に体感できるアルバムです。

☆☆☆ 以上が私的FUSION(フュージョン) ☆☆☆

***1985年のヒット曲*** 悲しみにさよなら、翼の折れたエンジェル、あなたを・もっと・知りたくて、そして僕は途方に暮れる

それじゃ。また。

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コメント

このアルバム"超"欲しい!!
一度中古屋で手にする機会があったんですが、
国内盤の帯なしで、買わず・・・
 あ、私国内盤は帯付きでない限り
買わないようにしているんですよ。
でないと、際限なく買ってしまうので。


元からファンですが、先月の来日ライヴでますます好きになりました。
彼は日本のマンガが好きで、
幽遊白書のユウスケに触発されたという曲を披露してくれました♪


・・・そういやそろそろ新譜の発売だ!

投稿: DENTA | 2006/06/18 17:32

DENTAさんへ。コメント感謝致します。

正直、私この方の作品は4枚(オムニバス1枚)しか所有していませんので、彼の人物像が今ひとつわからないのです(恥)。
でも大好きなミュージシャンに変わりはありません(笑)

>私国内盤は帯付きでない限り買わないようにしているんですよ。でないと、際限なく買ってしまうので。
分かりますよ。その気持ち。でも、どうしても欲しい場合のみどんなに状態が悪くても買う事にしています。でないとセコハンは何時巡り合えるか分からないので。

>先月の来日ライヴでますます好きになりました。
私はあまりLIVEに行けないので、こちらのほうが羨ましい限りです。いいですね。私も生で彼のピアノを聴いてみたいです。

投稿: FUSION | 2006/06/18 18:33

いい人柄の方でしたよ。
一番彼の近くの席にいたので、視線が度々合ったり、話の返事を振られたりで^^

演奏後、普通に客席に座り、知り合いと話しており、そこにサインをもらいに行きました。
Freedam at midnightとスヌーピーの企画アルバムのCDに書いてもらいました♪
一生の宝物です!!!
その時にベノワが「ピアノ弾くの?」とか「私の演奏どうだった?」等と訊いてきてくれたのですが、
前者には「弾かないけど、ピアノの曲は良く聞いていますと」答えたんですけど、
後者の返事にはamazingやbrilliantの一言でも言えればよかったものの、
興奮だの緊張だので、"How could I discribe..."(なんて言おうか・・・)と微妙な返事を・・・
もっと英語の勉強をしておくべきだった・・・


いやあ、しかし、本当に感動!
今書き込んでいてもあのときの嬉しさがリフレインしてくる(笑)
それほどに一番に好きなピアニストです。

投稿: DENTA | 2006/06/19 03:38

DENTAさんへ。コメント感謝致します

やはりコンサートは良いですね。ましてやデヴィットと会話までしてしまうなんて、羨ましい限りです。
デンタさんのコメントから、彼の音楽と一緒で優しい人柄に安心しました。
私もやはり彼のピアノを生で聴いてみたいです。

投稿: FUSION | 2006/06/19 08:36

こんばんは。Benoitということで沢山TBさせていただきました。
お許しください。
このアルバムは本当にいい曲ばかりですね。
彼の奥さんは日本人で、広島に親族もおられるようです。
昨年の彼のアルバムでは神戸の震災を取り上げた組曲も収録されています。
いつも自宅でBenoitのピアノが聴けるなんて最高に幸せですよね。

投稿: bonejive | 2006/09/18 20:13

bonejiveさんへ。コメント感謝致します。

返信遅くなりすみませんでした。
チョッと遅い夏休みから生還しました(笑)

Benoit・・・実に素晴らしいミュージシャンですね。素朴で暖かくて優しく時に冷たく・・・表情豊かな音楽が素敵ですね。

投稿: FUSION | 2006/09/24 10:52

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