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<CRYSTAL GREEN(クリスタル・グリーン)> 検体番号75 

75 今回紹介するのは「RAINBOW(レインボウ)」の<CRYSTAL GREEN(クリスタル・グリーン)>(1976年発表)です。

2007年1月13日マイケル・ブレッカーが天国へと旅立たれました。以前にもレヴューしました「HEAVY METAL BE-BOP」から受けた衝撃とその影響力は測り知れないものが有ります。しかし、今、如何しても紹介しておきたいアルバムが有ります。

私の手元に一本の古いカセットテープがあります。高校生の時、先輩に録音してもらった物です。その人はスティーブ・ガッドが好きで、このカセットもガッドがドラムを叩いていると言うことで聴かされたものです。しかし、そのアルバム名が分かりません。そのカセットテープにはアルバムタイトルはおろか、曲名、果てはミュージシャン、バンド名すら記していないのです。しかし、そこに刻み込まれたサウンドは私を充分に魅了するものでした。
近年、あるCDショップを探索していると、今までに見たことの無いCDが目にとまりました。一面グリーンの芝生が綺麗な紙ジャケットが印象的でした。参加ミュージシャンを見ると・・・エリック・ゲイル、コーネル・デュプリ、ゴードン・エドワーズ、スティーブ・ガッド、そしてマイケル・ブレッカー・・・この凄いメンバーに驚き勿論即買いでした。家に帰り早速聴いてみると・・・まぎれも無い、あの正体不明のカセットテープから流れた音楽が実にクリアーなサウンドで私の耳に飛び込んできたのでした。

01.HOSSAN
02.LOST IN A SONG
03.SO TRUE
04.IT AIN'T NO USE
05.I LIKE IT
06.FEEL LIKE MAKIN' LOVE

(Sax)Mike Brecker (key)Will Boulware, Arther Jenkins.Jr (g)Cornell Dupree, Eric Gale (b)Gordon Edwards (d)Steve Gadd (per)Ralph MacDonald

この作品だけでは勿論、彼の偉大さを伝えることは出来ません。しかし、せめて私がマイケルのSAXを始めて聴いた(であろう)アルバムを紹介しておきます。感謝の意を込めて・・・

01.HOSSAN
出だしからマイケルのメローで伸びやかなテナー・サックスの高音が心地良く響きます。ミディアム・テンポでライトな手触りの楽曲ですが、シンプルなメロディーを実に味わい深い情操豊かで歌心溢れるプレイによってこの曲を端麗な作品に仕上げています。一転して抑揚が有り、自分の気持ちを曲に注ぎ込む様に演奏するSAXソロは傾聴すべき点ですね。
エリック・ゲイルの彼らしいブルージーでハートフルなソロは相変らずです。本当に彼のギター・サウンドはいつ聞いても個性的ですね。
シンプルな演奏の奥にある音楽的深みと言ったものを感じる作品です。

02.LOST IN A SONG
美しく優しいメロディーをマイケルのSAXが優美に歌います。気品溢れるそのハートフルで甘美なサウンドは心くつろぎますね。オーソドックスな曲とシンプルなプレイですが、是ほど心に響くとは・・・詠嘆するばかりですね。
このアルバムの中では、最もSAXの響きが最も美しい作品だと思います。その豊潤で温もりが伝わってくるサウンドに酔いしれて下さい。

03.SO TRUE
スティーブ・ガッドの弾むようなドラムに、リスナーの心も弾みますね。そのステップするかの如きしなやかなグルーヴ感は流石ですね。どこか楽しげな高揚感と言った、わくわくさせる軽やかで弾みのあるサウンドは聴くものをも楽しくさせてくれるマジックの様でもあります。また輪郭がくっきりとし、メロディーが際立ったマイケルのサウンドがそれをより鮮明なものにしてくれていますね。そして、何よりゴードン・エドワーズの奥行きと厚みの有るタイトなベースがこの曲のクオリティに大きく寄与しています。
その心躍るような生き生きとした演奏とサウンドに、マイケルが私に、「そうだろう?」と言っているようです。勿論答えは「SO TRUE(その通りだよ)」です(笑)

04.IT AIN'T NO USE
スティービー・ワンダーの「First Finale」に収録された曲のカバーです。
都会的ながらもどこかノスタルジックな雰囲気漂うバラードです。哀愁を忍ばせたそのキュートな切なさがたまらなく刺激的ですね。この曲の核となるウィル・ブールウェアのアコースティック・ピアノとシンセサイザーの使い方に職人的な技を感じます。この二つの音色を効果的に使い、メロディー自体が持っている魅力を実に上手く引出しています。
また、このアルバムにおいては、マイケルのテクニカルな一面を充分に堪能できる作品です。後半のSAXソロでは、スティーブ・ガッドとゴードン・エドワーズという超強力なリズム隊も徐々に熱くなり、それに触発されたかの様にマイケルもパワフルでスケールの大きなプレイを繰広げています。
しかし、特筆すべきはやはりガッドとエドワーズ・・・この二人の強烈な個性は相変らずですね!!!

05.I LIKE IT
このアルバムにおいては最もリズムを感じさせる作品です。鉄壁のリズム隊が奏でる躍動感とキレ味鋭いリズムワークはスタッフ・ファンとしてはうれしい限りです(笑)。また、コーネル・デュプリとエリック・ゲイルのギター・アンサンブルとクリス・ヒルズのクラビネットがそれをより一層に強固なものとしていますね。特に二人のギタリストが創り出すグルーヴは流石ですね。またもやスタッフ・ファンとしてはうれしい限りです(笑)。
また、その16ビートを基調とした小気味よくスウィングするファンキーなコンテンポラリー・ミュージックと、マイケルの心躍るような生き生きとした演奏とサウンドが実に良くマッチしていますね。セッション的で自由奔放なサウンドですが、彼達が楽しそうに演奏している様子が伝わってきます。

06.FEEL LIKE MAKIN' LOVE(愛のためいき)
原曲はロバータ・フラックのヒット曲で有名です。エレガントで優美なサウンドを、このメンバーならではの実に味わい深い演奏によって更なる叙情的で洗練された美しい作品に仕上げられています。
特にコーネル・デュプリの奏でるブルース・フィーリング溢れるギター・ソロと、ウィル・ブールウェアのピアノ・ソロが心に染み入ります。
それに負けずとばかりに、マイケルのハートフルでピュアなSAXによって多彩で広がりのある充実した響きを堪能できます。一音一音愛しむようにブロウしていますね。
ジャズフレイヴァーを持つライト&メロウなAOR的とも言えるサウンドは当時としては新鮮でした。

☆☆☆ 後記 ☆☆☆ 

正直、今回、マイケル・ブレッカーを語る上でこのアルバムをとり上げる事を躊躇しました。何故なら、作品の完成度や演奏の素晴らしさと言った点においては今回の作品は素晴らしいとは言えません。良く言えば、未成熟だがそれが新鮮な・・・、言い換えれば、完成前のラフ・スケッチの様な・・・そんな印象を受けるアルバムです。(このアルバムはマイケルが27歳の頃に録音された作品です。
しかし、かといって駄作では全く有りません。当時(1976年)はクロスオーバー全盛期。多くのミュージシャンが野心溢れたハイテンションの作品を多く世に出した時代でした。そんななか、肩肘張らず、リラックスした演奏スタイルがリスナーにも充分に伝わる、そのシンプルながらマンネリ化しない彼達の創り出すサウンドと、その後のSTUFFに代表される様な実に伸びやかに、そして溢れる歌心が心に染み入る様な演奏が刻まれています。
参加ミュージシャンがリラックスして伸び伸びと自分自身の音楽をエンジョイしたかの様なアルバムです。今となってはあまりにも懐古なサウンドですが、そこに魅力を感じるの事実です。また実力者揃いのために、安心して聴くことができますね。

また、この作品は1976年にニューヨークのヴァンガード・スタジオと言うところで、伊藤潔氏、伊藤八十八氏をプロデューサーとしてその他、日本人スタッフの手によって作製されたアルバムでも有ります。そういった意味においても当時のジャパニーズ・フュージョンシーンの黎明期を明確に反映した作品ともいえますね。何しろ、スタッフが正式デヴューする2ヶ月前の出来事ですから・・・。

今回紹介した様に、私のCD棚にマイケル・ブレッカー(ブレッカー・ブラザースも含め)の作品は全てでは有りませんが幾つか所有しています。しかし、彼を聴こうとして購入した訳でも無いのに係らず何故かマイケルが参加した作品は多数ありました。彼が現在のジャズ・フュージョンシーンに残した足跡を辿る時、彼の功績と如何に優れたミュージシャンだったのかを実感させられます。

ジャズ・フュージョン・サウンドを語る時、必ずマイケル・ブレッカー・・・貴方の事を思い出す事でしょう。また、もし、貴方の事を知らない人がいたとしても、ジャズ・フュージョンを聴いた事がある人、またはこれから聴こうとしている人は必ず貴方のサウンドを耳にする事でしょう。
・・・それがマイケル・ブレッカーのサウンドだとも知らないで約30年にわたって愛聴していた私の様に・・・

マイケル・ブレッカー・・・享年57歳・・・あまりにも早すぎる最後・・・残念でなりません。

安らかにおやすみ下さい。貴方の事は絶対に忘れませんから・・・。

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コメント

こんばんわ。
面子だけを見てると、深町純さんのニューヨーク・オールスターズ・ライヴみたいな雰囲気なのでしょうか?
あの作品にもマイケルが参加してますが、私にはレヴュー出来ませんでした。

FUSIONさんの熱い想いが、きっと彼にも届いたことでしょうね。(笑)

投稿: elmar35 | 2007/01/19 22:10

elmar35さんへ。コメント感謝致します。

このアルバムはどちらかと言うとレイドバックした実に心地良いアルバムです。と言った訳でニューヨーク・オールスターズ・ライヴの様なハイテンションさはありません。誤解を覚悟で言うと、このアルバムは「好盤」、深町さんの方は「名盤」とでもなりますでしょうか(苦笑)
でも、今回の作品は個人的に思い入れの強い作品なのです。

投稿: FUSION | 2007/01/19 22:20

こんばんは。
すばらしい情報ありがとうございます。
是非聴いてみたいです、このアルバム。
今度探してみます。

投稿: bonejive | 2007/01/20 21:53

bonejiveさんへ。コメント感謝致します。

この作品は個人的に思い入れが強い作品なのでマイケルを追悼する意味でレヴューさせて頂きました。興味を持っていただいた事、本当に嬉しいです。
このアルバムは1500円と値段も手ごろで、まだ発売されているようです。アマゾン等でチェックしてみて下さい。是非!

投稿: FUSION | 2007/01/20 22:21

こんばんは。
ブレッカー+スタッフでバンド作ってたんですね。知りませんでした。どんな音なのか興味深々です。

「本日の一枚」のレイアウトをリニューアルされましたね。美術館みたいで素晴らしいと思います。

投稿: milkybar | 2007/01/23 23:55

milkybarさんへ。コメント感謝致します。

このアルバムはテクニック云々よりも、リラックスした雰囲気を堪能する作品だと思います。ブレッカー+スタッフと言った強力なユニットの余裕の演奏が創り出すしなやかなサウンドは心地良いですよ。もし機会があれば是非!

「本日の一枚」ですが・・・さぼりまくって「最近の一枚」になってしまっている今日この頃です(汗)

投稿: FUSION | 2007/01/24 15:11

シャンパラは大好きでした。
一枚きりで終わってしまったのが残念です。

カシオペアに関しては、'80年代半ば過ぎから、僕の中で可もなく不可もなくの定番状態だったので、シャンバラがすごく新鮮に感じたんですよね。
もしかして、当時はカシオペアの人気を上回っていたのかもしれませんね。

国分友里恵さんはナルチョや野力奏一さんのアルバムで知って、ソロ・アルバムも買ってたんですけど、秋元薫さんは聞いたことがなくて、後にアルバム1枚買いました。

投稿: WESING | 2007/01/24 21:26

WESINGさんへ。コメント感謝致します。

私もシャンバラは嫌いなサウンドではなかったのですが、やはりカシオペアを好きだったのであのようなアプローチにはビックリしました。フュージョン・ファンやはりインスト物を期待してしまいます・・・実際のところ(苦笑)

投稿: FUSION | 2007/01/24 21:56

こんにちは。私もこれを久しぶりに聴いてます。
続編もだいぶ後年に出ましたので、それも聴いてます。

投稿: Sken | 2007/01/26 11:10

Skenさんへ。コメント感謝致します。

実にリラックスしたアルバムですよね。聴いているこちらが心地良くなってきます。それは「OVER CRYSTAL GREEN」でも受け継がれていますね。私も大好きなアルバムです。機会があれば、何時かとり上げたいと思っています。

投稿: FUSION | 2007/01/26 19:43

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秋の気配の京都です。 毎日、先日のBobby新譜を聴いてました。 そしたら、以前の『Suvivor』なども取り出したり、 結局、ファーストを聴いてみたり。 Rainbow『Crystal Green』1976 East Wind [続きを読む]

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