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検体番号56 <BLUE MARINE(誘われてシーサイド)>

56_2  今回解析するのは、「今田勝(いまだまさる)」の<BLUE MARINE(誘われてシーサイド)>(1982年発表)です。

7月ですね。夏が来ると聴きたくなる音楽は沢山あると思いますが、今回紹介する作品もその中の一つです。

私の様に40歳代の方々は「夏=トロピカル・サウンド(死語ですか?)」という図式がインプットされている事と思われます。私の若かりし頃は夏ともなればいたる所で開放感溢れる陽気なサウンドが流れていたものでした。

そんな中でもこのアルバムは「COOLな夏」を体感させてくれます。

01.BLUE MARINE
02.STREET DANCER
03.ANGELFISH
04.SECRET SOUND
05.JUMPIN' DOLPHIN
06.TROPICAL BUTTERFLY
07.DEAR LILI
08.SMILE FOR YOU

試聴は・・・ ここで

今田勝(pf,key) Steve Khan(g) Anthony Jackson(b) Steve Jordan(d) Manolo Badren(per) Grover Wsshington,Jr(sax) Tom Browne(tp)

しかし、改めて参加ミュージシャンを見ると凄いの一言ですね。今田さんとアイウィットネスとグローバー・ワシントン.Jrですよ・・・今更ながらにいい時代だったのですね・・・あの頃は。

01.BLUE MARINE
4小節ではありますが、イントロのスティーブ・カーンが奏でる繊細な叙情を醸し出したサウンドが全てを表現していると言っても過言ではない程、この曲の持つリリシズムといった情景を見事に表現しきっていますね。
しかし、グローバー・ワシントン.Jrの深い哀感溢れるSAXのメロディーと憂愁を感じる音色は何時聴いても万感胸に迫りますね。その演奏は徐々に熱く、そして力強く展開して行きます。
今田さんのデリケートなタッチでの流れを損なわない演奏も見事。
この曲の持つ哀愁が心に留まるノスタルジー溢れるサウンドは絶品の一言ですね。

02.STREET DANCER
ラテン・フレーバー溢れる小気味よいリズムと、グローバーの軽快で馴染み易いメロディーが交錯し心地よい空間が広がります。メロディー指向のリード奏者らしい、歌うようなソロフレーズは聴いていて気持ちが良いですね。
そして、そのサウンドに彩と躍動感を与えるパーカッシブなピアノとギターの織り成すバッキングに、しなやかなグルーブ感を覚えます。
ライトな手触りのサウンドですが、聴き込むほどに熟練のミュージシャンによって演出された開放感と躍動感に魅了されるのです。
「STREET DANCER」・・・この曲名に偽りなし(笑)

03.ANGELFISH
晴れ渡ったカリブ海を表現したかの如く、透明さを加味した美しいサウンドを響かせています。おおらかに奏でられたこの作品は目を瞑って聴くだけでその景観を必ず体感できるでしょう。
スティーブ・カーンのミュートを効果的に取り入れたクリーンなサウンドで演奏されたメロディーラインと、JAZZYなソロの対比が印象的ですね。
また、今田さんの紡ぎ出す流れるように華麗なフレーズは独自の洗練された世界を構築し、楽曲自体の持つ美しさをより一層、魅力的なものにしていますね。

04.SECRET SOUND
このアルバムで唯一グローバー・ワシントン.Jrの作品です。それ故、このアルバムの中においては、確かに独特の存在感を放っています。肌理の細やかな感情表現は彼最大の持ち味ですね。もの悲しい旋律が心に響きます。
ソプラノSAXの清冷で柔らかな音色がサウンドの輪郭をぼやかして、ウェット感を高める技法が功を奏し、霧の中を彷徨するかのような不思議な感覚に陥ります。

05.JUMPIN' DOLPHIN
トム・ブラウンのトランペットとグローバー・ワシントン.JrのSAXが織り成す躍動感溢れるファンキーナンバーです。
このアルバムにおいて、このナンバーはその曲調から刺激的とも言える存在です。しかし、ソリッドなリズム隊によってこの作品のカラーを意識した合目的なサウンド構築術によってうまく溶け合っています。決して突出した楽曲になっていないところは注目すべき点ですね。とくに、アンソニー・ジャクソンの跳ねたベースラインがこの曲に流れるような独特のグルーヴ感を創りだしています。
しかし、トムの自己の感性に忠実な演奏スタイルと、エモーショナルなインプロヴィゼーションの存在感は圧巻ですね。

06.TROPICAL BUTTERFLY
サンバのリズムが熱く、官能的に、そして叙情的に響きます。スティーブ・ジョーダンとアンソニー・ジャクソンとマドノ・バドレーナが演出するリズムは彼達の内面から滲み出て来る本物なのでしょうね。確かな実力と、生まれ持ったラテンの素地が背景になければ演じきれない楽曲なのかも知れませんね。
スティーブ・カーンの奏でるメランコリックで哀愁を秘めたアコスティック・ギターが刺激的でドラマティックに響きますね。また、今田さんの演奏にも日本人離れしたスピリットを感じます。

07.DEAR LILI
夏の日は一日毎短くなり、それと同じくらい少しずつ秋へと近づいて行きます。暑さも徐々に和ぎ、真夏の陽光はその様相を厳しさから優しさへといつの間にかに変えてくれました。風鈴の音も何処か寂しげで、光と風を穏かに演出するオブジェになりましたね。
晩夏の頃になると必ず決まってあの懐かしい人を思い出します。DEAR LILI、お元気ですか・・・。
・・・ところでLILIって誰ですか?今田さん。

08.SMILE FOR YOU
南国のリゾートの午後をイメージさせる様な独特の穏やかさと、今田さんの醸し出すチョッとナイブーな明るさは最大の魅力です。
彼達の紡ぎ出すウォームでフレキシブルなサウンドで彩られたフレーズは、語りかける様な存在感をも覚えます。
聴き終えた後、心地良い余韻を充分に楽しめるサウンドはこのアルバムの最後に相応しい楽曲ですね。

☆☆☆ ここが私的FUSION(フュージョン) ☆☆☆

今田さんはこの作品を含め30枚以上の作品を世に送り出しています。
私はその全ての作品を聴いた訳ではありません。しかし、私が知りうる限りの彼の作品と、この作品を比較した時、正直、このアルバムは今田さんの作品と言うよりも、参加ミュージシャン全てが作り出したグループとしての作品と考えた方が自然かも知れません

今田さんには「NOWIN」という日本人によるグループと言うかユニットが存在します。しかし、この作品は今田さん以外は完全に海外のミュージシャンによる作品です。しかし、彼らを配置する事によって今田さん本来の総合的ミュージシャンとしての実力が良く分かる作品になっていると考えます。

この作品で彼達の紡ぎ出すサウンドは確かに感情豊かに様々な景観を歌い上げています。しかし、それは今田さんの作る楽曲とそのアレンジメントを十分に理解しそれを余すところ無く表現出来るミュージシャンの彼達だからこそ作りえた作品ではないのでしょうか。

また、この作品は南国と言った異国情緒を醸し出してはいますが、よく聴き込むと根底には極めて日本的なサウンドが隠れている様に思えてなりません。無論、それは意図的に隠蔽しているのでは有りません。
(面白い事に、個人的には「ミント・ブリーズ」や「レインボー・アイランド」といった作品の方がもしかすると海外のミュージシャンによる作品と思ってしまいそうです。)
その今田さんが造り出すメロディーの持つ日本的な愁いと切なさを参加ミュージシャン各々が自分なりのフィーリングとボキャブラリーとイマジネーションで表現しています。これにより、彼達ならではの独特な存在感と創意性をこのアルバムに深く刻みこんでいます。

何よりグローバー・ワシントン.Jrの存在は偉大で、ここまで今田さんの作品を理解し演じきった技量と悪戯に飾り立ててソフィスティケーションする事無く、曲自体の持つ魅力を素直に彼自身の言葉で語った表現力には感動すら覚えます。

確かにアルバム全体に、鋭さが若干不足している感も否めませんが、バラエティー豊かな中にも、全体に貫かれる理路整然とした統一感は流石ですね。

このアルバムはリスナーそれぞれがそのサウンドから感じられるビジョンとエクスプレッションを幅広い解釈で許容できる、多義的作品と言えるでしょう。

☆☆☆ 以上が私的FUSION(フュージョン) ☆☆☆

***1982年のヒット曲*** チャコの海岸物語、渚のバルコニー、赤道小町ドキッ、夏をあきらめて

それじゃ。また。

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コメント

今アルバムを聴きながら書いてますが、どうも間違ったイメージを抱いていたようです。
外人ミュージシャン起用とジャケットの少し暗めの色具合からジャズ系のサウンドを想像していましたが、このアルバムはフュージョン・サウンドですね。
あまり聞かないうちに忘れてしまったようです。(^_^;

投稿: WESING | 2006/07/07 22:13

はじめまして。こうじょうコム管理人のみつと申します。
音楽情報について書かれているのを読んで書き込みさせていただきました。コメント欄にすみません(^^;)。
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唐突なお願い失礼致しましたm( _ _ ;)m。

投稿: みつ | 2006/07/07 22:44

WESINGさんへ。コメント感謝致します。

>外人ミュージシャン起用とジャケットの少し暗めの色具合からジャズ系のサウンドを想像していましたがこのアルバムはフュージョン・サウンドですね。
仰る事、よく理解できます。確かに今田さんのイメージとこのジャケット(浅井慎平氏)とこのメンバーですから・・・その為かどうかは判りませんが、営業戦略的に「誘われてシーサイド」というサブタイトルが付いたんじゃないかと勝手に解釈しています(笑)
でも、WESINGさんからフュージョンとお墨付きいただいた事、嬉しく思います。

>あまり聞かないうちに忘れてしまったようです。
やはりアルバム全体に、鋭さが若干不足している為、印象が薄い点は否めませんね(涙)

投稿: FUSION | 2006/07/07 23:34

こんばんは。
いっぱい視聴させていただきました^^
グローバー・ワシントン.Jrさんの哀愁のある
メロディーと響きにずっと浸っていたくなり
ます。
ただ、一番好きなのは、「SMILE FOR YOU」
です。

投稿: まりん | 2006/07/09 00:34

まりんさんへ。コメント感謝致します。

試聴有難う御座います(笑)
この作品、実は当時女性に人気があったようです。やはり哀愁のあるメロディーはロマンティックに感じるのでしょうネ。

>一番好きなのは、「SMILE FOR YOU」です。
癒し系のサウンドは心身共にリラックスしますよね。

投稿: FUSION | 2006/07/09 00:46

記事を読んで気になってましたがやっとレコードを入手しました。シンプルな編成で心地よいナンバーが揃ってますネ♪おそらくはこのあとの「コーラルの渚」のほうがキャッチーで分かり易く、若い時分はよく聴きましたが、「誘われてシーサイド」は年を重ねた今のほうが心に沁みます♪

投稿: Cleartone558 | 2010/12/18 22:13

Cleartone558さんへ。コメント感謝致します。

私の記事を読んで興味を持って頂き感謝するばかりです。気に入った頂いたようで何よりです。
>「誘われてシーサイド」は年を重ねた今のほうが心に沁みます。
リスナーの年齢によって聴くアルバムの印象が変わりますよネ。Cleartone558さんはの仰る様にこの「誘われてシーサイド」は実に落ち着いて佇まいのアルバムで聴く度に様々な情感を味わえる好盤だと思います。

投稿: FUSION | 2010/12/20 11:32

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