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検体番号69 <Those Southern Knights(南から来た十字軍)>

69 今回解析するのは、「The Crusaders(ザ・クルセイダーズ)」の<Those Southern Knights(南から来た十字軍)>(1976年発表)です。

このところアルバムレヴューをサボっていました(汗)。いろんなアルバムをブログで紹介したいと思いあれこれ思案するのですが・・・何分、根っからの筆不精と文才の無さ故、思うように表現出来ません。

しかし、これではいけないと思い原点に返ろうと考えた時、このアルバムが「がんばれ」と励ましてくれました。

01. Spiral
02. Keep That Same Old Feeling
03. My Mama Told Me So
04. Til the Sun Shines
05. And Then There Was the Blues
06. Serenity
07. Feeling Funky

Wilton Felder (sax) Wayne Henderson (tb) Joe Sample (key) Stix Hooper (d) Larry Carlton (g) Robert Popwell (b)

名作・名盤・名演とはまさにこの作品の為にあるかの様な、本当に素晴らしいアルバムです。余りにも有名すぎる作品ですが、やはり私にとっても重要なアルバムです。

01. Spiral
高揚感と言ったわくわくさせるサウンドが、これから始まるクルセイド・ワールドを予感させますね。
16ビートを基調としたファンキーなコンテンポラリー・ミュージックに小気味よいグルーヴ感と安堵感があるメロディーが一体となった心躍るような生き生きとした演奏とサウンドは絶品です。
しかし、ラリー・カールトンのギター・ソロは凄いの一言ですね。起承転結のあるメリハリの効いた歌心満点のフレーズ。MXRディストーション・プラスを隠し味にしたヌケの良いライトなオーバードライブサウンド。ダイアトニックとノン・ダイアトニック・コードを自在に行き交い自由気ままで伸びやかに弾きまくる華麗で流れる様なメロディー。リスナーを一気に彼のギターの虜にさせられるマジックのようですね。類い希な名演とはまさにこの事を言うのでしょうね。これがオバーダブ無しの一発録りと言うのですから、溜息がでます。このソロで彼の評価が一段と高まり、一時期は「代表的なビーバップ・ロックサウンド」と評された事を思い出されます。
後半のロバート・ポップウェルの弾むようなベースソロと、それを支える粘りのあるスティックス・フーパーのドラミング、これこそこのバンドの真骨頂とも言える「真のタイトなリズム隊」の片鱗を実感出来るでしょう。そこにウィルトン・フェルダーとウェイン・ヘンダーソン、ジョー・サンプル、ラリー・カールトン各々が奏でる音が一つに溶合い、それが大きな塊としてリスナーに向かって飛んで来ます。
極上のファンキー・グルーヴをご堪能下さい。

02. Keep That Same Old Feeling
ノスタルジックな雰囲気漂う中にも、知的な雰囲気が上品さを醸し出している・・・そんなナイーブなほどに美しい作品です。
しなやかなで丸みがあって柔らかいトローンボーンのフレーズが実に清々しい気持ちにさせてくれます。このノーブルとも言える作品に、ウェイン・ヘンダーソンのハートフルで甘美なサウンドが実によくマッチしていますね。
また、ロバート・ポップウェルの前半は指引きなのに対して、同じフレーズを後半はチョッパーで奏でるベース・ラインが実に良い味を醸し出していますね。それにカールトンのフェイザー(レズリー?)を効果的に活かした白玉一発のコードワークと単音バッキング、ショーバッドのボリューム・ペダルによるバイオリン・奏法でのオブリガート・・・実に勉強になりますね(笑)
しかし、何よりもこのタイトルが実に意味深ですね。この曲の作者でもあるウェイン・ヘンダーソンはこの曲を残し、そしてアルバムを最後に脱退してしまいます。「昔の様な気持ちでいよう」・・・自己への叫びなのか、または変わって行くクルセイダースに対しての戸惑いからなのか・・・。

03. My Mama Told Me So
ロバート・ポップウェルとスティックス・フーパーのリズム隊が奏でる、粘りのあるグルーブ感が実にたまらなく魅力的なミドルテンポのナンバーです。特にバスドラとスネアのコンビネーションが生み出す彼独特のタイム間による引きずる様な重量感のあるリズムが個人的に大好きです。このリズム隊をバックにギターを弾いたら気持ち良いだろうな・・・と聴くたびに思います(笑)
基本的なコード進行は典型的なⅠ7・Ⅳ7・Ⅴ7(A7・D7・E7)の組み合わせパターンで、ブルース・フィーリングを体感するには持って来いの曲ですが、メロディーがシンプルが故に表現力が試される曲とも言えますね。ここでは、SAXとギターと(Bメロはトロンボーン)とがユニゾンする事により広がりと厚みをもたらいています。そこにはエンジニア的な加工感は感じなく、自然で広がりのあるサウンドを体感できます。また三者三様のアーチキュレーションによる微妙なズレ?が実に不思議なハーモニーとなって厚みをも感じさせてくれますね。
また、特筆すべきはジョー・サンプルのバッキングです。単純なコード進行を効果的に聴かせる為、コード間の繋ぎを半音進行にしたり、ディミニッシュを盛り込んだり、かと思えばⅡm7(Bm7)を隠し味に使い滑らかなコードチェンジを演出したりと、まさに職人技のオンパレードです。
この曲に対して一つの疑問が・・・母はそう私に言った・・・なんて言ったのでしょうか?

04. Til  the Sun Shines
ラリー・カールトンによる楽曲です。透明感があり、物静かで美しい旋律にただ聴き惚れるばかりです。
ガラス細工の様に美しく繊細なジョー・サンプルのローズ・ピアノと、カールトンの織り成すバイオリン奏法が一体となりシルク様に滑らかに、そして優美に響きます。
そこに慈しむかのようなウィルトン・フェルダーのSAXがナイーブに響きます。そのさりげない哀愁が心に留まるノスタルジー溢れるサウンドはリリカルで実に魅力的です。
美しい情感を醸し出した、彼ならではのハートフルでピュアなバラードはやはり素敵ですね。この曲の持つ深い情趣をじっくりと味わって下さい。

05. And Then There Was the Blues
モダン・ジャズのフィーリングにブルースの香りを漂わせた、古くからのファンには堪らないクルセイダース・サウンドですね。レイドバックしておおらかに繰広げられるインプロビゼーションがジャム・セッション的な雰囲気を感じさせてくれます。
ベースとドラムのコンビネーションはこの曲においても抜群で、特にバスドラとベースだけに耳を傾けるとこの曲の持つ偉大なパワーを肌で感じられると思います。とにかく二人の相性は抜群ですね。センシビリティーが高く収斂な位にタイトで、この曲の根幹をしっかりと創り上げています。
また、この曲でのカールトンのプレイは後の彼のスタイルを象徴するような、そんな礎を感じさせる実によく歌うプレイですね。現在の彼のプレイを聴いても、やはりこの曲で聴かれるようなブルージーなサウンドが根底に有る事を再認識させてくれますね。
実に渋く、味わい深い大人のサウンドを堪能できる作品です。

06. Serenity
タイトルが示すよう静寂感を感じる哀愁漂うクールなサウンドが魅力的な作品です。
澄んだ秋の夜空と肌寒い空気、そして静かに流れる風に揺れる尾花・・・そんな物悲しくも透明感溢れる優美なサウンドが「秋の夜を打ち崩したる咄かな 」と言った俳句を連想させる、わびさびと言った日本情緒溢れる楽曲ですね。
ウィルトン・フェルダーの間を味方につけたで繊細な叙情的なSAXソロと、ウェイン・ヘンダーソンの実に艶やかで滑らかな語り口のトロンボーン・ソロを聴いていると涙が出そうになります。
まだ聴いていたいと思わせる余韻の残るエンディングもこの曲を引き立たせている要因の一つですね。
時間が静かにゆっくりと流れ、広がりの在る壮大な空間を充分に体感して下さい。

07. Feeling Funky
このアルバムから正式メンバーとして参加したロバート・ポップウェルの作品です。
タイトル通りファンキー・チューンですね。ジョー・サンプルの奏でるクラビネットと、ロバート・ポップウェルの厚みのある中音が魅力的なチョッパー・サウンドがリスナーの心を煽るかの様に響きます。やはりファンキー・ビートに乗ったリズミックなサウンドはいつの時代も心熱くしてくれますね。
生々しい感情のバイヴレーションを感じ取ってください

☆☆☆ ここが私的FUSION(フュージョン) ☆☆☆

今回紹介したアルバムは、クルセイダーズにおいて非常に重要な作品だと私的には認識しています。

先ず、このアルバムより、それまで不定だったベースにロバート・ポップウェルが正式メンバーとして迎え入れられました。しかし、結成当時からのメンバー、ウェイン・ヘンダーソンがこのアルバムを最後に脱退します。
また、ラリー・カールトンも次作の「Free As A Wind」を最後にこれまた脱退してしまいます。後にロバートも脱退してしまうのですが、そんな激動のメンバーチェンジの中、このアルバムがクルセイダース史上、誰もが認めるであろう過去最高のメンバーによる演奏はやはり素晴らしいの一言です。

粘りのある、腰の強いタイトでパワー溢れる無骨なサウンドのスティックス・フーパーのドラミングと、荒々しいうねりをも感じるがグルーヴ感溢れるプレイが身上のロバート・ポップウェルのベース・・・このリズム隊が創り出すサウンドは一度ハマったら抜け出せない様な常習性をも感じます。

カールトンの彼の内面から滲み出るブルースフィーリング溢れるギターと、流れるようなフレージングは驚異的ですね。この頃既に自己のスタイルを完成させていたのが良く分かります。このアルバムでの彼のプレイはソロ、バッキングは勿論、全てにおいて確かな実力が背景になければ演じきれない楽曲が目白押しですが、彼はその全てをパーフェクトにこなしています。これは当時24歳と言う年齢を考えてもまさに驚異的とも言えますね。

ウェイン・ヘンダーソンの演奏技術の高さが創り出す余裕と言ったものが楽曲の美しさを引き出しているように思えますし、ウィルトン・フェルダーの緩急の変化を充分に活かしたフレキシブルなプレイに思わず惹き込まれます。そして何よりこの二人が創り出す洗練されたアンサンブルは豊潤とも言える響きを堪能させてくれますね。

無駄な装飾を省いたシンプルだが味わい深いサウンドですが、出てくる音全てに全神経を集中させる職人的気質を感じると同時に、テクニカルなフレーズとフィーリングが絶妙に融合したジョー・サンプルのプレイはこのバンドにおいて如何に重要な役割を担っているかを痛感させられます。

このアルバムには全7曲が収録されています。ジョー・サンプルが2曲とそれぞれのメンバーが1曲ずつ提供していますが、散漫な印象は微塵も感じないどころか、アルバムを通して感じるストーリー性といったものを堪能出来ます。個々のサウンド・ライティングの能力も素晴らしく特筆すべき点ですね。

メンバー各々のマテリアルをアルバムに反映させた、彼らの黄金期を語る上では欠かせない作品です。30年経過しても、今だにその力漲る強力な演奏は色褪せる事が無く我々を魅了してくれます。これからも末永く聴き続けられるであろう一枚である事に何ら変わりはありません。そして何よりも若い世代の人達に是非、聴いてもらいたい作品ですね。

☆☆☆ 以上が私的FUSION(フュージョン) ☆☆☆

***1976年のヒット曲*** 横須賀ストーリー、なごり雪、春一番、ビューティフル・サンデー

それじゃ。また。

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コメント

こんばんわ。
カールトン私の心の師匠のひとりながら、ソロ以前は全くと言っていいほど聴いてません。
このレヴュー読んでると。もう聴いちゃったような気になりました。(笑)

先ほどからBS-Hiで東京JAZZ観てます。
・・ラリー&ロベン最高でした!もちろんひろみちゃんもね。

投稿: elmar35 | 2006/09/30 23:39

そういうアルバムでしたか。
カールトンのソロ・アルバムを聞いた後に買ったものだから、今一つと感じてしまいました。
タイミングが悪かったです。(^_^ゝ

投稿: WESING | 2006/09/30 23:53

そう言えば、こんなジャケットでした?
ジャケットさえ覚えてないくらい仕舞い込んでるんですけど。(^_^;

投稿: WESING | 2006/09/30 23:55

elmar35さん、WESINGさん、コメント感謝致します。

・・・有名なアルバムと思っていたのは私だけだったのでしょうか(涙)

実のところ私としてはカールトンと言うと「夜の彷徨」よりもこの「南から来た十字軍」の印象が強いんですよネ。(無論、両方最高なアルバムに違いは無いです)

もし宜しければ一度じっくりと聴いてみて下さい。好き嫌いは別として、当時の息吹を感じられると思いますので・・・どうか一つ・・・お願いします。

返信、連名にて失礼しました。

投稿: FUSION | 2006/10/01 00:11

こんばんは。
「デオダード」さんのトラックバックをありがとうございました。
書いていただいている記事を読んでいると、
忘れていた色々なことが蘇ってきました。

ザ・クルセイダーズは、ジョー・サンプルさんを知ってからですので、またまた、どこかで聴いたかもしれない状態です^^

投稿: まりん | 2006/10/01 21:56

まりんさんへ。コメント感謝致します。

>ザ・クルセイダーズは、ジョー・サンプルさんを知ってからですので・・・

ジョー・サンプル、私も大好きです。私が彼を知ったのはクルセイダーズが最初ですので、まりんさんとは逆パターンですネ(笑)いつかレヴューしようと思いますがなかなか手強いミュージシャンです(笑)

今回の作品も強力にお奨め致します。機会がありましたら是非お聴き下さい。

投稿: FUSION | 2006/10/01 22:34

こんばんは。
クルセイダーズいいですね。
あの独特の雰囲気だけでフュージョンと感じます。
私は「Good and Bad Times」持っています。
こちらもよさそうですね。
是非聴いてみます。

投稿: bonejive | 2006/10/03 22:21

bonejiveさんへ。コメント感謝致します。

>あの独特の雰囲気だけでフュージョンと感じます。

そう言って頂けると非常に嬉しい限りです。この作品は当時の力強いクロスオーバー・フュージョンの息吹を感じられる重要な作品だと思っています。是非、お奨め致します。

投稿: FUSION | 2006/10/03 22:50

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