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<Early Spring(アーリー・スプリング)> 検体番号78

78 今回解析するのは「Alponse Mouzon(アルフォンス・ムーザン)」の<Early Spring(アーリー・スプリング)>(1993年発表)です。

アルフォンス・ムーザン(アルフォンス・ムーゾン?)と言えば「Weather Report」の初代ドラマー、そして1stソロ「Mind Transplant」が有名かもしれませんが、ここでは春という季節柄「Early Spring」を取り上げてみました。

私がムーザンを知ったのは以前に紹介しましたハービー・ハンコックの<Mr,Hands>なるアルバムに収録された 「Just around the corner」を聴いたのが切欠です。彼の重戦車の様なドラムサウンドに衝撃を受けたのですが、このアルバムはというと・・・

01.Early Spring
02.Alone in Paris
03.Come Fly With Me
04.We Almost Made It
05.The Lady in Red
06.Seven Steps to Heaven
07.I Can Give You Love
08.Waterfall
09.By All Means

  
実はこのアルバムを手にした理由は収録された「ある一曲」が非常に気になったのも理由の一つなのですが、後ほどに・・・

01.Early Spring
Alphonse Mouzon(d,syn)  Gary Meek(sax)  Jeff Daniel(pf)  Welton Gite(b)

「早春」というタイトルが示すように暖かくて優しい心くつろぐサウンドで満たされています。まるで幼い日に見た忘れかけた春の一日を想い出しますね。メロディーを奏でるソプラノ・サックスの持つ伸びやかでふくよかで優しいそのサウンドは春の柔らかな日差しの様に煌いて温もりと言ったものが伝わってきます。またJeff Danielのピアノがこの曲に毅然とした美しさと繊細な叙情を添えています。
そして何より、ライトな手触りの中にも確かな生命力を感じさせるムーザンのドラムに思わず惹き込まれます。
春の息吹と光と風を感じる素敵な作品です。

02.Alone in Paris
Alphonse Mouzon(all ins)

ムーザンが奏でる悲しいまでに美しく程の透明感溢れるピアノ・ソロから始まるクールなサウンドが魅力的な作品です。哀愁を忍ばせたメロディーは「Alone in Paris」のタイトルの様に孤独感といたものを上手く表現していますね。このアルバムには暖かい光の様なサウンドが満載ですが、光があれば当然に影が存在するわけですが、この作品はこのアルバムの陰影とも言える部分を表現したかったのかも知れませんね。
しかし、この曲をムーザン一人だけでアレンジ・演奏したとは・・・彼のマルチな才能に驚くばかりです。全ての楽器でシンプルながらも、味わい深い情操豊かで、歌心溢れるプレイが心に響きます。テクニックよりも彼の美的センスを充分に堪能できる作品です。しかし、メロディーとのサウンド対比を明瞭にしたドラミングは流石の一言ですね。

03.Come Fly With Me
Alphonse Mouzon(d,syn) Ernie Watts(sax)  Jeff Daniel(pf)  Welton Gite(b)

躍動感と何処と無くユーモラスさを感じさる、サウンドインターバルの激しいErnie Wattsのサックスが印象的なイントロです。何処か束縛から逃れるかの様な自由気ままな感じが伝わって来ますね。また、ドラムの実に新鮮なアプローチのパターンと、合間に聴こえるダイナミックなフレーズが光りますね。この曲の持つ開放感と躍動感を同時に上手く表現しています。

04.We Almost Made It
Alphonse Mouzon(d,syn,vo)  Brandon Fields(sax)  Jeff Daniel(pf)  Welton Gite(b)  Jana Sorensen(vo)

Brandon Fieldsの奏でるアルト・サックスのナイーブなサウンドが美しく響きます。そのサウンドには人の心を優しく包み込んでくれる安堵感と優しさを感じますね。しかし、それは彼のプレイだけに限った事ではなく、参加した全てのプレイヤーが醸し出す毅然とした中にも優しさを感じるサウンドと、溢れる歌心が心に染み入る様な演奏は絶品です。そして、何より、何の変哲も無いシンプルなコード進行なのに是ほどまでに胸を刺すとは・・・不思議ですね。暖かい光を浴びたかの如きやさしい心地良さと、何処か切ないセンチメンタルに満ちた作品です。決して目立ちませが、これも私の「隠れた名曲」の一つです。

05.The Lady in Red
Alphonse Mouzon(d,syn)  Ronnie Laws(sax)  Jeff Daniel(pf)  Welton Gite(b)

ミディアム・テンポの8ビートに乗り実にリリカルでストイックとも言えるマイナーなメロディーがマッチして独特の世界を構築しています。決して目新しい手法では有りませんが、曲全体をライトでクールなグルーヴ感が支配し、リラックスした曲調の中にも厳しさと緊張感を感じさせます。
また、自己抑制の効いた精悍で華奢なピアノソロがこの曲にしなやかな力強さをもたらしています。

06.Seven Steps to Heaven
Alphonse Mouzon(d,syn) Ernie Watts(sax)  Jeff Daniel(pf)  Welton Gite(b)

この題名を聴いてピンときた方も多いのでは・・・そう、原曲はマイルス・デイヴィス「SEVEN STEPS TO HEAVEN」と言うアルバムに収録された作品です。実はこの曲が聴きたいが為にこのアルバムを手にしたのが本当の理由だったりします(笑)。本当に躍動感とか高揚感と言ったものを感じさせてくれる名曲ですね。今回のカバーでも実に小気味良くダイナミックかつ爽快なサウンドに魅了されます。このアルバムでは原曲の持つ魅力を損う事の無い絶妙なアレンジで確固たるムーザンの曲として仕上げられています。言う事なしといったところでしょうか(笑)。何よりもメロディーとリズムのバランス感覚が絶妙ですね。
特にErnie Wattsの豪快なブロウは必聴です。淀みなく流れるフレーズにラジカルとも言える力強さとワイルドさが加わって名演を繰広げています。また、そんなErnie Wattsのサックスと二人きりで終盤に演出された疾走するかの如きスピード感抜群のインタープレイの応酬はセッション的な雰囲気を味わえて聴きごたえがありますね。
余談ですが、原曲はマイルス・デイヴィスとヴィクター・フェルドマンの共作ですが、以前紹介しましたヴィクター・フェルドマンの「HIGH VISIBILITY(ハイ・ヴィジビリティー)」というアルバムにも収録されていますので宜しかったら御覧下さい。

07.I Can Give You Love
Alphonse Mouzon(d,syn,vo)  Brandon Fields(sax)  Jeff Daniel(pf,key)  Welton Gite(b)  Jana Sorensen(vo)

何処か楽しげで心躍るようなサウンドが魅力的です。スキップしたくなるそんな明るさと軽さが心地良く響きます。チョットした箸安め的とも言えそうな作品ですが、なかなかどうして聴き入ってしまいますよ。メジャーな曲調に一瞬覗かせるマイナーコードが堪らなくキュートですね。特にJeff Danielのピアノがここでも大活躍です。このピアノ・ソロがあるが故に、ありふれたポップスとなりそうなところを上手くカバーし、この楽曲のクウォリティーに大きく寄与していますね。センスの勝利でしょうね・・・これは。

08.Waterfall
Alphonse Mouzon(all ins)

アジアの田舎に訪れた春といったイメージの牧歌的ともいえる曲ですね。様々な花が咲き誇り、辺りが淡く綺麗な色で埋め尽くされていく様な情景が浮かんできます。お花見を楽しんでちょっとほろ酔い気分・・・なんて言う感じかな(笑)
陽音階を意識したピアノが奏でるフレーズと伸び伸びとしたスネアを聴いていると、春の暖かな木漏れ日を浴びた縁側で猫と一緒に居眠りしたくなる様な、そんな温もりと安らぎをも感じさせてくれます。ほのぼのほのぼの・・・平和が一番です(笑)

09.By All Means
Alphonse Mouzon(d,syn)  Ronnie Laws(sax)  Jeff Daniel(pf)  Welton Gite(b)

16ビートを基調としたコンテンポラリーで都会的ともいえる端麗な作品です、このアルバム中では最もフュージョンらしい正統派アプローチ的なサウンドですね。決して難易度が高いわけでは有りませんが、フレージング的に完成度が高くシンプルさの中にも疾走感溢れワイルドを感じるストレートなサウンドはやはりカッコイイですね。参加ミュージシャンのソロもふんだんに配され、エモーショナルなフレーズとフレキシブルなプレイを聴かせてくれます。しかし、ここでも Jeff Danielのピアノソロが光ります。また、全体を強固にまとめ上げるムーザンのシンプルな演奏に垣間見れるビートのツボをおさえたドラミングは流石です。

☆☆☆ ここが私的FUSION(フュージョン) ☆☆☆

今回紹介しましたこの「Early Spring(アーリー・スプリング)」と言うアルバムは、あくまでも個人的ですが、皆さんが通常言う「名盤」では決して在りません。ましてや、テクニックやアレンジ云々といった作品が多く収録されたアルバムでもありません。

しかしながら、一曲一曲に風景や絵画の様な確固たるビジョンとも言うべき景観が広がります。それと同時に短編映画の様なストーリー性を感じるのです。本当に自分勝手な解釈なのかもしれませんが、私の概念としては音を聴いた時、何かしらの風景や情景が浮かんで来た時に、その音楽に惹かれるのです。

今回のアルバムがまさにそれを感じさせる一枚なのです。やはり、音楽を聴くときその作品が持つイマジネーションが如何に重要で必要不可欠なファクターかを改めて認識した次第です。そしてこれ等の手法から導き出された彼の創り出す優美で、何処かノスタルジーを感じさせるサウンドが聴く者の心に親しみと安らぎを与えてくれるのでしょうね。

また、特筆すべき点として、Jeff Daniel(ジェフ・ダニエル)のピアノが非常に重要な役割を担っています。もしかするとこのアルバムは彼が居たから是ほどまでに毅然とした中にも優しさを感じるサウンドになったと言っても過言では有りません。無駄な装飾を排したシンプルでメロディーの持つ美しさを損なう事の無い演奏に彼の非凡さを窺い知る事が出来ます。私は彼のプレイをこのアルバム以外ではLEE OSKAR(リー・オスカー)の「HARMONICS」や「YOU AND I」でしか知り得ませんが、この2作品も同様に味わい深い情操豊かで、歌心溢れる実に素晴らしいプレイが心に響きます。本当に良いミュージシャンです。もし機会があれば聴いてみて下さい。

この作品を聴いて、アルフォンス・ムーザンと言うドラマーがもウェザー・リポートの初代ドラマーであった事や、名作「Mind Transplant」を創った人と同一人物だと言う事が信じられないくらい、アプローチやドラミングがまったくと言ってよいほど異質です。しかしメロディーに光を当てた手法が功を奏しています。ムーゾンのミュージシャンとしての歴史から見れば決して強い主張を持った作品ではありませんが、彼の柔軟で前向きな姿勢と共にテクニックの優劣ではなく、全く別の視点でこのアルバムを捉えたい、まさしく「好盤」と呼ぶに相応しいアルバムです。

今回紹介したこのアルバムには音楽本来の持つべき、聴く者を楽しませると言った点を積極的にアピールした、押付けがましい音楽などでは決してない自然体で普段の喧騒から逃れたスムースな音楽が満載です。その飾らない優しいサウンドには包容力すら感じます。

☆☆☆ 以上が私的FUSION(フュージョン) ☆☆☆

***1993年のヒット曲*** YAH YAH YAH 、裸足の女神 、サボテンの花 、世界中の誰よりきっと

それじゃ。また。

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