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検体番号67 <Guitar Shop(ギター・ショップ)>

67 今回解析するのは、「Jeff Beck(ジェフ・ベック)」の<Guitar Shop(ギター・ショップ)>(1989年発表)です。

前回、前々回と「HEAVY METAL BE-BOP」の話をしましたが・・・そこで、ドラムを叩いている「Terry Bozzio(テリー・ボジオ)」の事を考えていたら、当然の如くこのアルバムを聴きたくなりました。

01. Guitar Shop
02. Savoy
03. Behind The Veil
04. Big Block
05. Where Were You
06. Stand On It
07. Day In The House
08. Two Rivers
09. Sling Shot

Jeff Beck(g) Terry Bozzio(d,per) Tony Hymas(key,syn)

試聴は・・・ここで

実はこのアルバム、当初はサイモン・フィリップスがドラムを叩く予定だったのですが、ある大物ロックバンドの再結成コンサートでスケジュールが合わなく・・・ミック・ジャガーのプロモーション・ビデオを撮影した時に知り合ったと言うテリー・ボジオが参加する事になった・・・そうです。

01. Guitar Shop
テリーのパワフルで音圧のあるドラム・サウンドにベックの叫ぶようなギターが印象的なイントロです。
全体にシンプルなリズムアレンジですが、その分、彼の表情豊かなギターが存分に楽しめますね。ライブ感覚溢れたエキサイティングなサウンドも実に魅力的です。
ザラついて粒が粗い歪みのギターサウンドでのソロは相変わらずですが、有機的なアーミングと、指弾きによって表現力を増した彼独特の演奏スタイルが合さり、リスナーを一気にベック・ワールドは引きずりこんでしまいます。本当にギターが話している様な錯覚に陥ります。先ずは一安心と言ったところでしょうか(笑)。
途中出てくる会話はテリーの声をゆっくり再生したものだそうです。

02. Savoy
リズムだけ聴くとチョッとロカビリーっぽい跳ねたサウンドが実に小気味よく響きます。そのしなやかにスィングしたリズムの波を縫う様に多彩なアプローチを取入れたスリリングでトリッキーなギターソロをご堪能下さい。
スライド・バーなのかアーミングによるプレイなのか分からないフレーズですが、多分アーミングでスライド・ギターを模したものだと思います・・・?。
いずれにしてもユニークな視点でのアプローチが興味深いですね。

03. Behind The Veil
ストイックなまでの緊張感とreggaeのリズムが融合しかつて経験した事の無い世界を演出しています。楽曲全体を覆う息詰まるほどにスリリングな感触と官能的で濃艶なサウンドが神秘的でもあり・・・誰も真似ることのできない独創性と言うのはこのことでしょうか。
また、この曲を彩るテリーの素晴らしいドラム・プレイも忘れてはいけませんね。空間を漂う奥行きと厚みの有る、まさに三次元をも感じさせるその演奏と演出力は絶品!凄いドラマーです。

04. Big Block
引きずる様にヘービーなスロー・ブギのリズムに、ラウドなギター・サウンドが混然となり重量感溢れるグルーヴ感抜群のサウンドを響かせています。伝統的とも言えるストラトを、フルアップしたマーシャルアンプに直結したサウンド・・・これこそロックの原点とも言えるサウンドですね。
豪快で圧倒的なパワーにリスナーの体力も消耗させられる名曲です。

05. Where Were You
ブルガリア音楽に刺激されて出来たと言う、実に美しく素晴らしい作品です!!!。ギター一本でここまで表現力豊かに奏でられるとは・・・ベックが天才と呼ばれる所以でしょうか。
ストラトのサウンドとアーミングを十分に活かし切ったそのサウンドとプレイは神業と呼ぶに相応しいものでしょう。アーミングでハーモニックスを完璧にコントロールし、メロディーを歌わせると言う手法は彼のみならず、以前から多くのギタリストが取り組んでいたようですが、この作品ではそれが完全に彼の物となったようですね。しかし、驚くべきはやはり彼の卓越した表現力と、リスナーをここまで唸らせる説得力ですね。
因みに、この曲はアドリブではなく、予め決められたラインのテイクだそうです。しかし、そんな事はどうでもいいですね(笑)
生命感が漲った演奏とサウンドを十分にご堪能下さい。

06. Stand On It
8ビートのいったってシンプルな作品ですが、生々しいバイヴレーションをひしと感じさせてくれます。無駄な装飾を省いたストレートで荒れ狂う様な激情をも表現したハイボルテージの演奏は昔からのファンとしてはうれしい限りです。彼の創り出すサウンドには常に圧迫感を感じます。
蛇足ですが、この曲は車のCMに使われていましたね。

07. Day In The House
このアルバムにおいては最も実験的で・・・彼らしくないサウンドですね。前作「フラッシュ」をも思い起こさせるコンテンポラリーなダンス・ナンバーです。
私としては少々この作品には疑問を持っています。彼自身、「フラッシュ」を全否定しているようですが、何故にこのアルバムに「フラッシュ」の面影を偲ばせる様な作品を収録したのか・・・確かにこのこの曲の持つ真意は彼のみの知るところでしょう・・・?
ファンの一人としてこんな辛口の評価をしても良いですよね。ベック師匠。私もフラッシュはあまり好きなアルバムじゃないので・・・お許し下さい。
ただ、テリーの実に悠揚でタイトなドラムが全体をファンキーに仕立てています。それによって引締まった尖鋭的な空間が広がります。この演出は結構好きです。

08. Two Rivers
ナイブーに、そして気高くベックにギターが歌います。少し肌寒い朝をも連想される温度感を覚える作品ですね。叙情的で洗練された美しいサウンドがリスナーをその虜にします。
空間を漂うようなギター・サウンドが虚空の世界へ引き込んでくれる、そんな不思議な浮遊感がたまらなく刺激的でドラマティックな逸品です。少ない言葉でここまで表情豊かに語れるベックはやはり・・・。

09. Sling Shot
アルバムを締め括る曲としてベックが選んだのはR&Rです。セッション的な雰囲気を味わえるベック自身にとっては自己の感性に忠実な演奏スタイルと楽曲なのかもしれませんね。
シングルコイルPU特有のブライトでクランキーなオーバードライブサウンドが実に生々しいですね。
自由気ままで伸びやかに弾きまく彼の姿が目に浮かびます。
しかし、テリーのスラッシュ・メタル的でマシンガンの様なドラムは圧巻です。これは強力ですね!

☆☆☆ ここが私的FUSION(フュージョン) ☆☆☆

この作品、私としては非常に感慨深い作品です。
このアルバムの前作「フラッシュ」があまりにもベックらしくない・・・言い換えればナイル・ロジャース色が強い作品であった為か、昔からのベック・ファンにとっては少々物足りなさを感じた作品でした。無論、非常に聴き応えのある楽曲もありましたがベックの魅力を充分にリスナーへ伝えられたかどうか疑問を残す事となったのは事実ですし、それはベック本人も認めているようで、自分の作品でありながら否定するコメントを残しています。

それから3年後の1989年にこのアルバムが発表された訳ですが、彼に与えられた空間を自由自在に操り創り出されたサウンドがこのアルバムに刻み込まれていました。彼の創り出すサウンドバリエーションには限界が無いかの様さへ思えてきます。これが私の待ち望んでいたベックの姿です。

この作品におけるベックのソロは見事としか表現出来ません。ソロは曲調にマッチしてこそ、その存在意義を認識できるのですが、彼の場合、自己を表現する手段としてギターを弾いているかのごとく、完全に自分の世界をその曲に作ってしまうところが凄いですね。ですから、このアルバムも殆どの曲がトニー・ハイマスによるものですが・・・誰の曲だろうと関係なくベックのギターが入れば一気に彼の世界へ引き摺り込まれ、彼の匂いをその作品に強烈に残してしまえるのです。(代表的なものとしてロッド・スチュアートの「Infatuation」なんかが好例でしょうか?)

また、この作品は、ベーシストが参加していませんが・・・ベック曰く「ベースとギターの音階がシンクロして、場合によっては曲が混乱してしまう。ベースが入っていない事で完全な自由を得られた。」とコメントしています。真意の程は?ですがベックが言うと何故か妙に納得したりしますね(苦笑)。

しかし、ベースがいないと言う、下手をすればバンドの弱点となり得る条件をトニー・ハイマスとレイフ・マセスが上手くカバーしていますね。また、テリーのバスドラのイコライジングとリバーブ処理に相当神経質になったであろうとも推測します。

このアルバムでもう一つ驚愕的すべきはそのハイアビリティーな楽器の操作技術です。フェンダー・ストラトキャスターをここまで熟知してフレキシブルに使いこなせるギタリストは、私の知る限り彼ともう一人だけです。特にストラトの持つブライトなトーンとアーミングを完璧に自分のものにして、そこから何が表現出来るのだろうかと考え、それを現実にしかも独創的な彼自身のサウンドとして具現化してしまえるのですから。芸術家ですね。

ベテランミュージシャンの余裕・貫禄といったものを盾にしない、妥協を許さない我侭で強欲なまでのギタリスト然とした姿勢をこの、その名もズバリ「Guitar Shop(ギター・ショップ)」から強烈に感じます。彼の作品はどれも体が熱くなる様なギター・サウンドを聴かせてくれますが、彼の一貫したサウンド構築術は現在でも色褪せる事はありません。

この作品を聴いて思うのはやはり先に述べたベックらしさと、豪快で圧倒的なパワーにリスナーの体力も消耗させられるその力強さです。これは、彼の音楽に対する集中力の高さが緊張感となってリスナーに伝わってくるからだと思っています。また、彼の繰出すプレイとサウンドには瞬発性の高いスピード感溢れる野性の動物的な鋭さをも感じます。

☆☆☆ 以上が私的FUSION(フュージョン) ☆☆☆

***1989年のヒット曲*** 黄砂に吹かれて、酒よ、川の流れのように、大きな玉ねぎの下で

それじゃ。また。

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コメント

あぁっ!このアルバムは、・・・。

ジェフ・ベックのアルバムは買い続けていますが、「ライブ・ワイアー」より後のアルバムは1~2回程度しか聞いてません。(^_^;
これもその一枚なわけで、あまり印象が無く、間違えて2枚買ってしまいました。(^_^;;
とは言っても、間違えたのはいつの間にかジャケットが変わっていたからなんです。

このジャケットのCDは未開封です。ブックレットの中が同じかどうか気になっているんですけどね。

というわけで、音楽よりジャケットをよく覚えている僕でした。(苦笑)
またFUSIONさんの解説を読みながら聴いてみたいと思います。

投稿: WESING | 2006/09/11 14:45

WESINGさんへ。コメント感謝致します。

ジャケットの件ですが、確かに2枚ありましたね。私の所有しているのは輸入盤なので上記のジャケット写真です。当初発売されていた紙袋を模したジャケットも結構好きです。

>このジャケットのCDは未開封です。
せっかくですからそのままにしておきましょう(笑)

>「ライブ・ワイアー」より後のアルバムは1~2回程度しか聞いてません。
私もこのアルバム以降はめっきり聴かなくなりました(苦笑)。

投稿: FUSION | 2006/09/11 15:32

・・とうとうやってしまいましたね!(笑)

'89年第32回グラミーアワード ベスト・ロック・インストゥルメンタルパフォーマンス部門受賞作でしたね。
私のCDには買ったときに付いてた受賞のシールがいまだに貼ってあります。

初回版を持ってる友人に聞いたら、インナーには渋谷陽一氏の超合金ロボがどうのこうの・・という内容のライナーが載ってるらしいのでご参考まで・・ちなみに私のはイラスト版ですが、同じライナーが載ってるようです。

久しぶりにこの解説読みながらじっくり聴いてみることにします。(笑)

投稿: elmar35 | 2006/09/11 20:31

elmar35さんへ。コメント感謝致します。

>'89年第32回グラミーアワード ベスト・ロック・インストゥルメンタルパフォーマンス部門受賞作でしたね。
何だかやけに凄い賞ですね(笑)・・・実は受賞した事も全く知りませんでした(恥)

また、私のは輸入盤なので当然日本語ライナーも無いのですが、WESINGさんのコメントと併せて読むとなかなか興味深いCDですね。コレクターズ・アイテムになっていたりするのでしょうか?いずれにしても、情報を頂き感謝致します。

投稿: FUSION | 2006/09/11 21:10

こんばんは。
初回版CD中古で手に入れました。
でも、やっぱ中身が全く同じだって事しか分りません。
上の記事、ライナー代わりに使わせて頂きます。

投稿: elmar35 | 2008/08/17 20:46

elmar35さんへ。コメント感謝致します。

そうですか初回版CDも手にされましたか・・・流石ですネ。

>上の記事、ライナー代わりに使わせて頂きます。
拙い記事ですが何かのお役に立てば幸いです。有難う御座います。ただ、今読み返してみると正直なところ少しばかり違う印象に変わった楽曲もあるのですが・・・

投稿: FUSION | 2008/08/17 22:43

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» JeffBeck'sGuitarShop('89)/J.BeckWithBozzio&Hymas [D9の響き]
そいや、Jeff Beck(ジェフ・ベック)御大の作品に関して“マイルストーン”として位置付けられる重要作がまだでしたネ。 “新時代のWired”ともてはやされた“ギター・ショップ”がそれ。 '89年ということは約20年前・・もうそんなに経っちゃいましたか。 この前作が'85年の唄モノ“Flash”ということになり、確か当時はギター・インスト復活作として大々的に採り上げられていました。 しかも当時“UK”とか“Missing Persons”等で我が国でも名を馳せたテリー・ボジオを従えて、鳴り物入り... [続きを読む]

受信: 2008/08/17 20:47

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