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検体番号66 <Hideaway(ハイダウェイ)>

66 今回解析するのは、「David Sanborn(デヴィッド・サンボーン)」の<Hideaway(ハイダウェイ)>(1980年発表)です。

前回、以前にとり上げた「HEAVY METAL BE-BOP」にチョッとだけ触れましたが、・・・そのアルバムでベースを弾いていた「Neil Jason(ニール・ジェイソン)」の事を思い出したら、このアルバムに手が伸びました。

01. Hideaway
02. Carly's Song
03. Anything You Want
04. The Seduction (Love Theme from the Paramount Motion Picture "American Gigolo")
05. Lisa
06. If You Would Be Mine
07. Creeper
08. Again An Again

しかし、このアルバムにも本当にお世話になりましたよ。一時期毎日のように聴き狂っていましたから。今回のレヴューにあたりしばらく振りに聴いたら・・・またお世話になりそうです。

01. Hideaway
David Sanborn (sax,Fender Rhodes) Steve Gadd (d) Neil Jason(b)  Hiram Bullock(g) Don Grolnick(clavinet) Ralph MacDonald,Ray Bardani(per) Michael Colina(syn)

独特の音響処理されたメタリックなSAXの音色が奏でるファンキーでタイトなナンバーです。
サンボーンが繰出すシャープでラジカルなフレーズが何故か心地良く響きます。これは、スティーブ・ガッドとニール・ジェイソンのリズム隊による緩急の変化を充分に活かしたグルーブ・コントロールによる賜物でしょうね。特にベースとバスドラの今となっては典型的とも言えるダイナミックなコンビネーションがこの曲にパワーとファンキー・グルーヴと安心感を強烈に刻みこんでいます。
しかし、ニールのブリブリしたチョッパーは相変わらずですね(笑)

02. Carly's Song
David Sanborn(sax) Rick Marotta(d) Marcus Miller(b) Don Grolnick(Fender Rhodes) Ralph MacDonald (per)  Mike Mainieri(electric vibes, marimba, bass marimba) James Taylor, Arnold McCuller, David Lasley (background vocals)___oth

優美で、そしてセンチメンタルなバラードはやはり魅力的ですね。サンボーンが奏でるデリケートなメロディーと、優しさの中にも力強さを感じさせるブロウが、この曲が持つ繊細な叙情を浮彫にしています。愛惜するが如き切なさが胸に染みます。彼のイマジネーションの豊かさを感じるには最良の楽曲ですね。
そして忘れてならないのは、さり気無いストリングスと、それと同化したジェームス・テイラー達のコーラスがこの曲に深みを与えています。
特にこの曲の題名にあるCarlyとは、当時ジェームス・テイラーの奥さんだった「カーリー・サイモン」のことで、彼女に奉げた曲です。また、ジェームス・テイラーの1977発表の名盤「JT」ではサンボーンが参加していますし、後のアルバム「クローサー」では「Don't Let Me Be Lonely Tonight」をもカバーしたり・・・そう考えると実に感慨深い作品かも知れませんね。

03. Anything You Want
David Sanborn(sax) Steve Gadd(d) Neil Jason(b)  Don Grolnick(Fender Rhodes)  David Spinozza(g) Jody Linscott,Ray Bardani(per)  Micharl Colina(Polymoog, Crumar ) Rasy, Lisa, David & Spike(handclaps)

ライトでドライながらもタイトなリズムと、サンボーンの躍動感溢れる軽快なフレーズがバランス良く絡み合い、クリエイティブなサウンドを繰広げています。悪戯に泥臭いファンキーさを演出しないで、あくまでもスマートでリズミックなアレンジで聴かせている点、非常に好感が持てます。
後半の独特なリバーブ処理がされたワイルドなSASソロが実に印象的ですね。

04. The Seduction
David Sanborn(sax) Buddy Williams(d)  Paul Shaffer(Fender Rhodes)  Neil Jason(b)  Jeff Mironov(el-g, ac-g ) Michael Colina(pf, syn) Bette Sussman, Naimy Hackett(background vocals) Ray Bardani(rhythm tech tambourine) 

映画「American Gigolo」から「ジェームス・ラスト」のナンバーです。
時に淑やかで、時に情熱的なサンボーンのブロウが、この曲が持つ切ない情感と内に秘めた激情を見事に表現されています。典型的なラブ・バラードをここまで叙情的にそして繊細に演じられるサンボーンは凄いミュージシャンだと今更にして痛感させられました。
サンボーンの演出したダイナミックな感情の起伏が鮮烈に印象付けられ、そして絶妙な表情の変化を刻み込んだ名演です。

05. Lisa
David Sanborn(sax, Fender Rhodes) Steve Gadd(d) Neil Jason(b) David Spinozza(el-g, ac-g) Ralph MacDonald,Jody Linscott(per) ___oth strings   

都会的で冷たい程の透明感を醸し出したアダルトなバラードは何故か夜に聴くことが多いですね。この曲はその最たるものの一つです。
サンボーンの紡ぎ出すフレーズは抑揚が在り、語りかける様な存在感をも覚えますね。艶やかでマイルドなSAXの音色と流麗なフレージングが奏でるメロディーは素晴らしいの一言です。
洗練されたその優美な楽曲を、実に繊細で緻密に彩るニールのしなやかなフレットレス・ベースが実に美しく響きます。

06. If You Would Be Mine
David Sanborn(sax)  Steve Gadd(d)  Neil Jason(b)  David Spinozza(el-g, ac-g) Rob Mounsey (el-p) Michael Colina(Fender Rhodes, Polymoog) Ralph MacDonald,Ray Bardani(per) ___oth strings

悠然と流れる何処かリリカルで、そして素朴さの中にも上品で洗練された味わい深い響きを堪能できます。それと同時に優しさと切なさを感じさせてくれる、そんな様々な魅力が見事に凝縮されています。
イントロのデヴィッド・スピノザの今まで聴いた事の無いようなアプローチで、固定概念を打破るかの如くギター・フレーズが実に新鮮です。
また、特筆すべきは、スティーブ・ガットが奏でる澱みの無い流麗なドラミングが、ミドル・テンポのこの曲に躍動感と刻みこんでいます。何気ない演奏に聴こえますが生命力をも感じる実に素晴らしいプレイですね。

07. Creeper
David Sanborn(sax, Hammond B3 organ) Rick Marotta(d) John Evans(b)  Don Grolnick(Fender Rhodes)  Waddy Wachtel,Danny Kortchmar(g)  Jody Linscott(per)  Ray Bardani(high-hat)  Michael Colina(Polymoog, cat bass) 

このアルバムにおいては異端児な存在とも言える作品です。何処か奇矯で脳細胞を刺激するサウンドが、ストイックな程に悠然と流れるサウンドと相まって、実に求心的とも言える世界を構築しています。
サンボーン自身によるアルトSAXとソプラノSAXによるユニゾンが臨場感と存在感を演出するのに大きな役割を果たしてます。
この曲はリスナーを巻き込んでしまう不思議な吸引力を感じますね。

08. Again An Again
David Sanborn(sax) Steve Gadd(d) Neil Jason(b) Don Grolnick(pf) David Spinozza(g)  Jody Linscott,Ray Bardani(per) Michael Colina(Polymoog, crumar)

無駄のないシンプルでタイトなサウンドをバックに、洗練された歌心溢れるサンボーンのSAXがリリカルに、そして熱くブロウしています。ひたすらパワフルにドライブするサウンドが、バンド然とした実にリアルな演奏を繰広げています。
このアルバムの最後を飾るに相応しい生き生きとした演奏とサウンドですね。

☆☆☆ ここが私的FUSION(フュージョン) ☆☆☆

今回紹介した「Hideaway(ハイダウェイ)」はサンボーン自身にとって、実に重要な作品だったと思います。

この「ハイダウェイ」から1987年発表の「チェンジ・オブ・ハート」までを共に作製したマイケル・コリーナとレイ・バーダニが初めてプロデューサー(注:レイ・バーダニはThe Seductionのみ共同プロデュースとしてクレジットされています。彼はRecorded and Mixedとしては単名でクレジットされています。)として参加しています。

またこの作品で、後にサンボーンと最も深くかかわる事になるであろうマーカス・ミラーが始めて参加している点も重要なポイントですね。事実、この後の作品「Voyeur」ではマーカスが全面的にフィーチュアされていますし、後にサンボーンのアルバムをプロデュースするまでになったことは周知の事実ですね。

そして何より、この「ハイダウェイ」は彼にとって始めてゴールドディスクを獲得したアルバムでもあります。これによって、彼がミュージシャンとして一般的に認められたと同時に、ワーナー・レコードと言う大企業においてアドヴァンテージを得た事は、後のアルバム作製においても重要な意味を持つことになります。

このアルバムは以上の観点からも、サンボーン自身にとってエッポック・メイキングな事象を含んだ重大事件だと思います。アルバムタイトルのHideaway(隠れ家、人目につかない)と言う意味が皮肉ですね(笑)。

派手な楽曲や、これ見よがしなテクニック重視の楽曲はありません。しかし、素朴な手法が逆に効果的に活かされ、なかなかリスナーを飽きさせない雅量に富んだ作品が満載です。サンボーンの奏でる情操豊かなプレイと、ダイナミックな感情の起伏が鮮烈に印象付けられた甲乙つけ難い名曲がずらりと並んだ楽曲群はまさに名盤と呼ぶに相応しい一枚です。

また、それを象徴するのがスティーブ・ガッドの素晴らしいプレイです。彼は単にドラムと言う楽器をコントロールしているだけではなく、そこから醸し出されるグルーブをコントロールできる、数少ない本当に素晴らしいミュージシャンだと再認識させられます。バラードにここまでグルーヴを感じさせてくれるドラマーを他に知りません。また、全体を支配する統率力をも感じさせるドラミングは流石ですね。(日本人では唯一ポンタさんがそれに近いかもしれませんね)

様々な情感を実に多彩に醸し出したサンボーンのプレイは、既にここで完成されていた事を証明したアルバムですが、私がこの作品で彼のSAXプレイに感じる事は、絶妙の間が実に素晴らしいと言う事です。
それはまるで葉を選びながら語りかけるような従容な姿勢に、説得力と雅量と言ったものを強く感じます。この「ハイダウェイ」はバラードやスローなナンバーが殆どですが、それがより一層に至極重要なファクターに思える最大の理由かも知れませんね。楽を創造する時、何が大切かを考えさせられる・・このアルバムを聴くたびに、そんな基本的な事を問いかけられる作品です。このアルバムの持つ深い情趣をじっくりと味わって下さい。

☆☆☆ 以上が私的FUSION(フュージョン) ☆☆☆

***1980年のヒット曲*** 大都会、青い珊瑚礁、贈る言葉、異邦人

それじゃ。また。

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