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検体番号60 <VIDA(ヴィーダ)>

60 今回解析するのは、「野呂一生(のろ いっせい)」<VIDA(ヴィーダ)>(1989年発表)です。

前回、スクエアのリーダ、安藤まさひろさんのソロ・アルバムを紹介しました・・・となればカシオペアのリーダー、野呂一生さん、この方を紹介しない訳にはいきませんよ・・・ネ

01.NESSA
02.TASOGARE-NO-ESTRELA
03.EXPLORACAO
04.KALAKULENAI
05.YU-NAGI
06.IMA-SUGUNNI
07.MORRO DO CORCOVADO
08.KAZE-NO-TAYORI
09.MISTERIO
10.NEMURE TABIBITO

野呂一生(g.vo.cho.per.syn) TEO LIMA(d) HUGO FATTORUSO,NELSON AYRES(key) SIVUCA(accordion) SERGINHO TROMBONE(trb) BIDINHO.NELSON HENRIQUE(trp) ZE CARLOS(sax)...other
(ミュージシャン名前はライナーにありました愛称・通称・略称?を引用しました。フルネームで記すと長すぎて・・・)

このアルバムは野呂さんの2ndソロになります。彼自身のセルフ・プロデュースによりブラジル・リオのスタジオで録音された作品です。
参加ミュージシャンは野呂さん以外全てブラジルのミュージシャンです。勉強不足で参加ミュージシャンについては全く予備知識が御座いません・・・どうやら「ジャバン」のファミリーらしいのですが・・・今後の課題とします。
(余談ですがカシオペアの“PLATINUM”に収録されている 神保さんの作品「Me Espre(ミ エスペリ)」はジャバンの命名で彼自身スキャットで参加しています。)

尚、現地のミュージシャンを手配したのはドラマーのTEOFILO PEREIRA DE LIMA"TEO LIMA"で、当時ミュージック・ユニオンの会長だったそうです。この方ジャバンのバックでドラムを叩いていた人・・・らしいです(汗)

さて、野呂さんはこの作品を創る以前、カシオペアのツアーで2回程ブラジルを訪問(カシオペア ワールド ライブにその時の演奏が収録されています)しています。それが切欠の一つとなりブラジルを選んだ様ですネ(その他、様々な事情もあるようですが、長くなりそうなので)。

01.NESSA
キャチャーなメロディーと、跳ねた16ビートの心躍るような演奏とサウンドが一体となりファンキーで適度にポップな味付けが成された楽曲です。
ギターはクリーン・サウンドとギター・シンセらしきサウンドをユニゾンさせ、そこにピッチシフターを隠し味に加へ、厚みと彼独特の明るくライトでヌケの良い音がこの曲の持つ飛翔感を上手く演出しています。
ギター・ソロはペンタトニックとドリアンスケールを上手く使い、野呂さんにしてはストレートなラインを奏でています。
サウンド、楽曲、アレンジ共に野呂さんのオリジナリティーが発揮された、今聴いても新鮮で完成度の高い楽曲です。

02.TASOGARE-NO-ESTRELA
憂愁溢れるもの悲しい旋律が心に切なく響きます。そのノスタルジーを感じさせるサウンドは、野呂さん自身のボーカルによって立体感のある楽曲に仕立てられています。「全て波の中に消えて行く砂の城・・・二度と戻らないESTRELA 」の歌詞が印象的ですね。
シンプルかつ物静かな旋律にボサノバのフレーバーを取入れ、この作品の哀感と美しさを見事に描き出しています。

03.EXPLORACAO
軽くステップするかの如き、ライトな手触りのコンテンポラリー・ミュージックと、ソフィスティケーションされたグルーヴが心地よく広がります。確か何処かで聴いたような・・・・。
ギター・サウンド的には、以前紹介した「HALLE」の「MARINE BLUE」に近いかもしれませんね。またギター・シンセによるソロがありますが、このアプローチ手法とアーチキュレーションは必聴です。
この作品はカシオペアのサウンドに限りなく近い楽曲だと思います。あのメンバー以外でもカシオペアのサウンドを再現できるのですね・・・不思議な感覚です。

04.KALAKULENAI
サンバのリズムに日本的なマイナー・メロディーが重なり合う事で、今まで聴いた事の無い不思議なバランス感覚を持ったサウンドを強烈に印象付けていますね。
アコーディオンのサウンドがそれをより一層に懐古的な物に仕上げています。また、ギター・ソロはオルタードスケールとコンディミスケールを上手く使う事で、テンション感覚溢れる独創的なフレーズをこの曲に刻み込んでいます。
実験的な作品としては高品質で、野呂さんのイマジネーションの豊かさを痛感する逸品です。

05.YU-NAGI
題名の夕凪の様に、夕暮れ迫る海辺で、風が止まる瞬間の穏やかさと、ほのかな哀感を演出した豊潤なバラードです。
その憂愁をフレットレス・ギターが上手く表現していますね。その旋律はまるで歌声のように柔らかく滑らかに響きます。
叙情的で洗練された美しいメロディーと独特の気だるさが混沌とし、不思議な浮遊感を堪能させてくれます。

06.IMA-SUGUNNI
リズム・マシーンの無機的でドライなサウンドに、ドラムが加わることによって創り出される引き締まったリズムコンビネーションは抜群の威力を感じます。ソリッドになり過ぎずリズミックでラジカルな臨場感を覚える楽曲です。これも実験的な作品ですが、技量の高さとセンスの良さには何時もながら脱帽です。
トランペットの様なギター・シンセでのバップ的な天衣無縫のソロは素晴らしいの一言。

07.MORRO DO CORCOVADO
エレアコによるライトな手触りでスローなナンバーです。そのデリケートな響きが優しさを浮彫にしていますね。落ち着いた演奏スタイルが実に心地良いですね。そのサウンドが安定感としてリスナーに伝わって来るようです。実にエレガントな作品です。

08.KAZE-NO-TAYORI
そこはかとなくアジアンテイストを感じさせる不思議な色彩感が魅力的ですね。そのチョッとミステリアスで非類型的なサウンドは彼自身の持ち味でもありますね。
彼の奏でるフレットレス・ギターとシンセ・ギターのユニゾンがこの曲に深みを与え、味わいの有るサウンドになっています。サウンドの隙間を埋めるパーカションの響きが実に心地良いですね。

09.MISTERIO
知的で清楚な雰囲気を漂わすそのサウンドは何処か神秘的で、シンプルながらも情操豊かな楽曲は洗練された美しさをも感じます。
メロディーを奏でるスキャットと、アコーディオンの独特な響きがこの曲をより魅力的なものにしてくれています。

10.NEMURE TABIBITO
素朴なバラードですが、何処までも内省的に歌い上げるその言葉は野呂さんが自分自身に語りかけているかのようですね。「眠れ旅人」・・・「素晴らしい明日のことを信じて眠れ、運命さえも夢の中へ」意味深な言葉ですね。
また、ギター・ソロでの彼の奏でるブルージーなフレーズは哀感一杯で胸に染みます。このソロはこの曲に非常によくマッチしています。

☆☆☆ ここが私的FUSION(フュージョン) ☆☆☆

このアルバムは個人的に決して「超」が付く名盤とは思いませんが、当時の野呂さんの素顔を覗き込むには最高のアルバムです。彼の自己主張が結構気持ち良く響き、新しい挑戦を感じさせるサウンドが新鮮ですね。

野呂さんは「今回のアルバムから自己のプロジェクを“クール・ポップ”と呼ぶ事にした」とコメントしていますが、この作品ではその個性的で確固たる自分の世界観を構築していますね。

全体的に実に多彩なシンセ・ギター・サウンドが散りばめられています。シンセ(キーボード)ソロに聴こえるところは全てギター・ソロのよるものでしょう。これが後のソロ・アルバム「トップ・シークレット」へと至る一つのプロセス的作品としても重要な意味を持つアルバムです。メロディーとリズムのバランス感覚が絶妙で、サウンドクリエーターとしての自分と、ミュージシャンの自分をより明確にした作品とも言えます。

また、この作品で特に興味深いのは彼自身のボーカル曲が10曲中4曲(実質は3曲)も収録されている点です。1stソロ「SWEET SPHERE」ではゲストミュージシャンが歌っていましたが、「それだと誰のアルバムかわからなくなってしまう。クオリティーは高くなるかも知れないが、オリジナリティー・・・自分の発散するエネルギーが減少する」とコメントしていたようです。頑なに自己のサウンドを追求しようとした姿勢をこのコメントより感じますね。
そして、それは同時に、彼自身のボーカルが概念化された彼のスタイルを払拭するのに一役かっていますね。

頑固なまでにカシオペア的なサウンドの楽曲も幾つか有りますが、そこに彼の魅力を感じるのも事実です。
しかし、彼の達観したサウンド構築術はカシオペアは元より、これらのソロアルバムにおいても、その怪腕には驚くばかりです。

それと、この作品が発表された1989年はカシオペアにとっても重要な意味を持つと考えます。1988年に櫻井さんと神保さんが「EUPHONY」を最後にカシオペアを脱退し、1990年に鳴瀬さんと日山さんを迎えて新生カシオペアをスタートさせるのですが、その狭間に発表されたアルバムです。
その様な背景を考えても、野呂さんの考えるカシオペアサウンドに対するパラダイム的な解釈に、彼自身が如何に答えを出そうとしたのか興味深いアルバムでもあります。

最後に・・・VIDAとは,ポルトガル語で「命・人生・生活」という意味だそうです。

☆☆☆ 以上が私的FUSION(フュージョン) ☆☆☆

***1989年のヒット曲*** とんぼ、TIME ZONE、川の流れのように、TRAIN-TRAIN

それじゃ。また。

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コメント

こんばんわ。
野呂さんはとても興味があるんですが、未だ手付かずの状態なんで、この盤を含め今後の研究課題とさせて頂きます。
いつもながら凄いレビューですね、この盤は必ず聴いてみます。(笑)
他にいいのがあれば、ぜひ教えてください。
ちょっと前にフレットレスギターのヤツを店頭で見っけましたが、ちょっと考えて止めちゃった(笑)ことがあります。

毎度はずしたコメントでごめんなさい。

投稿: elmar35 | 2006/07/31 20:41

elmar35さんへ。コメント感謝致します。

暖かいお言葉いつも感謝するばかりです。本当に有難う御座います。

今回の「VIDA」ですが実はディストーション・オーバードライブは一切入っていないのが特徴だったりします。それにギター・シンセ等、実験的なサウンドが結構あって、興味深い内容です・・・が、好き嫌いがハッキリするタイプのアルバムだと思います。

フレット・レスのアルバムは「アンダー・ザ・スカイ」でしょうか?このアルバムはチョッと癒し系?のサウンドで心地良い感じです。

余談ですが、現在「Tim Donahue」のアルバムを結構聴いています・・・フレットレス・ギターを堪能するならこの方の作品をお奨めします。結構elmar35さん好みのサウンドかもしれませんよ(知っていたらゴメンナサイ)

投稿: FUSION | 2006/07/31 21:16

度々失礼します・・またまた関係ない話。(涙)
donahueさんはmadmen&sinnersというのを1枚持ってます。
dreamtheaterのjamesがヴォーカルで参加してるってんで買ったのですが・・全然だめでした。
フレットレスを活かすには繊細なバックが必要なので、多分彼のデビュー作か何とか山?ってタイトルのやつならいいかも知れませんね・・多分この辺をお聞きになってるんだと思いますが、私は未聴です。
確か評判は良かった記憶があります・・感想よろしく。(笑)

投稿: elmar35 | 2006/07/31 22:08

返信有難う御座います。

「madmen&sinners」は未聴です(汗)dreamtheaterのjamesがヴォーカルで参加・・・情報有難う御座います。

私が所有しているのは「Still Dreaming」と「The Fifth Season」(これはカセット音源)言うアルバムです。
特に「Still Dreaming」をお奨めしたいです。elmar35さんの仰るように「フレットレスを活かすには繊細なバックが必要なので」・・・美しく幻想的な世界が広がっています。

またしても私の自己中心的な浅はかさを露呈してしまいましたね(涙)
反省します。ご無礼お許し下さい。

投稿: FUSION | 2006/07/31 22:57

どこかで書いたと思いますが、ソロは聞き込んでません。
FUSIONさんの分析を読みながら聴いてみたいと思います。

投稿: WESING | 2006/08/01 00:18

WESINGさんへ。コメント感謝致します。

リンクの資料で・・「笑っていいとも」に野呂さんが出演していたのですね。「夕食ばんざい」も気になります(笑)

いつも有り難い情報感謝致します。

投稿: FUSION | 2006/08/01 08:40

やはりいいともに興味が湧きましたか。(笑)
僕は見ていないんですけど、アドリブ誌のレターズに書かれてました。イリヤから紹介されて村田香織さんを紹介したそうです。

野呂さんがカシオペアの活動休止を決めたそうで、あまりショックを受けない自分の気持ちが複雑です。(苦笑)

投稿: WESING | 2006/08/01 23:31

WESINGさんへ。コメント感謝致します。

カシオペアの活動休止ですが、知りませんでした。今ほど、カシオペアのオフィシャル・サイトで確認しました。
ビックリしましたが・・・何となくこんなな日が来るのを予感していたのも事実です。
でも、永年、日本のフュージョン・シーンを代表してきたバンドの活動休止は寂しすぎます・・・。
いつの日か、更なるパワー・アップで戻って来る事をファンの一人として願うばかりです。

いつも情報有難う御座います。

投稿: FUSION | 2006/08/02 10:15

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