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検体番号57 <TRANSFUSION(トランスフュージョン)>

57_1 今回解析するのは、「鳥山雄司(とりやまゆうじ)」の<TRANSFUSION(トランスフュージョン)>(1988年発表)です。

前回、キーボーディストのヴィクター・フェルドマンを紹介しましたが、その時、「ヒューマンとテクノロジーが上手く融合した違和感の無い自然でハイセンスなサウンド」とコメントしました。
さて、ギターサウンドを主体としたそんなアルバムが無いかと考えたら・・・やはりこの作品でしょうか。

01. CAPTAIN HADDOCK    
02. LUMBER JACK    
03. TRANSFUSION    
04. SILVER DRAPE    
05. LIPSTICK NO.242    
06. AN ECSTASY    
07. IN HER EARLY DAYS    
08. THE MISSING PERSON    
09. WORKOUT    
10. MY GODDESS

この作品は一言で表現するなら・・・“human nativeでメタリックなサイバー・ギターアルバム”・・・かな?

1988年、今から18年も前ですが、ライナーに記載されているキーボードとシンセとPC-98が時代を感じさせます・・・と言ったものの、私、キーボード関係は全く分かりませんので興味のある方、詳しい方コメントでフォローお願い致します。

<List of keyboards,synthesizers and equipments>
acoustic piano,Akai S-900,Casio FZ-1,EmulatorⅡ,Korg DDD-1,NEC PC-98with"Come on music!!"Pro-one,Prophet-5 VS,Roland SBX-80 TR-727 808 D-550,Yamaha DX-7 Ⅱ FD and TX-816

01. CAPTAIN HADDOCK
鳥山雄司(g,syn,syn-bass,drum machine,pro and mix) 佐藤博(syn-solo)

けたたましいトランペットのサウンドで始まる8ビートのロックナンバーです。ドラムマシンらしいパワフルでソリッドな低音域を活かしたバスドラと、歯切れのよい16分音符刻みのシンセベースの硬質なサウンドが独特の「ノリ」といったものを演出しています。そのシーケンシャル・パターンの上で鳥山さんのエッジが際立った野性味溢れるギターサウンドが唸りを上げます。このシャープでタイトなサウンドでのロックスピリット溢れる攻撃的なソロは魅力的です。アーミングの入れ方も、これがまた気持ち良いですね
また、鳥山さんの盟友・佐藤博さんのシンセとのインタープレイも熱いですね。佐藤さんは鳥山さんの鋭角的なギター・サウンドと対照的に、ハイエンドがスムースなサウンドでバリエーションを広げています。

02. LUMBER JACK
鳥山雄司(g,syn,syn-bass,drum machine,pro and mix) 清水永二(d)

スラップを模したシンセベースに加へ、均整の取れた清水さんのドラムがこの曲に収斂な存在感を創り上げています。シンプルな中にも不思議なバランス感覚を持った楽曲と、そのデジタル・サウンドと戯れるような演奏は新鮮ですね。
メロディーラインを奏でるウインドシンセ系のサウンドはギター・シンセサイザーによるものと思いますが、それを押し退け飛びかかる様なディストーションサウンドでのギター・ソロの落差が絶妙です。

03. TRANSFUSION
鳥山雄司(g,syn,syn-bass,pro and mix) 山木秀夫(d) 美久月千晴(stick bass solo) 本田雅人(sax)

ダイナミックな感情の起伏が鮮烈に印象付けられたタイトルナンバーです。都会的に洗練された楽曲と、広がりのある開放感溢れるギター・サウンドがこの作品のクオリティに大きく寄与しています。また、忘れてならないのが本田さんのSAX。よく聴くとメロディーラインをギターとユニゾンし、そのサウンドの厚みと密度感を高めています。これによりシンプルなメロディーラインをここまで艶やかなサウンドに仕上げているのには感動しました。
面白い事に、この曲はベースラインは打ち込みなのですが、トニー・レビンで有名なスティック・ベースを使用した美久月さんソロが面白い味を出しています。そして、山木さんのドラムが創り出すソリッドなグルーブがこの曲を尖鋭的なものにしています。
余談ですが、この「TRANSFUSION」は佐藤博さんの「AQUA」(1988年発表)というアルバムの4曲目にも収録されています。アレンジ、ミュージシャンは違いますし、鳥山さんはギターも弾いていません。参考までに、 Paul Jackson Jr(g) Pat Mastelotto(d) Brandon Fields(sax) 鳥山雄司 佐藤博(syn,syn-bass)、 といったメンバーで演奏されています。

04. SILVER DRAPE
鳥山雄司(g,syn,pro and mix) 山木秀夫(d) 高水健二(b) 本田雅人(sax)

曲の持つ切なさと言ったものが柔らかく響いてくる懐古的なバラードです。鳥山さんの豊かな音の伸びと粒立ちが抜群のギターサウンドが奏でる泣きのギターは感動的ですらあります。
また、参加ミュジシャン全てのシンプルながらも、味わい深い情操豊かで、歌心溢れるプレイが心に響きます。豊潤なバラードはやはり人間主体の演奏が一番かもしれませんね。特に本田さんの彼らしい叙情的なブロウは素晴らしいですね。

05. LIPSTICK NO.242 
鳥山雄司(g,syn,syn-bass,drum machine,pro and mix) 森村献(pf)

打ち込みの無機的でドライなサウンドをバックに鳥山さんのギター・シンセサイザーが浮遊感の有る世界を演出しています。アコースティック・ギターをモチーフとしたサウンドがこの作品のしなやかさとスプレッド感を見事に描き出しています。
また、この鳥山雄司さんと森村献さんのコンビ・・・そうです、名曲「The Song of life」を奏でたコンビですよね。多分これが初共演になるのでしょうか?何れにせよ鳥山さんにとっても重要な作品なのは間違いないでしょう。

06. AN ECSTASY
鳥山雄司(syn,syn-bass,drum machine,pro and mix) 山木秀夫(cymbals)

これは鳥山さんが「ブレード・ランナー」と言う映画をモチーフに創った曲だそうです。全てコンピュータで作製した様ですね。
冷たいほど透明感の高いサウンドが、神秘的で虚空の空間を体感させてくれます。

07. IN HER EARLY DAYS
鳥山雄司(g,syn,syn-bass,drum machine,pro and mix) 森村献(pf)

この曲も「LIPSTICK NO.242」同様、鳥山さんと森村さん二人だけによる作品です。
メカニカルな打ち込みのリズムをバックに鳥山さんの有機的とも言えるロックスピリット溢れるエモーショナルなギターサウンドとプレイは魅力的です。
しかし、ギターソロでの驚異的なサスティーンは絶句!

08. THE MISSING PERSON
鳥山雄司(g,syn,syn-bass,drum machine,pro and mix) 高水健二(b)

幻惑するかの如きミスティシズムと、殺伐としたリアリズムが交錯したかのような不思議な世界を感じます。当ても無く彷徨い歩く疲労感と虚無感にも似たこの感覚・・・表現に苦慮します。
「行方不明者」と言う題名が、この曲のもつ独特の感触を表現するには最適な言葉かも知れませんね。もしかすると鳥山さん苦悩を表現しているか・・・なんて考えてしまいます。

09. WORKOUT
鳥山雄司(g,syn,syn-bass,drum machine,pro and mix) 山木秀夫(d) 本田雅人(sax)

シンセ・ベースのアグレッシブなシーケンスパターンが印象的な、硬質で俊敏なファンキーナンバーです。そのシンセ・ベースのサウンドと山木さんのドラムが混然となり、まさにソリッドなグルーヴといった感じがよく表現されています。また、パワフルでリスナーを興起させてくれる本田さんのSAXソロと、刃物のようにシャープでエモーショナルなギターソロは圧巻です。

10. MY GODDESS
鳥山雄司(g,syn,,drum machine,pro and mix) 高水健二(b) 大儀見元(per)

鳥山さん曰く「水泳に夢中になっていた時の、プールの水が光に反射する様と、ゆっくり泳ぎ続けるイメージで出来た曲です」とコメントしていました。
そのゆっくりと流れる時間と、しなやかな景観を鳥山さんのアコースティック・ギター(シンセ?)と高水さんのフレットレス・ベースがものの見事に表現していますね。また、大儀見さんのオプティカル・アートの様なパーカションがこの曲に光と影を演出しています。
この作品の持つ精緻かつ清楚なサウンドは、いつ聴いても毅然とした美しさを感じさせてくれます。
彼の隠れた名曲ですね。

☆☆☆ ここが私的FUSION(フュージョン) ☆☆☆

以前紹介した「プラチナ通り」を作製した人と同一人物と思えないほどに、それとは全く違うアルバムです。
このギャップは非常に散漫に感じるかもしれませんが、それがかえって彼の懐の深さと多彩な音楽性を知る事ができ個人的にはどちらも鳥山さんの音楽として自然に受け入れる事が出来たのですが・・・(彼のアルバム全てにおいてバラエティー豊富と言えます)。

鳥山さんにとってコンピューターを駆使したサウンドメイキング・スタイルは必然性以外の何物でも有りませんね。ご存知、高中正義さんの幾つかのアルバムにおいて、その手腕は遺憾なく発揮されていた様ですし、当時主流となりつつあったDTMの草創期とも言える時代にタジオミュージシャンとして活躍していた事等を考えても極めて自然な流れだと解釈します。問題は、如何に自己のスタイルにそれを取り込むかが重要なポイントになってくると思います。

それを裏付ける様に、このアルバムについて鳥山さん本人が「この作品を創った当時はコンピューターと人間の演奏の融合に興味があった」とコメントしていたようです。この言葉から、このアルバムを作製するにあったって彼がどの様なモチベーションに有ったのか興味深いところです。

昨今は演奏技術をテクノロジーで補い、それらしいキッチュなサウンドが簡単に創れてしまえるらしいですが、そんなデジタルサウンドでフレーム・アップしようとするサウンド群とは確実に一線を画しています。
あくまでも当時のテクノロジーを駆使し、音楽らしさを失わないサウンドを構築したその能力と卓越したセンスは驚くばかりです。確かに今聴くとそのサウンド自体はチープなものなのかも知れません。しかしながら、あくまでもそのテクノロジー自体を楽器然とした活用術は今だからこそ評価されるべきなのではないかと考えます。

コンピュータ・ミュージックと、鳥山さんの奏でる野性的でいて何処か知的なフレーズの錯綜は誰も真似ることのできない独創性をも感じます。

また、純粋にギターサウンドだけに耳を傾けてもフュージョンファンだけじゃなく、ロックファンにも充分アピールできるアルバムです。

テクニックとか楽曲良さとかだけではなく、鳥山さん本人がコメントするように「コンピューターと人間の演奏の融合」と言ったコンセプトを実際に具現化したリアルな存在感を誇示した点にアルバムの価値観が在ると思います。そしてそこには職人気質的な彼の、極めて人間的な造形美と言ったものが浮き彫りにされ、充分にその魅力を感じる事が出来ます。

☆☆☆ 以上が私的FUSION(フュージョン) ☆☆☆

***1988年のヒット曲*** ガラスの十代 、COME ON EVERYBODY、KOME KOME WAR、悲しいね

それじゃ。また。

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コメント

鳥山さんが早くからコンピューターを駆使しているのは知ってますが、それが僕にとっては好みじゃなかったりして。(苦笑)
だから、このアルバム後に結成したZi SPACEというバンドでの音の方が好きですね。

ドラムの清水さんは英二ではなくて永二だと思います。
スクェアのドラマーをしていた人じゃないかと思うんですけど。

投稿: WESING | 2006/07/10 11:57

WESINGさんへ、コメント感謝致します。

>ドラムの清水さんは英二ではなくて永二だと思います。スクェアのドラマーをしていた人じゃないかと思うんですけど。
仰るとおりですね。またしても私の学の無さを露呈してしまいましたね(恥)。早速訂正させて頂きました。有難う御座います。
しかし、清水さんと鳥山さんは結構親交が深いようですね。以前紹介した1994年の「TRUTH2000」や「MEN-MATICS」でも共演していますし、一時期、鳥山さんと田中豊雪さんと清水永二でバンドを作る話しまであったそうですね。

>このアルバム後に結成したZi SPACEというバンドでの・・・
このバンドが出てくるところは流石WESINGさんですね・・・とは言ったものの、この存在は鳥山さんのインタビュー等で知っていましたが実際に聴いた事はありません。鳥山さん、本田雅人さん、石黒 彰さん、清水永二さん、三枝??さん、と言うメンバーだったと記憶しています。実に興味深い音源ですね。

余談ですが、この頃「DANDY STEERING」と言うアルバムを鳥山さん、本田雅人さん、森村献さん、美久月千晴さん、というメンバーで発表されていますが、なかなか見つけられません。何とかしてこの音源も聴いてみたいものです。

最後に、ご指摘感謝致します。有難う御座いました。

投稿: FUSION | 2006/07/10 20:20

こんばんは、どうもです。
鳥山雄司。
もうギタリストという枠だけでは捉えられない人でしょうか。
サウンドエクスプローラーでも世界遺産テーマをはじめ、このアルバムももちろん紹介してます。
例えばシルバーシューズのようなクロスオーバーっていう感じの色が濃い若さ溢れるプレイもいいんです。
そしてオーケストレーションとともに壮大に繰り広げる世界遺産もいいんです。
どっちも鳥山雄司の素晴らしさを十分に堪能できる。
でも、僕個人としては、このTRANSFUSIONなんですよ。
数々のギタリストのアルバムの中で僕としては名盤中の名盤であります。

投稿: groove | 2006/07/11 00:48

grooveさんへ。コメント感謝いたします。
返信遅れてごめんなさい。ブログメンテナンスの為、アクセスできませんでした。

grooveさんのコメントが全てを集約してくれていますね。
まさに同感です。私もこのアルバムと「シルバー・シューズ」と「プラチナ通り」は特別なアルバムです。

彼のマルチな才能と卓越したセンスと作曲能力、演奏能力全てにおいて仰るように「もうギタリストという枠だけでは捉えられない人」ですね。

投稿: FUSION | 2006/07/13 15:14

この前はあわてて昔の名前で書き込んでしまいましたが、その後どういう状況でしょうか。
まだまだ続いている余震が気になります。

さて、数日前に「DANDY STEERING」というアルバムがオンデマンドCDとして発売されていることを知りました。たしかFUSIONさんが探していたはず、と思って、その記事を探したら、コメントを見つけたのでここへ書くことにしました。

もうこの記事から5年も経っているし、CD発売からでも1年半なので、すでに手に入れているかもしれませんね。
注文生産のCD-Rなので、廃盤はないと思うので、もしまだだったら、音楽を聞く余裕ができた頃にどうぞ。amazonやHMVなどでも注文できるんじゃないかと思います。

コロムビアのURLを入れておきます。

投稿: SaToshi | 2011/04/15 13:52

SaToshiさんへ。コメント感謝致します。

以前に私が何気なくコメントした些細な事を覚えていて頂、尚且つ情報まで頂いた事に心より感謝するばかりです。入荷まで時間がかかるようですが、HMVにて購入してみます。

震災ですが、何とかライフラインは復旧しましたが仕事面で苛酷な状態が続いています。もう少し落ち着いたら本編にて状況報告させて頂きます。

何かとお気遣い有難う御座います。

投稿: FUSION | 2011/04/18 02:48

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