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<Singing/Playing(シンギング&プレイング)> 検体番号80

80 今回解析するのは、「LARRY CARLTON(ラリー・カールトン)」の<Singing/Playing(シンギング&プレイング)>(1973年発表)です。

私のブログにもその名が度々登場しますギタリスト・・・ラリー・カールトン・・・。今更ににて説明の必要も無いミュージシャンです。フュージョン・シーンを語る上で欠かせない重要人物ですよね。しかし,彼のアルバムを紹介した事はありませんでした(汗)。・・・と言う事で今回、初めてレヴューさせて頂きます。

01. Easy Evil
02. I Cry Mercy
03. One More Chance
04. With Respect to Coltrane
05. American Family
06. Wavin' and Smilin'
07. Captain, Captain
08. Free Way

このアルバムは1973年発表のカールトン2作目のソロアルバムです。このアルバムの5年後にあの名作「夜の彷徨」が発表されるわけですが、この「Singing/Playing」では何と、全8曲中6曲で彼自身のボーカルが堪能できます。その理由を「あまりにも仕事(セッション、クルセイダーズetc)が忙しすぎて疲れきっていた。それでギターのパートを少なくしたいが為に歌をうたった」と言う衝撃のコメント(笑)をのこしています。手抜き???・・・いやいや、どうしてどうして・・・玄人好みの素晴らしいサウンドが満載です。

01. Easy Evil
Larry Carlton(vo.g) Michael Omartian(key) Michael Mills(per)

カールトン独特の囁くようなボーカルが印象的なスローテンポのブルース・テイストを醸し出したナンバーです。実にブルージーで無駄な装飾を省いたシンプルな中にも味わい深いサウンドを響かせています。3人だけによる演奏ですが、淡々としているのに妙に心に迫る何かを感じさせる不思議な作品ですね。
ザラツキを抑えたストレートな音色にワウを隠し味にしたギター・サウンドで奏でられた、ブルースの伝統的スタイルを継承しつつもペンタトニック・スケールを発展させた独特のフレーズ群は彼のプレイの礎となっている事を証明するかのような演奏です。

02. I Cry Mercy
Larry Carlton(vo.g) Joe Osborne(b) Michael Omartian(key) Jim Gordon(d)

キュートな切なさがたまらなく刺激的なナイーブでロマンティックなサウンドが美しく響きます。カールトンの素朴で柔和な歌声が何故かこの曲によく合っています。優しさといったものが滲み出ていますね。
ギータ・プレイはと言うと、ES-335が持つ伸びやかでマイルドなトーンを味方に付け飛翔感のある美しいギター・ソロを披露しています。8小節と短過ぎるのが何とも残念ですね。もう少し聴いていたかったです。また、歌のバックで流れるアコースティック・ギターのアルペジオが何ともフォーキーで良いですね(笑)。
この曲でもう一つ特筆すべき点として、ストリングスの美しいサウンドがこの曲に生命を注ぎ込んでいます。アレンジの妙ですね。この効果的なアレンジが功を奏し、シンプルで精緻かつ耽美なサウンドがリスナーを温かく包み込んでくれます。

03. One More Chance
Larry Carlton(vo.g) Joe Osborne(b) Michael Omartian(pf) Ron Tutt(d) Alan Estes(per) Oma Drake,Julia Tillman,Maxine Willard(back-vo)

チョッとヘタウマ的(失礼)なボーカルと小気味よいグルーブ感が一体となった、ライトながらもファンキーなサウンドは聴きごたえがあります。今となれば決して刺激的サウンドでは在りませんが、懐古的な中にも精緻かつシャープなサウンドを響かせています。
しかし、ボーカルの合間に聴こえる歌心を感じるフェイク的なギターフレーズが光りますね。ブルー・ノートが実に効果的に響きま、トラディショナルでストレートなブルース・フレーバー溢れるフレーズが満載で、演奏スタイルからも彼のルーツと言ったものがリスナーにも充分に伝わってきます。メロディーとリズムと、そしてカールトンのボーカルの3つが作り出すバランス感覚が実に絶妙ですね。

04. With Respect to Coltrane
Larry Carlton (g) Wilton Felder (b) Joe Sample (key) Stix Hooper (d) Alan Estes(per)

御覧のようにクルセイダーズのメンバーをバックに従えてのインスト・ナンバーです。(ウィルトン・フェルダーがベースで参加しています。彼はロバート・ポップウェルが加入前はサックスとベースを兼任していましたね。)
MXRディストーション・プラスを使ったであろうツブの粗いディストーション・サウンドから放たれる熱く襲いかかるようなサウンドが魅力的ですね。シンプルなフレーズのテーマですが、この無骨とも言えるサウンドで奏でられることによって、圧倒的な存在感を誇示しています。また続くハーモニックス・サウンドによるフレーズですが、是が圧巻!何気なく聴こえますが、このフレーズ群とコード・アルペジオを全てハーモニックスで演奏しきっています。現在では多くのギタリストが難なく取り入れてはいますが、今から30年以上前と言う事を考えると、如何にハイレベルなテクニックを有していたかを証明するフレーズですね。そして、ソロは一転して低音域が強力で重厚なディストーション・サウンドによるエモーショナルなフレーズが飛び出ます。多分、オクターバーによるサウンドに更にギターをダビングさせて作られたギター・サウンドとフレーズだと思われますが、当時、スタジオ・ミュージシャンとしても活躍していたカールトンが故のまさに必然的なアプローチですね。
また、終盤のジョー・サンプルのエレピ・ソロでは彼の世界をこの曲に深く刻み込んでいます。やはり流石ですね、この存在感は!
因みに、この作品はトム・スコットの作品ですが、それをカールトンがクルセイダーズのメンバーで演奏する・・・当時のカールトンの活動をそのまんま反映したかの様な作品ですね(トム・スコット率いるLAエキスプレスのギターもカールトンでした。そしてジョー・サンプルも参加していましたね。)

05. American Family
Larry Carlton(vo.g) Max Bennett(b) Michael Omartian(pf) Jim Gordon(d)

そこはかとなくサイモン&ガーファンクルを彷彿とさせる実にふくよかで優しい旋律が心身共にリラックスできる作品です。優美で安堵感があるメロディーはいつ聴いてもいいですね。過剰な装飾を廃したそのシンプルなサウンドがこの曲をより一層に安らぎを与えてくれます。
間奏でのフロント・ピックアップでのトーンを絞って甘さを加味したウォームなディストーションでのギターサウンドが実に伸び伸びと心地良く響きます。4小節と短いですが、まさに必然的で、この曲を活かした職人的な味わいを感じさせられるソロです。また終盤のギター・ソロも同様に歌心溢れ実に素晴らしいですね。
この曲での彼の紡ぎ出すフレーズは抑揚が在り、語りかける様な存在感をも覚えます。演奏と歌声が見事に同調した隠れた名曲ですね。

06. Wavin' and Smilin'
Larry Carlton(vo.g) Joe Osborne(b) Michael Omartian(pf) Ron Tutt(d) Alan Estes(per)

ベースとユニゾンされた歯切れの良い低音のギター・サウンドが印象的なリフのイントロに続き、カールトンのチョッと冷たくて透明感のあるボーカルがこの曲の持つノスタルジー溢れるサウンドを上手く演出していますね。適度なテンションを保ちつつも肩肘張らず、リラックスした演奏スタイルがリスナーにも充分に伝わってきます。
今聴いても全く古さを感じさせない、独特の語り口で綴られたカールトンのダンディズムを感じる興味深い作品です。個人的ですが、彼のボーカルがこの曲に一番マッチしている様に感じました(笑)。

07. Captain, Captain
Larry Carlton(vo.g) Reinie Press(b) Michael Omartian(pf,syn) Jim Gordon(d) Chris Neilson(back-vo)

キュートな切なさがたまらなく刺激的でハートフルでピュアな切ないバラードですね。素朴でナイーブなサウンドが美しく響きます。シンプルかつ物静かで美しい旋律を慈しむ様な歌唱が心に響く一曲です。的外れかもしれませんが、何となくイーグルスのサウンドを連想させるさせるその哀愁を忍ばせたメロディーが広大な平野に沈む夕日と言った景観をも連想させられます。

08. Free Way
Larry Carlton (g) Wilton Felder (b) Joe Sample (key) Stix Hooper (d) Alan Estes(per)

「With Respect to Coltrane」同様にクルセイダーズをバックに従えたインスト・ナンバーです。前半はジャズ・フレイバーを充分に醸し出したジャズ・コードを駆使したスタンダードとも言えるギター・ソロです。ジョー・パスやウェス・モンゴメリーの影響を感じさせる正統的とも言えるギタースタイルもまた、彼本来の姿の一つだと改めて実感させられます。
しかし、中盤は一転してダーティーで無骨とも言えるエモーショナルなギターソロが炸裂します。このサウンドはディストーションというよりも、あえてファズと表現した方がわかり易いかもしれませんね。ジミー・ヘンドリックスをオーバー・ラップさせられるパワフルで音圧のある野性味溢れ荒狂うかのごときギターサウンドが魅力的ですね。サイケデリックとも言えるそのサウンド・イリュージョンは今聴いてもそのパワーを失う事無くリスナーに迫って来ます。
この曲でのフレキシブルなプレイスタイルから垣間見れるカールトンの多彩な音楽性には感服させられます。

☆☆☆ ここが私的FUSION(フュージョン) ☆☆☆

この作品は正直、ラリー・カールトンのファンにとって意見の分かれる作品だと思います。それは、カールトンのサウンドをいつの時代に聴いたか(好きになったか)によって、その答えが変わってくると思うからです。無論、その意見とは「良い悪い」ではなく「個人の趣味性」という至極パーソナルな視点においてと言う事で捉えてください。(・・・と言う私自身がリアルタイムでこのアルバムを聴いたわけではないのです。それでも「夜の彷徨」よりは前だった事だけは確かです。)

今回紹介した「シンギング&プレイング」は1973年に発表され、その5年後の1978年に一世を風靡した「夜の彷徨」が発表される事になるのですが、結論から先に述べると、この「夜の彷徨」でカールトンのギターに魅了された方々は、この「シンギング&プレイング」をカールトンの作品として受け入れる事には多少なりとも違和感を感じるはずです。また、逆にクルセイダーズ一連のアルバムやスティーリー・ダン、マイケル・フランクス、ジョニー・ミッチェル、リンダ・ロンシュタッド等でカールトンを好きになられた方々は、このアルバムをわりと素直に受け入れられるのではないかと考えられます(この考えはあくまでも個人的な解釈ですので、「それは違う!」という方もいらっしゃると思いますが、ご了承下さい。)

余談になりますが、私の場合、以前紹介した「南から来た十字軍」(是を聴いたのも実は発売されてからだいぶ後なのですが・・・苦笑)でカールトンに魅了され、それ以前に遡って彼の音源を聴いた一人ですので、どちらかと言うとこの「シンギング&プレイング」を違和感無く聴けました。勿論、「夜の彷徨」も大好きですが、どちらかと言うと1982年に発表された「Sleepwalk(夢飛行)」の方を好んで聴いていますし、今考えるとそれも、この「シンギング&プレイング」を聴いた後だったからかも知れません。「夢飛行」と「シンギング&プレイング」は全く異質なアルバムではありますが、根底に共通したものを感じるのは・・・私だけかもしれませんね(笑)

さて、本題に戻りますが、今回のアルバムでは冒頭にも記しました様に、全8曲中6曲で彼自身のボーカル・ナンバーで占められています。そして、ギター自体もテクニック的には決して難易度が高いフレーズでは有りませんが、フレージング的に完成度が高いですね。シンプルながらも、味わい深い情操豊かで、歌心溢れるプレイが心に響きます。また本文にも記しました様にボーカルの合間に聴こえるフェイク的なギターフレーズが実に素晴らしいですね。曲を壊す事無く、それでいてギター・サウンドが埋もれる事のないそのさり気無い存在感は見事の一言。既存の曲に対してギター1本で独自の世界を作ってること自体脅威的ですね。才能とはこういったことを言うのでしょうね。当時、スタジオ・ミュージシャンとして多忙を極めていた理由をこのアルバムが如実に物語っています。あくまでもボーカルを最優先させたシンプルでツボを得たサウンド・メイキングに堅実な職人気質といったモノを随所に感じます。

ラリー・カールトンと言えば、後に発表された当時の音楽シーンを色濃く反映した「夜の彷徨」のヒットによって、フュージョン・ギタリストのカリスマ的存在と成り得たのは当然の事ですし、それだけの実績と実力を兼ね備えていたミュージシャンである事は異論の無いところでしょう。また、本人も「夜の彷徨のプレイが私本来のギタリストとしての姿だ!」とコメントまでしていました。しかし、当の本人のコメントがそうであろうと、私は、このボーカル主体のアルバムに「ギタリスト ラリー・カールトン」の精髄を強烈に感じるのです。

☆☆☆ 以上が私的FUSION(フュージョン) ☆☆☆

***1973年のヒット曲*** 神田川、危険なふたり、心もよう、個人授業

それじゃ。また。

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コメント

こんばんわ。
遂に出ましたね・・凄い!
これCDで出てるんでしょうか?
結構マメに探してるんですが、なかなか無くて。
・・ホント羨ましいです。(涙)

投稿: elmar35 | 2007/05/17 22:21

elmar35さんへ。コメント感謝致します。

今までカールトンの作品をレヴューしていなかったので、先ずか是から紹介しようと思い立ちました(笑)

このアルバムはCDで発売されていました。私が持っているのは1994年にMCAから発売されたものです。それまでは伸びたカセットテープでしか聴けなかったのですが、発売された時は嬉しくて即買でした。正直、ギター弾きまくりと言った作品ではないのですが、カールトンの歴史を語る上で重要な作品だと思います。

そういえば、確かに中古でも見かけた事はありませんね。貴重なCDなのでしょうか(汗)是もelmar35さんには是非聴いて頂きたい作品です・・・って、何だか何処かで聴いた台詞でしたネ(笑)

投稿: FUSION | 2007/05/17 22:40

>「ここが私的FUSION(フュージョン)」
凄いですね。その通りだと思います。

僕は「夜の彷徨」が最初だったから、クルセイダーズも今一つと思ったし、このアルバムもレンタルで聞いたきりで、CD化されたときも買うのは躊躇して買いませんでした。
コレクションの一枚と割り切れば良いんだけど、これを買うなら他のをと思ってしまうんですよね。(苦笑)

投稿: WESING | 2007/05/18 11:47

WESINGさんへ。コメント感謝致します。

御賛同下さり有難う御座います。
正直、曲の良さや完成度という点では「夜の彷徨」の方が素晴らしいかと思います。私も「夜の彷徨」を最初に聴いたならWESINGさんと同じ心境になると思います。(笑)
しかし、この時代(1970年前半~1980年中盤)のカールトンは特に素晴らしい時期でしたね(驚)

投稿: FUSION | 2007/05/18 15:39

お邪魔します。
いつもながらの鋭い分析に感銘します。
私は、夜の彷徨から前後に聴いていったタイプです。クルセイダーズ時代やセッション時代にバッキングとソロと言うスタイルを創って、それでも、元がブルースなのでやっぱり歌いたくなって、それを上手く融合させたのがこの作品だと想います。さらに次ぎの作品からも多少歌を忘れられずに数曲歌っていましたが、次第にギターでの表現力に磨きがかかってきて、特に最近は歌わなくても『ギターで歌う』と言う極みに達したような感じのプレイですね。

投稿: ayuki | 2007/05/26 19:02

ayukiさんへ。コメント感謝致します。

>元がブルースなのでやっぱり歌いたくなって、それを上手く融合させたのがこの作品だと想います。

至極納得させられるコメントですね。確かにカールトンの根底にあるのはブルースですね。特に「フレンズ」でのBBキングとの共演や「レネゲイド・ジェントルマン」などを聴く度に実感します。

>最近は歌わなくても『ギターで歌う』と言う極みに達したような感じのプレイですね。

カールトン本人に聞かせて上げたい言葉ですね(笑)

投稿: FUSION | 2007/05/26 19:26

こんにちは。
これ意外と好きなんですよ。
一般的には地味な評価ですよね。

投稿: Sken | 2008/02/05 16:09

Skenさんへ。コメント感謝致します。

このアルバム、カールトンの作品の中においては実に異端ですが、私も大好きです。何となくノスタルジー感じる旋律が胸に染みます。

>これ意外と好きなんですよ。
とても嬉しいです。

投稿: FUSION | 2008/02/05 19:40

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