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<にじ> 検体番号71

71 今回解析するのは、「吉川忠英 & 井上 鑑 」の<にじ>(1997年発表)です。

秋もすっかり深まりましたね。読書の秋とはよく言ったもので、夜長はやはり読書を楽しんでいます。そんな時、お供にピッタリの音楽がこれです。

01.Edge of Sky
02.午後の紅茶
03.Here There and Every Where
04.Doctor Paddle
05.Water Waltz
06.A Slack Day
07.White Snow
08.Father's Hand
09.ぶらんこ
10.ARIGA-TO-SAN
11.Estrellita

河童アヒルさんのブログにも関連レビューがありますので是非!

私、職業柄多くの本を読まねばならない時があるのですが、その時の音楽が至極重要なアイテムになってきます。あまり難解な音楽はチョッと敬遠してしまいます。

01.Edge of Sky
少し肌寒ささへ感じるオープニングのメロディーが、少しずつ暖かい日差しが差込むかの様に変化していきます。それはまるで徐々に夜が明けるが如く、朝の光と風を感じる清楚なナンバーです。
吉川さんの奏でるデリケートなアコースティックの響きが、その優しさをより一層に浮彫にしています。途中から井上さんのピアノが重なり合い、力強くもエレガントな世界を築いています。

02.午後の紅茶
某飲料メーカーのテレビCMで流れた曲です。たしか小泉今日子さんが出演していましたね。
曲名の様に、午後のティータイムでチョッと一休みといった感じがいいですね。心安らぐメロディーがボサノバのリズムに乗ってしなやかに流れます。午後の優しい木漏れ日の様なサウンドに包まれてみて下さい。

03.Here There and Every Where
原曲はビートルズのポール・マッカートニーによる作品です。
このアルバムでは、ハートフルで甘美なピアノ・サウンドと、中音域が豊かで暖かみのあるギター・サウンドで奏でられるあの優しく繊細なメロディーを、二人が心を込めて一音一音のニュアンスを大切にしているのが伝わって来ます。このチョッと触っただけでも壊れそうな繊細なメロディーを慈しむ様に丁寧に構築していますね。
実は、私、この曲が収録されている作品は、つい購入したくなると言う癖?がありまして、このアルバムもこの曲が最大の目的だったりします。

04.Doctor Paddle
陽気にステップするかの様にピアノがコミカルに歌います。モノクロ映画の中でチャップリンが踊る様な、そんな小気味よいスウィング感がたまりませんね。バンジョーの音色がより一層にその情景を盛り上げています。打ち込みによるシンプルなリズムと心躍るような生き生きとした演奏とサウンドがバランス良く絡み合っていますね。

05.Water Waltz
暖かく何処までも優しいワルツは何時聴いても心身共に癒されます。ノスタルジックな雰囲気漂う何処か懐かしいサウンドに小さい頃の自分をを思い出します。
品格が高い響きと情操豊かなこの音にずっと包まれていたいですね。

06.A Slack Day
南国的な香り漂う穏やかで屈託のないメロディーが魅力的です。
自由奔放な開放感を吉川さんのギター一本で表現しています。粒の揃った正確なピッキングと、メリハリの効いたギタープレイがこの楽曲のクオリティに大きく寄与しています。
晴れた日に聴くには最高の一曲ですね(笑)

07.White Snow
前曲とは一転して題名の如く雪景色です。季節は冬となり雪が降り積もります。静寂が辺りを支配し深雪は全てのものを覆い隠して白一色の世界を幾日か創り上げます。そして何時しかそれが解けて春の訪れを告げるまでの情景を3分50秒の時間に凝縮しています。
この曲の持つ深い情趣をじっくりと味わって下さい。

08.Father's Hand
このアルバムの中でも、特に大好きな作品です。初めて聴いた時、不覚にも涙してしまいました。シンプルで飾る事のない朴訥な楽曲ですが、曲の持つ優しさと言ったものが柔らかく響いてくると同時に、深い憂愁と愛惜が混然となり胸が痛くなるほどです。
暖かい音色が綴る豊潤でふくよかで優しいバラードですね。私だけの宝物です。

09.ぶらんこ
題名の「ぶらんこ」・・・この曲にピッタリのタイトルです。ナイーブな中に愛惜を醸し出したサウンドが美しく響きます
・・・ブランコに乗って大きくこぎ出します。心地良い風が自分の体を優しく包んでくれます。何処までも高く飛び上がりたい気持ちが急いて一気にスピードが出てきました。自分の体が浮いたり沈んだりしていると空と地面が何時もより近く感じます。学校の放課後のあの開放感と、友達と遊んだ嬉しさと、ブランコに乗った時のチョッと誇らしげな気持・・・この曲を聴くと幼い日の自分が蘇ってきます。聴き終えた後、心地良い余韻を充分に楽しめるサウンドですね。

10.ARIGA-TO-SAN
吉川さんの奏でる繊細でしなやかなアルペジオが印象的な作品です。暖かく丸みのあるトーンが優しく語りかけてくるようです。それは彼の内面から滲み出る優しさなのかもしれませんね。
中盤からそっと重なり合う井上さんのシンプルなピアノも曲の表情やダイナミクスの付け方が絶妙で、この曲に木漏れ日の様な安らぎと煌きを刻みこんでいます。
アコースティック・ギターとアコースティック・ピアノの懐深い響きは何時の時代も心に染みますね。

11.Estrellita
Estrellita・・・スペイン語で小さな星を意味するそうです。原曲はManuel Maria Ponceの作品ですが、この作品を耳にするまでこの曲の存在すら知りませんでした。
胸を刺すロマンティックなフレーズと、ちょっともの悲しい旋律が心に響きます。静寂な空間にそっと輝く星の様に儚いほどに美しく、ガラス細工のように繊細な演奏は感動的ですらあります。シンプルな作品ではありますが、吉川さんと井上さんのミュージシャンとしての感性を肌で感じられる重要な作品だと思います。

☆☆☆ ここが私的FUSION(フュージョン) ☆☆☆

この作品を一言で表現するなら、やはり「暖かさ」と言う言葉が一番に浮かんできます。このアルバム全てのトラックに優しさと愛情が満ち溢れています。井上さんと吉川さんの二人が創り出すノーブルで溢れる歌心が心に染み入る様な演奏がその暖かさをより一層に浮彫にし、凛々しくも心地よい空間が広がるります。

また、こういったシンプルな楽曲をアレンジする際、作為的にフレームアップしようとしてリスナーに見透かされたりしてしまいますが、この作品からはそれが微塵も感じられません。この種の音楽によくあるマニアックな自己満足に陥る事無く、ピアノとギターのサウンドを最大限に活かしたイマジネーションの豊かさを感じるストレートなアレンジと、無駄なテクニックに逃げる事のないハートフルな演奏には好感が持てます。一曲一曲丹念に聴き込んで見ると、その度に新たな発見がありますよ。

このアルバムのタイトル「にじ」実に素晴らしい題名です。このアルバムを言い表すのには、私が幾ら言葉を並べても表現出来ません。実際に聴いていただくしか術がないのですが・・・アルバムのライナーに吉川さんと井上さんのコメントが載っていましたので抜粋させて頂きます。

※※※※※※※※※※※※※※※

(二児)
二人の子供があそんでいる。鬼ごっこをしたり、かくれんぼをしたり、砂山を駆け上ったり、ブランコに乗ったり、笑いころげたり、泣いたりしながら・・・。
二人の子供があそんでいる。人生の半ばをだいぶ過ぎようとしているが、ボクはやっぱり、相も変わらず、
ヤンチャをやっては笑いころげたり、泣いたりしている。ともだちの中であそんでいる。夕闇が迫ってもいつまでも、いつまでも・・・。

(二時)
そろそろ一日の活動を始めようかなと思う時であり、やわらかな蒲団の中で「きょうはどんな夢を見るのか?」と思い始める”TURUING TIME”でもある。

(虹)
ボクは大分水気を含んだ水滴で、相棒のアキラクンはとっても大切な太陽光であろう。

(二路)
少しだけ先に走り出した1本の路に決して交わることなく新しい路がそっと寄り添っている。
山を越え、谷を下り、近づいたり遠ざかったりいつまで、どこまで、続いてゆくのだろう?

・・・吉川忠英・・・

世界には実に多様な光が満ちているなあ、とこのごろ実感しています。
雲の切れ目からときどき太陽が明るい光をなげかけるような午後、川原を歩いていると「東京にもまだ空があるのだ」と思わず足どりが軽くなったりします。
冬のLONDONは朝から夕方です。灰色の光が1年中枯れることのない芝生のGREENとまじりあい、不思議な静けさのなかに街をつつみこんでいます。
中国やモンゴルの草原、中東の砂ばかりの世界、ペルーの山の頂きの古代都市、いったことのない場所の光を僕はあこがれにみちて思い描いているのです。
- - - - - 光を音と読みかえて下さってもけっこうです。

・・・井上鑑・・・

(以上、「吉川忠英&井上鑑/にじ」 ライナーより引用させて頂きました)

※※※※※※※※※※※※※※※

このアルバムに対して多言は必要無いかもしれませんね。
ただ、実に誠実に作られた雅量に富んだ楽曲群の端々から滲み出てくる優しさが魅力的な作品です。
この二人のヒューマニズムが良く表現された名盤です。

☆☆☆ 以上が私的FUSION(フュージョン) ☆☆☆

***1997年のヒット曲*** ひだまりの詩、白い雲のように、愛されるより愛したい、幸せな結末

それじゃ。また。

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コメント

持ってます。
ぐらいしか言えないんですけどね。(苦笑)

僕もこのビートルズの曲は気になります。
'80年代だったと思うけど、
僕の好きな音楽をいろいろと聞いてもらっていた子が好きだったので。
加山雄三さんもカバーしています。

ところで、左上の「本日?の一枚」、昨日気がつきました。(^_^;

投稿: WESING | 2006/11/12 15:13

WESINGさんへ。コメント感謝致します。

「Here There and Every Where」大好きなんですよね。この曲はある意味、完成された曲なのでどんなミュージシャンが演奏しても変わらない・・・言い換えればこの曲を如何に個性的に演奏出来るかでそのミュージシャンの力量が分かる超難曲だと思います。
>加山雄三さんもカバーしています。
きっと紳士的でシナトラ的なサウンドなのでしょうね(憶測です)

本日の一枚なんですけれども、あまり更新のインターバルが長くなってきたので忘れられないようにとの苦肉の策です(汗)フュージョン以外も紹介していきますので覗いてやってください。

投稿: FUSION | 2006/11/12 17:35

え~~~っ、FUSIONさんって忠英さん聴くんですか!
「にじ」発売記念?LIVEに行きましたよ。
とても穏やかな、素晴らしいLIVEでした。
忠英さんは、自分のCDでは、聴いてくれる人の目の前でギターを弾いているような、そんな感じがする音作りをしていると、何かで聞いたことがあります。
Father's Handなどは、いかにもそんな感じがします。
忠英さんも亡き父親の手のぬくもりを思いながら弾いているのでしょうね。
このアルバムの前に記念碑的な「音の手紙」が出ているので、サポートではなく、ソロのアコギストとしてノリに乗っている時期だけに、素晴らしいCDになっていると思います。

投稿: 河童アヒル | 2006/11/13 00:19

河童アヒルさんへ。コメント感謝致します。

>え~~~っ、FUSIONさんって忠英さん聴くんですか!
一応フォークソング大好き少年(汗)だったもので、忠英さんと石川鷹彦さんは外せません(笑)
特に忠英さんは全てではありませんが「音の手紙」と「にじ」を含めて5枚程所有しています。どれも優しくて暖かくて、河童アヒルさんのコメントにあるような「聴いてくれる人の目の前でギターを弾いているような、そんな感じがする」素晴らしいアコギスト(このアルバムもお気に入りです)ですね。
「音の手紙」での山崎ハコさんと原真弓の詩を硬質なギターサウンドで歌い上げる忠英さんの無骨な歌が好きです。

「にじ」発売記念LIVEに行ったのですか!それは素晴らしいですね。彼のギターを生で聴けるなんて、羨ましい限りです。

投稿: FUSION | 2006/11/13 10:56

こんばんわ。
‘今日?の1枚’コメント欄がないのでなんとかしてください。(笑)
面白い企画ですね・・しかもDTやVai師まで・・やられましたね。

投稿: elmar35 | 2006/11/14 22:41

elmar35さんへ。コメント感謝致します。

「今日?の1枚」のコメント欄ですが・・・残念ながらこのブログにその機能が有りません(苦笑)。完全に一方通行状態です。と言ったわけで、ノンジャンルで好き勝手にUPしている状態です(汗)。本来、こう言ったレヴューは如何なものかと思ったのですが、更新のインターバルが異常に長くなっている状態です。忘れ去られない様にと言う苦肉の策です。

>しかもDTやVai師まで
elmar35さんの影響が大きいですネ。

投稿: FUSION | 2006/11/14 23:02

こんばんは。
ご無沙汰しています。
覗かせていただいているのですが、知らないミュージシャンの方の
ことでコメントのしようがなかったりで・・・すみません^^
私も 「Here There and Every Where」は大好きです。
綺麗なメロディーですよね。

投稿: まりん | 2006/11/18 18:18

まりんさんへ。コメント感謝致します。

私の方こそご無沙汰しています。
この「にじ」と言うアルバムはどちらかと言うと「癒し系」のサウンドです。優しくて暖かい空間が魅力的です。もし機会がありましたら是非聴いてみて下さい。まりんさんも絶対に気に入って下さると思います。
「Here There and Every Where」本当にいい曲ですね。

いつもお気遣い有難う御座います。

投稿: FUSION | 2006/11/18 19:41

>河童アヒルさんのブログにも関連レビューがありますので是非!
恐縮です(^^ゞ

投稿: 河童アヒル | 2006/11/20 23:18

河童アヒルさんへ。コメント感謝致します。

こちらこそリンク・紹介下さり恐縮です。

投稿: FUSION | 2006/11/21 11:39

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